訪米に向け菅総理が安倍前総理と会談を行った「本当の理由」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月30日放送)にジャーナリストの有本香が出演。4月の初訪米に向け、菅総理が安倍前総理と意見交換をしたというニュースについて解説した。

自民党総裁選挙で新総裁に選出され会場を後にする菅義偉官房長官。手前は安倍晋三首相=2020年9月14日午後、東京都港区・グランドプリンスホテル新高輪 写真提供:産経新聞社

菅総理が訪米に向けて安倍前総理と意見交換

菅総理大臣は3月29日、安倍前総理を衆議院議員会館の事務所に訪ね、4月8日からの初訪米などをめぐって、およそ50分間の会談を行った。会談後、菅総理は「予算が成立し、来月には訪米するので、8年間にわたり政権を担われた安倍前総理にお会いし、内政、外交について意見交換した。非常に有意義だった」と記者団に語った。

飯田)この訪米に向けてというところ、いろいろな報道も出ていますけれども、総理と50分間、何を話したのでしょうか。

安倍晋三首相(左)に花束を渡す菅義偉官房長官=2020年9月14日午後、東京都港区 写真提供:産経新聞社

これまでも外交についてはコミュニケーションを取って来た

有本)総理の通常の日程のなかで、総理の方から安倍前総理の議員会館の事務所を訪ねられて、しかも50分という長時間となれば、目立つし長いので注目されるのですが、これまでも菅総理は外交的な局面で、安倍前総理と話しているのです。例えば、各国の首脳と電話会談した前後など。

飯田)手段はいろいろありますものね。

有本)菅総理にしてみれば、昨年(2020年)、安倍前総理があのような形で、病気で急に辞任された。安倍政権時代には、外交については、安倍前総理が全権を奮っていたというところであるわけです。菅総理は官房長官として内政の部分を担当していらしたから、外交についてはそれほど明るいというわけではない。そのことはご本人も承知しておられるのか、安倍さんとは外交面でコミュニケーションを取って来たというのは事実なのです。今回は、いよいよアメリカの新しい政権との間で、初めてご自身が訪米されるということで、こういう時間をあえて取ったということでしょう。

政治 安倍晋三首相 「桜を見る会」問題などについて、首相官邸で記者団に異例対応=2019年11月15日午後、首相官邸 写真提供:産経新聞社

「安倍前総理はキーパーソンだ」と見るアメリカ

有本)「いままでもコミュニケーションを取っていました」ということの延長線上というだけではなくて、アメリカ側も安倍さんという存在を、未だにかなり重く見ているわけです。2月の初めに、駐日アメリカ大使館のヤング臨時大使が、岸防衛大臣のところを訪れたのと相前後する感じで安倍さんの事務所を訪問しています。しかも、こっそり訪問したということではなく、訪問したことをヤングさんがご自身のSNSで発表しています。特にいま中国に対していろいろなことをやって行くなかで、日米同盟はより一層、お互いの緊密な連携が必要となっている。そのなかで「安倍さんはキーパーソンだ」とアメリカは見ているのだと思います。

飯田)自由で開かれたインド太平洋というものの……。

有本)構想者ですからね。

飯田)オリジナルというか。その人を折に触れ出して来るというのがメッセージになる。

有本)実務的にも、安倍さんといろいろな話をしておくことが重要だとアメリカは心得ているということなのでしょうね。これは何も、菅さんに力がないという話ではなく、安倍政権時代、菅さんもそこで側近だった。ただ、外交的には特に表に出て来ていなかった人なので、安倍さんを通して、「かつてからのいろいろな路線を確認しながらやって行きましょう」ということだと思います。私は、アメリカ側が「日本的な根回し術みたいなことをやって来ているなあ」と感じて見ていました。

27日、米ホワイトハウスで話すバイデン大統領(ロイター=共同)=2021年2月27日 写真提供:共同通信社

未だに高いアメリカでの安倍前総理の評価

飯田)「自由で開かれたインド太平洋」は安倍さんオリジナル、日本オリジナルだということを、ホワイトハウスは重視するらしいですね。

有本)安倍前総理と非常に近い日本人がこの数ヵ月、アメリカでいろいろとアメリカ政府サイドとコミュニケーションを取っているのですけれども、民主党、共和党を問わず、国務省の関係者も含めて、「安倍さんはどうなの?」という話を聞かれるということです。安倍さんの日米同盟においてのレガシーに対する評価は、安倍さんに近い人が驚くくらい高い。そして、現在の動向に対しても、非常に注目しているという話です。

