最新「経済財政白書」のデータから実感する、日本のデジタル後進の深刻度

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『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、日本のデジタル後進の深刻度を指摘する。

(この記事は、11月16日発売の『週刊プレイボーイ48号』に掲載されたものです)

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内閣府が今月に公表した2020年度の経済財政白書に、「デジタル化による消費の変化とIT投資の課題」という章がある。そこに書かれたデータを見れば、日本のデジタル化の遅れを多くの人が痛感するだろう。

白書によれば、日本でシステム設計や情報処理などを担当するIT人材のうち、約70%がIT産業に集中しているという。

一方、アメリカやドイツではその比率は40%ほど。60%のIT人材が金融やサービス、製造業など幅広い分野で活躍している。

日本では、社内にIT専門家が少ないと、その企業のIT利用は進まない。また、システム構築のシーンなどでIT企業の言いなりになり、非効率で使い勝手の悪いシステムを導入する恐れもある。結果として、民間全体のIT活用は停滞する。

公的機関はさらに深刻だ。内閣府によると、IT人材のうち国の官庁など公的部門に従事する者はわずか1%ほどしかいない。アメリカはこれが1割超だから、日本のお役所のIT化が遅れるのは当然だとわかる。

この状況は地方自治体も同じで、1700余りある自治体の情報主管課の全職員数は約1万1000人にすぎない。しかも、この人員数は10年度より25%も減少しているというから驚く。

デジタル庁の創設、行政手続きのハンコ使用の廃止、携帯電話料金の値下げなど、菅政権が次々と打ち出すデジタル関連の政策で、日本のIT利用が盛んになるという期待が高まっている。

ところが、ITの現場は貧しいままだ。特に深刻なのが人材育成である。経産省は30年にIT人材は79万人不足するというデータをはじき出している。国を挙げてデジタル化を推進しようと考えるのなら、菅政権がまず着手すべきはIT教育の充実、IT人材の育成だろう。

しかし、その体制はまったく整っていない。例えば、高校でプログラミングなどのIT知識を教える専門教員はごくわずか。文科省の昨年の発表では、公立高校にひとりもIT専門の教員を配置できていない空白県が13自治体もあった。

OECD(経済協力開発機構)の18年の調査によると、世界79ヵ国の15歳の子供は、平均65%がデジタルのスキルを持つ教師たちがいる学校で学んでいるが、日本は20%台と最下位だったことからも、その後進性がよくわかる。

実は、ここまでIT人材育成が遅れた大きな原因に、担当省庁による不作為がある。安倍政権では首相への「忖度(そんたく)」で官僚がやりすぎる問題が起きていたが、IT政策ではその逆バージョンが起きていた。

IT化推進を常に掲げてきた安倍前首相だが、官僚は本気ではないと彼の「真意」を見抜き、仕事をさぼっていたのだ。私はそれを、官僚の"逆忖度"と呼んでいる(詳しくは拙著『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』を読んでほしい)。

ハンコ撲滅、携帯料金値下げなどへの菅首相の熱意は官僚に伝わっているだろう。だが、IT人材育成という地味で時間のかかる政策への菅首相の本気度は見えない。今回も官僚の"逆忖度"IT人材育成は進まないことが懸念される。

デジタル競争力で日本は世界27位に沈んだ(20年、スイスIMDの国際競争力調査)。今すぐIT人材育成にシャカリキになって取り組まないと、日本の地盤沈下はさらに続くだろう。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中。最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中。

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