新型コロナ対策費はなぜ「本予算」ではなく「補正予算」なのか?

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『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、安倍政権の新型コロナ対策費について指摘する。(この記事は、4月27日発売の『週刊プレイボーイ19・20合併号』に掲載されたものです)

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安倍政権は抜本的な新型コロナ対策をゼロベースから作り直すべきではないか? 

意外と知られていないが、2020年度本予算には新型コロナ対策費は1円も計上されていない。安倍政権は、コロナ対策費は補正予算で手当てする方針で、ひとり当たり10万円の一律給付の財源も4月27日に提出された20年度補正予算に計上されている。

日本で新型コロナの初感染者が確認されたのは1月中旬のこと。その後2月、3月と感染がどんどん拡大するなか、国会ではコロナのコの字も入っていない予算案の審議が続けられた。

予算案を提出した後の組み替えは異例とはいえ、政府が迅速に数十兆円規模の新型コロナ対策費用を盛り込んだ修正予算案を提出していれば、野党も反対するはずがなく、今頃は3月末に成立した本予算をもとに本格的な新型コロナ対策が動きだしていたはずだ。

欧米に比べて日本の新型コロナ対策は遅いとしばしば批判されるが、そのことは予算計上のシーンにも表れている。

では、安倍政権はなぜ本予算に新型コロナ関連の費用を計上しなかったのか。

それについて、3つの指摘をしたい。ひとつは安倍政権が東京五輪の開催問題ばかりに関心を払い、新型コロナ対策に気が回らなかったことだ。本予算案を提出した後の組み替えは首相自らが政治決断をし、号令をかけないとできない力業だ。

しかし、官邸は、五輪のことしか頭になく、新型コロナは「4月に補正予算で対応すれば十分」と甘くみた。それが致命的な遅れの大きな原因となった。

ふたつ目は安倍政権の性質だ。この政権は憲法改正やアベ友案件など首相がこだわる政策については官邸主導で強引に進める。一方で、規制緩和など首相の関心が薄い政策については、ほぼ官僚に丸投げしていた。

それは、平時にはそこそこうまく回るシステムだったのかもしれないが、新型コロナの感染拡大は日本にとって未曽有の危機である。官僚は前例のあることならそつなくこなせるが、こういったイレギュラーな事態の対策を丸投げされるとお手上げとなる。

事実、財務省は財政規律にこだわって政府支出を惜しむ愚かな対応しかできず、結果的に今最も必要とされる弱者救済策が手薄でスピードに欠けるものになってしまった。

3つ目は、「本予算が成立する3月末まで新たな予算の話はしない」という霞が関の不文律だ。新たな予算の議論は自分たちが作った本予算に欠陥があったことを官僚自らが認めることになる。

従って今回も、本予算に新型コロナの対策費用を入れるための議論は絶対にできない。その結果、4月末の補正予算で賄うしかないという暗黙の了解が政府内に生まれてしまったのだ。

問題はこうした不備や遅れを政権が認めず、批判されると小規模な修正策を追加するという小手先の対応を繰り返していることだ。これでは新型コロナの感染はいつまでたっても収束せず、国民経済に与えるダメージも増すばかりである。

現在国会で審議中の補正予算も一律10万円を除けば、基本的には官僚主導の策を安倍首相が追認したもので、すでに不十分だと各方面から批判されている。

今からでも遅くない。安倍政権は骨太で抜本的なコロナ対策を打ち出し、国民に示すべきだ。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

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