石炭“高依存”中国の「2060年排出ゼロ」の疑わしさ〜外交ゲームの中の気候変動サミット

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月23日放送)に内閣官房参与・外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。菅総理が米バイデン大統領主催の気候変動サミットに参加したニュースについて解説した。

習主席、国連総会の一般討論演説=2020年9月11日 写真提供:時事通信

気候変動サミットが開幕

菅総理大臣は4月22日夜、アメリカのバイデン大統領が主催するオンラインの気候変動サミットに参加した。このなかで総理は、「温室効果ガスの2030年度の削減目標について、2013年度と比べて46%の削減を目指す」と表明している。

飯田)スタジオに朝刊各紙が入って来ておりますが、読売新聞、日経新聞はこの46%削減というのを1面トップとして掲げております。

2021年4月22日、気候サミット〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202104/22kikou.html)

いまの国際政治では、「地球が温暖化している」という前提ですべてのゲームが始まっている〜圧倒的にヨーロッパに有利

宮家)私は科学者ではないので、この問題についてはよくわからないですし、「本当は温暖化なんかしていない」と言う人だっています。そんな私でも1つだけわかることは、「いまの国際政治では、『地球が温暖化している』という前提ですべての外交ゲームが始まっている」ということです。ですから、そのゲームのルールを拒否しても仕方がないので、「このルールに従って、日本の国益を最大化しなければいけない」というのが私の考えです。

飯田)ルールに従わなければならない。

宮家)ヨーロッパは賢いなと思います。この温暖化の話が出て来たのはそもそもヨーロッパからですから。今中国やアメリカは大量の二酸化炭素を出しているわけです。ヨーロッパは省エネではずっと先に進んでいるから、ここは「温暖化」で戦うのが有利だと。「二酸化炭素を減らせ」と言えば、圧倒的にヨーロッパに有利になりますからね。この地球温暖化の議論が始まった際、「よく考えたな。頭のいいやつがいたな」と、10年くらい前ですけれど、思ったものです。

米での「マスキー法」のときのように「災い転じて福となす」とするべき〜日本のチャンスにする

宮家)こういうときは、「災い転じて福となす」しかないですね。思い出すのは、20〜30年前ですか、排気ガス規制の問題がありました。日本車がどんどん輸入されて、アメリカが怒り、カリフォルニア州が「マスキー法」という厳しい排気ガス規制をやって、事実上、日本車を締め出そうとしたわけです。しかし、そのときはまだ日本の会社は元気があったから、技術革新をして、素晴らしく燃費のいい車ができたわけです。マスキー法によって日本車を締め出すところが、逆に「日本車の性能がいい」ということになって、もっと売れた。

飯田)ホンダのCVCCエンジンとかね。

宮家)ですから、我々も今回のことを1つのチャンスと見るべきなのです。確かに厳しい削減目標だと思います。でも、ここでもし、日本の社会なり、企業なりに戦う体力が残っていたら、これをうまく逆転の発想で使うということは十分できるし、やるべきだと思います。

2021年4月16日、日米共同記者会見〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202104/16usa.html)

疑わしい中国の「2060年排出ゼロ」

宮家)それに比べると、中国は2060年に排出ゼロにする? 2050年が目標だとみんなが言っているのに、中国だけ2060年とはどういうことですか。10年も差があるのです。そのころには皆忘れているでしょうし、また別のルールができていますよ。あの大きな国で、石炭にものすごく依存している人たちが、どうやって排出実質ゼロにできるのかと。

飯田)中国は、アピールとしては「電気自動車にシフトしている」ということを言っていますが。

宮家)確かにニュースをみていると、中国でもある程度、電気自動車が定着していることは事実なのだけれど、山奥までは行かないでしょう。普及するのは都市だけでしょう。

飯田)航続距離も100キロくらいだという話ですから。

上手くイニシアチブを取って孤立しないようにし、技術革新につなげる

宮家)そういう意味では、先ほど申し上げた通り、これは新しい国際的な政治、外交ルールの1つなのですよ。これをみんなが「目指す」「努力をする」と言っているわけで、ある意味では言葉の格闘技なのだから、ここは日本もうまくイニシアチブを取りながら、集中砲火を受けないように、孤立しないように動きつつ、チャレンジして、逆に技術革新へつなげられればいいなと思っています。

飯田)マスキー法のときは、アメリカの内国法でしたので、こちらからルールづくりに関与することはできなかった。だから、それを所与として技術革新に行ったということがありますが、今回はルールづくりにまでに関与できるチャンスだということですね。

宮家)そうです。ですから、日本が置かれた状況の中でいちばんいい知恵を出して、日本が常に仲間外れにならないような立ち位置を考えることだと思います。

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