戦後75年にあらためて考える、アメリカや中国との"したたかな"付き合い方

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『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、米中対立抑制のために日本がなすべきことを語る。

(この記事は、8月17日発売の『週刊プレイボーイ35号』に掲載されたものです)

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お盆も終わり、今年の夏が足早に過ぎ去ろうとしている。今年は終戦75年目となるだけに、過去の戦争に思いをはせる報道も多かった。

しかし、永田町ではキナくさい動きが続いている。自民党は、配備停止が決まったイージス・アショアの代替案となるミサイル防衛の方針について政府に提言し、安倍首相も「しっかり新しい方向性を打ち出し、速やかに実行していく考えだ」と意欲満々。政府はミサイル防衛について9月中をめどに方向性を示す予定だ。

気にかかるのは提言の「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取り組みが必要」という文言だ。

これまで使われてきた「敵基地攻撃能力」という物騒なキーワードの使用は避けたものの、逆に、敵基地だけでなく「相手領域内」と地理的範囲を基地以外にも広げている。

さらに「弾道ミサイル」対策の本来の狙いは対北朝鮮だったはずだが、提言ではこの限定は抜け落ちた。自民党は、北朝鮮だけでなく、中国からの攻撃や脅威に対応できる攻撃能力を保持しようと考えているのだ。それは今後、日本は「中国を仮想敵国とする」という宣言に等しい。

折しもアメリカと中国の対立は、経済や部分的な軍事対立を超えて、国家体制をお互いに否定し合う段階に入り、世界の識者たちが、いつ米中戦争が始まってもおかしくないと警鐘を鳴らす状況だ。

米中開戦となれば、軍事同盟国であり、多くの米軍基地がある日本はアメリカから支援を求められ、米中の戦争に巻き込まれかねない。ましてや、敵基地攻撃能力保有となれば、自衛隊は中国軍から専守防衛ではなく、米軍と一体化した軍と見なされ、攻撃のターゲットにされるリスクは格段に高まるはずだ。

とりわけ貧弱な日本の情報収集能力では、結局米側の情報に頼らざるをえず、米軍が「中国が日本攻撃に『着手』した」という情報を提供し、「日米両国を守るために集団的自衛権を行使しろ」と「要請」してきたら、日本はこれに従うしかないと考えたほうがいい。

では、どうすればよいのか? それはアメリカと一体化して中国の脅威に対処するのでなく、危険なゲームに突入しようとする米中を牽制(けんせい)する国際的な枠組みを日本が先頭に立って形成することである。

民主主義、自由経済重視などの共通の価値観を土台にEUやASEANなどとまとまり、とかく強硬路線に走りがちなアメリカ、非民主的で強権政治を強める中国の双方をいさめ、抑制するのである。

そこで参考になるのが、ドイツのメルケル首相の対応だ。アメリカとは一定の距離を置き、トランプ大統領のむちゃぶりや要求はのらりくらりとスルーする。

中国にはその専制ぶりを建前上は批判する一方で、経済的な関係はきっちりと維持する。ふたつの超大国との付き合い方が実にしたたかなのだ。日本も米中に対して、こうした巧みな距離感を持つべきだ。 

今、日本に求められているのは不毛な米中対立を抑止する国際的な枠組みであり、トランプ大統領がEUとの連携を弱体化させるなか、米国一辺倒で中国との戦争に向かうことなどではない。米中対立抑制のための国際的連帯の枠組み形成のために日本がなすべきことは何か。今こそ国会で論議してほしい。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

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