自殺対策計画づくりへ長野の市町村がセミナー 改正基本法受け全国に先駆け

自殺対策計画づくりへ長野の市町村がセミナー 改正基本法受け全国に先駆け

[写真]自殺対策で長野県の市町村が集まったセミナー

 長野県内の市町村が総合的な「自殺対策計画」づくりにへ向け、長野市でセミナーを行いました。今年4月施行の改正自殺対策基本法で、すべての都道府県と市町村に自殺対策計画の策定が義務付けられたことを受けたもので、全国に先駆けての取り組み。自殺防止のNPO関係者らが「自殺防止は地域づくりにもつながる課題。住民に近い市町村行政こそ、そのセンターになってほしい」と訴えていました。

防げるのは「地域の力」

 セミナーは14日、長野市で開かれました。長野県と自殺対策プロジェクトを支援する日本財団、NPO法人自殺対策支援センターライフリンクが主催。県内の市町村長と担当者ら約200人が集まり、基本的な方針を確認しました。

 NHK在職中に自死遺児を取材し、退職して自殺対策に取り組んできたNPO法人ライフリンクの清水康之代表が講演。「自殺はさまざまな問題が絡んで最も悪い状況になった結果、起きることであり、それを防げるのは地域の力。自殺の問題に対応できる地域の力があれば、ほかのあらゆる問題にも対応できる」と述べました。

 自殺者は複数の問題を抱えており、職業などによって自殺に至る特徴的なパターンがあると指摘。「例えば失業者は失業、生活苦、多重債務、うつ状態から。主婦などは子育ての悩み、夫婦間の不和、うつ状態から自殺に至るといった経路がある」としました。

 このため、うつ状態といった自殺に傾く直接の原因と見られる事柄だけに注目するのではなく「なぜこうなったのか原因をさかのぼって探ることが大切です。さまざまな問題の連鎖があるので、その一つ一つを断ち切っていくことが自殺に至らせないために大切なことなのです」と自殺までの経過を丁寧にとらえるよう求めました。

 例えば借金、いじめ、うつ状態など幾つもの要因を抱えた場合は、特定の専門家や知人などと相談しても根本原因が解消されにくい場合があります。清水代表は「たどり着いたら、関係機関や専門家が連携して生きるための支援をしてくれる、そういうセンターの役割をしてもらえるのは地域の市町村しかありません」と強調しました。

地域の傾向に合わせて対策

 同代表によると自殺は地域的な特徴があり、市町村によって70代が多い、30〜40代が多い、20代が多いなど異なります。法改正に伴い国は全国のこうした地域的特徴を類型化し、それに対応した対策のパッケージを都道府県を通じ市町村に提示し、対策を進めることになります。

 市町村は国から示された対策のパッケージを地域の実情に合った内容にカスタマイズして実施。「国はその現場の対策を回収してさらに改善を加え、再び市町村に還元していきます」(清水代表)。

 問題を抱えた人たちが助けを求めて訪れても、適切な解決への道を開くことができるのか、関係機関などとの密接な連携が市町村行政の新たな課題になってきます。清水代表は「地域のセンターとして行政のマネジメント力が問われることになりますが、何よりトップの市町村長の方々に推進役になっていただくことが欠かせません」。全国のモデルとして取り組む長野県に注目が集まることになりそうです。

 長野県の阿部知事はあいさつで「悩みを持つ人を孤立させてはならない。日ごろからの支え合いで災害にも耐えてきた長野県の強い地域力を大切にしていきたい」と述べました。県は国からの対策情報を市町村に伝えるとともに、自殺対策計画の策定などで支援態勢を取ることにしています。

 日本の自殺者は2009年まで14年連続3万人を超えていましたが、2006年に最初の自殺対策基本法が制定されたこともあって2010年から減少傾向。それでも2014年には2万4000人に上っています。自殺者は40〜60代の父親世代が35%を占め、20〜30代の死因の1位は自殺です。1人が自殺で亡くなると4〜5人が遺族になり、自殺は国民的リスクとされています。

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■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説