山城議長逮捕 反対運動萎縮狙いか 国の「対話拒否」鮮明

山城議長逮捕 反対運動萎縮狙いか 国の「対話拒否」鮮明

プレハブに追いやられて機動隊に囲まれる山城博治さん(後列中央)=17日、東村高江(読者提供)

 米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設工事を巡り、抗議運動で同訓練場内に入っていた沖縄平和運動センターの山城博治議長が17日、フェンスの有刺鉄線を切ったとして器物損壊容疑で逮捕された。政府側には反対運動の“象徴”でもある山城氏の逮捕で市民らを萎縮させる狙いがうかがえる。

 米軍基地を巡る一連の抗議運動の場で政府は過去に、山城議長ら反対運動のリーダーとの折衝や交渉も試み、工事やオスプレイ配備などをできるだけ穏便に進めようとする場面もあった。だが今回の逮捕で“対話拒否”にかじを切ったことが鮮明になった。

 山城氏が逮捕されたことを受けて、政府の強引な工事手法を批判してきた県は「県が法律を破ってでも抗議しろとは言えない。リーダーなだけに慎重に行動した方が良かったのではないか。残念だ」(幹部)と言葉を選んだ。ただ「リーダーである山城氏の狙い撃ちだったのだろうな」とも続ける。

 実際、工事を進める政府の“焦点”は山城氏にあった。

 【当初から対象】
 北部訓練場内の工事現場では連日、数十人の市民が抗議運動を繰り広げる。これに対し政府は当初、米軍施設への立ち入りを禁じた刑事特別法を理由に逮捕を検討していたが、その場合、数十人を一気に逮捕することによる「混乱」が懸念された。

 そのため政府は威力業務妨害罪など刑特法以外の法律を適用し、現場にいる市民の中から特定の人物に絞って逮捕する方向で再検討した。その“対象”として浮上していたのが山城氏だった。

 山城氏の逮捕を受けて防衛省関係者は「これまで相当フェンスを破壊され、提供施設区域内で工事妨害されてきた」と述べ、警察が逮捕に踏み切ったことを“歓迎”する。

 ただ抗議の「現場」を知る沖縄防衛局職員の間では、今回の逮捕に不安も付きまとっている。山城氏はこれまで、平和運動センター議長として現場の仕切り役を担ってきた。市民の先頭で対峙(たいじ)する防衛省職員や機動隊員らに強い言葉を発する一方、現場のもみ合いなどが過熱気味になり、暴力を含む「衝突」に発展しそうになると、市民側に“引く”ことを促すなど、非暴力を抗議運動の柱に据えてきた。 【話ができる人】
 沖縄防衛局の関係者は「山城氏はある意味のバランス感覚もあり、われわれにとって『話ができる人』ではあった。現場にいなくなれば、むしろ反対運動が混乱する事態も考えられる」と漏らす。一方、「だが最近はその山城氏も北部訓練場内に入り、刑特法違反の抗議を率先した。『一線を越えた』んだ」とも述べ、逮捕を正当化した。

 政府関係者は山城氏の逮捕について、既に得ている米側との合意で「基地内で逮捕できた」と明かす。ただ今回のケースのように「機微に触れる案件」は現場の県警から警察庁に相談があり、「斜面という現場の状況や山城さんということから、反対派がさらに反発する可能性がある」ために基地外での逮捕の判断が取られた。

 政府は7月にヘリパッド工事を2年ぶりに再開し、県外からの機動隊の大量派遣や自衛隊ヘリによる機材運搬など、強引な手法で工事を進めてきた。

 当初、抗議の市民らは訓練場内への立ち入りはしていなかった。しかし工事車両を止めるために行った路上の抗議活動で一般通行にも支障が出るといった課題が浮上した結果、抗議の場が訓練場内へと“追い詰められていった”側面もある。

 「年内完成」を目指して移設工事を強行する政府と、抗議運動の市民の対話打ち切りを象徴するような、山城氏の逮捕劇。現場の混乱がより不透明になってきた。(島袋良太、仲村良太)

(琉球新報 本紙随時掲載のニュース裏舞台を描く「透視鏡」より)

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