新疆ウイグル再教育キャンプと思われる施設=2019年6月2日 写真提供:時事通信

訪米に際しての菅総理の手土産〜「台湾」と「ウイグル」

飯田)菅総理が訪米するにあたり、さまざまな報道が出ていますが、30日には日経が、

『日米「台湾海峡」明記へ 首脳会談で共同文書、中国懸念』

〜『日本経済新聞』2021年3月30日配信記事 より

……という記事を書いています。たしか、26日に読売新聞も書いていましたが、首脳会談での共同文書のなかに「台湾」を入れると。25日のバイデン氏の会見のなかでも、「台湾」という言葉を出していました。

有本)菅総理としても、手土産が必要だということがあるのですが、1つは台湾、1つはウイグル問題です。ウイグル問題については、政府は「制裁する」ということは言っていないのだけれど、それは自民党を中心に国会が、議会が頑張らなければいけないのです。それに向けて、いまいろいろな準備はしているけれども、国会決議がなされれば、多党派で圧倒的な賛成の数でなされれば、これは一種のお土産になる。それから、日本政府として、台湾に関して、おそらく今後の流れとしては、アメリカがトランプ政権のときにやった「台湾旅行法」というものがありますね。

飯田)公人の行き来です。

有本)これを可能にするという流れを、日本側がつくって行こうという方向があると思います。その前段として、台湾を国として認めて行く。特に、今回コロナもありましたので、台湾がWHOにオブザーバー参加もできないというのも問題だし、そういう側面もある。そして安全保障です。安全保障面で、いまも台湾に対しての挑発を中国は強めて来ています。これははっきりと「日米連携して跳ね除けて行く」という意思表示は、何らかの形でしなければいけないということを、日米で詰めていると思います。

習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は6日、中国人民政治協商会議(政協)第13期全国委員会第4回会議に出席している医薬品・医療衛生界、教育界の委員を訪ねて意見や提案を聞いた。〔新華社=中国通信〕=2021年3月7日 写真提供:時事通信

「台湾」と「ウイグル」という2つの柱で対中国について話し合う

飯田)30日の紙面で朝日新聞が、

『安保法制5年、増える米軍防護 昨年25件、豪軍へも適用の動き』

〜『朝日新聞デジタル』2021年3月30日配信記事 より

……と見出しを立てていますけれども、ここに河野前統合幕僚長の話が出ていまして、台湾海峡に対しても言及しています。「日本も当事者意識を持つべきだ」と。当然ながら、台湾有事というのは……。

有本)台湾有事イコール日本の有事なのでね。この台湾との関係については、岸防衛大臣は意志を明確にしています。東日本大震災から10年を迎えた際の蔡英文さんのツイートに対して、直接、日本の防衛大臣が「ありがとうございます」、「台湾は日本にとって“大切な友人”です」とリプライをしています。岸さんはもともと強固な台湾派ではあるけれど、それを閣僚であり、防衛大臣である立場の人が、そのようなことをしている時点で、「もう何をしようとしているのかわかりますよね」というところです。

飯田)そうですね。

有本)台湾とウイグル問題などの中国の人権問題について、2つの柱でアメリカ側と対中国について話し合う。それから、アメリカは、台湾有事は近い将来起こり得るという認識です。6年以内と言っていたけれど。

飯田)そうですよね。

有本)太平洋軍の次期司令官がそういうコメントを出しています。そういう意味でも、おそらく日本側もその認識は共有しているでしょう。来年(2022年)の北京オリンピックのあとには、いろいろなことが出て来るだろうと。

飯田)どういう動きをするのかという。

台北市の総統府で記者会見する蔡英文総統=2020年1月15日(共同) 写真提供:共同通信社

中国からの巻き返しに菅総理が対抗できるか

有本)それに向けても、現在も挑発が激しくなっていますから、防衛当局、国務省サイドも含め、日米間でいろいろな詰めが行われています。日本は総理の訪米のあとに、台湾に対する具体的なアプローチを進めて行こうという意思はあると思います。ただ、ここで気をつけなければいけないのは、中国からの巻き返しがありますからね。日本の政界に対するいろいろなアプローチがあって、相当な巻き返しがあるので、それを菅総理はやり切れるのかどうかというところだと思います。

飯田)そこの部分で、派閥なしで総理になったという辺りだとか。

有本)そうなのですよ。ご自身の権力基盤の問題というのもあるから、ここで安倍さんとの連携は非常に重要なのです。それから、安倍さんの評価というのはアメリカのなかでも高い。特に今回、“Appeal of Conscience Foundation”の賞をもらいました。アメリカでの評価が高いと同時に、世界の首脳が「この賞はステータスがある」と見ているから、世界各国の首脳から、安倍さんのところにお祝いの言葉が届いているわけです。そういう安倍さんとの連携を大事にして、対中国をやって行くということです。

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