森永卓郎が持論を展開〜新型コロナにおける支援制度の「大きな穴」

「垣花正 あなたとハッピー!」(3月17日放送)に経済アナリストの森永卓郎が出演。新型コロナの支援制度における疑問について持論を展開した。

2021年3月16日、発言する菅総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202103/16kaigi.html)

新型コロナの支援制度の疑問

このコロナ禍での支援制度というと、飲食店に対して1日あたり6万円支払われる協力金があります。飲食店の方も大変なのはもちろんわかるのですが、飲食店を救うだけで、本当にいいのでしょうか。昨年(2020年)の家計調査という、家計簿を半年にわたって付け続けるような世界でも稀に見る調査を日本ではやっているのですけれども、そのデータを基に新型コロナの支援制度について考えてみたいと思います。

2021年3月16日、会見する菅総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202103/16bura.html)

特別定額給付金により2人以上のサラリーマン世帯の収入は増えた〜消費支出は実質で5.3%減少

驚いたのは、コロナ禍にもかかわらず、2人以上の勤労者世帯、サラリーマン世帯の実収入が、昨年、実質4%以上増えたということです。ボーナスが減るなどして世帯主収入は減っているのですが、特別定額給付金が入って来たので、4人家族であれば40万円受け取ったことになります。結果的に年収自体は増えたというのが実態としてあるわけです。思っているほど収入面では大きな影響は受けなかったのですが、問題は支出、消費支出面なのです。消費支出は実質で5.3%減りました。それが不況の原因になっているのですけれど、費目別に見ると、給食などを除きますが、一般外食費がマイナス27.1%。大きく減っています。消費が減るということは、飲食店の売り上げが減るということですから、厳しいということがこの数字に表れています。

【東京都らが緊急事態宣言を要請】面談後、報道陣の取材に応じる小池百合子都知事(右)、西村康稔経済再生担当相=2021年1月2日午後、東京都千代田区

消費支出でいちばん減少したのは交通費〜にも関わらず政府からの補償はなし

減少率がいちばん大きかったのは交通費です。何と前年比マイナス49%! 半分に減ってしまっているのです。鉄道や航空会社、バス、タクシーなどの交通関連業種は、酷い目に遭ったという現実があります。緊急事態宣言はまだ続いていますが、飲食店は1日6万円の補償があるわけです。しかし、政府は交通関連業種には補償を全然していません。先日、スカイマークの会長の佐山さんとお話をしたのですけれど、飛行機は客が30%乗ってくれないと、燃料費などの直接経費が賄えないということです。それを超えると、少しずつ固定費を回収できる状況になるのです。少なくとも半分くらい乗ってくれないと持たない。あとどのくらい持つのかと言うと、私の受け取った印象だと、緊急事態宣言があと半年も続いたら、航空業界では、倒産する会社が出兼ねない状況だと思います。Go To トラベルでそれを救おうとしたのだけれど、Go To トラベルをしたので感染第3波が起きてしまったわけです。だからなぜ、補償だけしないのかということは、とても謎です。

「大阪コロナ重症センター」で研修する看護師ら=2020年12月11日午前11時9分、大阪市住吉区の大阪急性期・総合医療センター 写真提供:産経新聞社

3番目に大きい〜被服および履物にかける消費

ここも補償の話が出ていないのですけれど、外食よりも大きく影響を受けているのは、教養・娯楽・サービスで30.9%も減っています。お稽古ごと、あるいは学習塾などの月謝も23.7%減っています。そして、3番目に大きいのは、被服および履物にかける消費です。アパレル業界は大変だと言いますが、洋服、シューズなどのファッションです。在宅勤務が多くなり、スーツを着ません。ワイシャツも着ないので、クリーニングにも出さない。大学生の卒業式が中止になると、着付けにも行かない。しかし、アパレル業界を救おうという話は一切ありません。

エイチ・アイ・エスのロゴマーク=2020(令和2)年4月10日、東京都新宿区の新宿東口本店 日刊工業新聞/共同通信イメージズ

外食、交通、教養・娯楽、被服・履物の4業界の売上が減少した分の補償は1ヵ月1兆円

計算してみたのですけれど、この外食、交通、教養・娯楽、被服・履物の4業界に、昨年の売り上げが減少した分を全部補償するとしても、1ヵ月あたり1兆円です。今回、緊急事態宣言で飲食店に1日6万円の補償を出しているではないですか。これに事務費用を加えると、確実に1兆円を超えているのです。ですから、同じ予算規模でできるのです。いまの財政規模が100兆円くらいなので、1兆円はその1%です。コロナの対策費でいままで80兆円くらい使っているのです。1兆円で苦しんでいる4業界が救えるわけです。アメリカのバイデン政権は1人あたり1400ドル、約15万円を一律で配るのです。

新型コロナウイルス感染拡大で影響受けた中小企業経営者が訪れた東京商工会議所の資金繰り相談会=2020年2月17日、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

コロナで働き場所を失った芸能人

芸能人、伝統芸能をやっている人もそうだし、タレントさんもミュージシャンも役者さんもそうなのですけれど、いま収入がなくなってしまっているわけです。去年の特別定額給付金を切り崩して、何とか命を長らえて来たのだけれど、もう食いつぶしてしまったと言う人もいます。テレビやラジオなどに出ている人はまだ食いつなげるのです。しかし、おそらく芸能関係の人でテレビやラジオに定期的に出演している人は、全体の1%もいないと思います。そういう人たちは商店街や公民館などでのイベントやお祭りなどで仕事をしていたのです。しかしコロナでそういうイベントがすべて中止になってしまって、追い詰められているわけです。ライブハウスを中心にしているミュージシャンの方は、オンラインライブをやっても収益を上げることができません。

ハローワークプラザ静岡の職業相談コーナー。静岡県内も新型コロナウイルス感染拡大に伴う休業要請などで、雇用情勢は悪化している=2020年6月15日、静岡市葵区 写真提供:産経新聞社

芸能業界やクリーニング業界とつながる政治家がいない

なぜそこを救おうとしないのか。それは利権に結び付かないということがあるのかも知れません。政治家には、それぞれ支えてくれる業界があって、それぞれに顔を利かすわけです。しかし、そういうところにつながっていないジャンルがあるわけです。「芸能人の族議員」など聞いたことがないでしょう。クリーニング屋さんの族議員というのも聞いたことがない。そのように政治とつながっているかどうかで判断するのではなく、困っている人を救うということを考えた方がいいと私は思いますけれどね。

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