「やってる感」でのし上がってきた小池都知事が見すえる「次のステップ」とは?

「突然、ポンと差し出されたみこしに『まあ、いいわよ!』と乗っかるっていうことしかできない人なんだと思います」と小池都知事について語る和田泰明氏

新型コロナウイルスの第2波が広がりを見せるなか、7月の東京都知事選で圧勝し、知事として2期目を迎えた小池百合子氏。再選後も、「感染拡大特別警報」といったフリップを手に記者会見を行なう小池知事の姿を毎日のようにメディアが報じる一方で、過去4年間の小池都政に対する検証が十分に行なわれたとは言い難い。

週刊誌の記者として、小池都政の4年間を追い続けた著者がこの問いにあらためて向き合い、政治家・小池百合子の実像に迫るのが、和田泰明(やすあき)氏の著書『小池百合子 権力に憑(つ)かれた女』(光文社新書)だ。(この記事は8月24日発売の『週刊プレイボーイ36号』に掲載されたものです)

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――今、小池百合子という人物について本にまとめてみようと思われたきっかけは?

和田 前回、2016年の都知事選では、いわゆる「小池劇場」と呼ばれたさまざまな出来事がありました。「小池都政の4年間を追いかければ一冊の本にできるんじゃないか」と思い、取材を続けていました。

本は都知事選の前に出すつもりで、今年の初めには最初の原稿を書き終えていましたが、その後、新型コロナの問題が一気に広がると、人々の視線は小池知事のコロナ対応に集中し、都知事選の議論も「新型コロナ問題のワンイシュー選挙」のような雰囲気になってしまいました。

本当なら過去4年間の小池都政を振り返るべきなのに、各メディアの都庁担当記者たちもコロナ対応で忙殺され、過去を検証する余裕がない。だからこそ、ちゃんと振り返る本が必要だと思ったんです。

選挙前には石井妙子(たえこ)さんの『女帝 小池百合子』(文藝春秋)が出版され、私の本は選挙後の発売という形になりましたが、その分、ギリギリまで取材ができたので、結果的にはよかったなと思っています。

──取材を続けるなかで、和田さんの小池百合子像はどう変化していったのでしょう?

和田 4年間取材を続けてきて感じたのは小池知事の驚くべき「薄っぺらさ」です。彼女にとっては「自分が都知事であること」だけが重要で、中身がないのにメディア対応の巧みさだけで、ここまでのし上がってきた人なんだということがよくわかりました。

メディアの側も、当初は週刊誌も含めて小池礼賛モードが主流で、そういう著作もたくさん出ました。さすがに任期終盤には先ほども話に出た『女帝』のような本や学歴詐称の問題などを取り上げるバッシング記事も出ましたが、小池知事はそうしたメディアの「手のひら返し」も織り込み済みで、逆に利用するぐらいのしたたかさを備えています。

記者会見が典型的ですが、彼女はメディアが物事の「表層」だけを切り取って報じることをよくわかっているので、そこだけを取り繕っておけばいいと考えている。

実際、この4年間で彼女が何をしたかというと、特に何もしていません。前回の都知事選で小池知事が強く訴えた築地市場の豊洲移転問題にしても、東京オリンピックの経費削減問題にしても、あれだけ大騒ぎして、いくつもの専門家会議を立ち上げて、その都度、議会や都の職員を散々振り回しておきながら、結局、最後は役人任せにしているのです。

──結局「やってる感」をアピールしているだけ?

和田 今、小池さんがやたらとアピールしている東京都版のCDC(疾病対策センター)の設立なんかは、まさに「やってる感」の演出でしょう。これは東京都の福祉保健局という部署が担当で、8月1日に検討委員会を発足させて議論すると記者発表したのですが、担当者に話を聞いても「何も決まっていません」という答えでした。あまり現場はやりたくないんだと思うんですね。

ただでさえコロナ対応で忙しいなか、小池知事がトップダウンで新たな組織をつくれといっても、現場はどんどん疲弊していくだけです。でも、小池さんが知事選でそういう公約をしちゃったものだから、現場はやらざるをえない。

もちろん、どんなに威勢よくぶち上げたって、それが実現できるかできないかは役人が一番わかっているから、揺り戻しがあります。でも、小池知事はそんなことはどうでもよくて、最初にドーンと花火を上げることが何より大切なんです。

──「古い政治と闘う女性」のイメージを演出するのも得意ですね。

和田 それも彼女の強さの秘密ですし、メディアを利用するための常套(じょうとう)手段ですね。

そもそも日本新党の細川護熙(もりひろ)元首相に誘われて政治の世界に飛び込んで、「古い政治と新しい政治の対立構造」という背景からスタートした人ですし、「自民党をぶっ壊す」のスローガンで支持を集めた小泉純一郎元首相を間近で見て、古い政治と闘う手法を学んできた。

4年前の都知事選のときには、「都議会のドン」として注目を浴びた自民党東京都連の内田茂元幹事長のいじめが原因で自殺したとされる都議の奥さんを、自分の選挙に引っ張り出して演説させたりしていました。

古い政治、オヤジたちの政治という「仮想敵」をつくり、それに対して果敢に挑む「ジャンヌ・ダルクのような私」を演じることでメディアを巧みに味方につける。それにまんまと利用されるメディアの側の責任も大きいと思います。

──新型コロナ対策でも日々、強い存在感をアピールし続けている小池知事ですが、彼女の目には「次のステップ」が見えているのでしょうか?

和田 小池さんは、その場その場の瞬発力だけでのし上がってきた人なので、今は何も考えていないと思います。ただ、小池さんはもう都知事には飽きてるとも思うんです。

一方で、自民党の国会議員としゃべってても、みんな小池知事のことが嫌いだから「彼女を総理に担ぐことなんかあるわけない」って思っている。とはいえ、彼らも選挙で当選しなきゃいけないので、「ポスト安倍」をめぐる政局がグジャグジャになり「選挙で勝てるのは小池百合子だ」となったら、可能性はゼロではないでしょう。

おそらく小池さんもそれしか狙ってないと思います。友達も同志もいない彼女が、総裁選で地道に仲間を集めるなんて不可能です。突然、ポンと差し出されたみこしに「まあ、いいわよ!」と乗っかるっていうことしかできない人なんだと思います。

●和田泰明(わだ・やすあき)
1975年生まれ、広島県出身。岡山大学法学部卒業後、山陽新聞社入社。岡山県警などを担当。上京後、大下英治事務所を経て、『週刊ポスト』記者に。2005年4月より、『週刊文春』記者として政治、年金問題の取材を続けている。本書が初の著書となる

■『小池百合子 権力に憑かれた女 ドキュメント東京都知事の1400日』
(光文社新書 980円+税)
「NO! 3密」「感染爆発 重大局面」といったフリップを掲げる姿が連日「ニュース」になり、7月の都知事選で圧勝を収めた小池百合子都知事。本来であれば、小池都政の4年間を振り返る検証を行なうべきなのに、新型コロナ禍で、記者の余力も、記事のスペースもなく、都知事選に突入していった。築地市場移転や東京五輪にメスを入れたものの、結局はすべて元のもくあみになった、あの騒ぎはなんだったのか、小池百合子という政治家の本質はどこにあるのか。小池都政を見続けた週刊誌記者がレポート
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取材・文/川喜田 研

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