「ファイブアイズ」に日本が加わる可能性と加わった場合のデメリット

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月10日放送)に日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が出演。ファイブアイズと日本について解説した。

前日の衆参3選挙で自民党が全敗したことを受け記者団の取材に応じる菅義偉首相=2021年4月26日午前、首相官邸 写真提供:産経新聞社

ファイブアイズと日本〜5ヵ国による盗聴クラブ

アメリカやイギリスなどの5ヵ国が機密情報を共有する枠組み「ファイブアイズ」。そこに日本が加盟することはあるのか。どのように連携を強化して行くのか。

飯田)ファイブアイズ……アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの情報共有の枠組みということなのですが、ニュースにも出て来るようになりました。

秋田)5ヵ国が、自分たちのスパイや通信傍受などで盗聴して集めて来た情報を、自分で抱え込まずにホストコンピューターで共有し、パソコン上ですべて見ることができるという「盗聴クラブ」です。

飯田)盗聴クラブ。

秋田)これは自然に生まれたのではなく、第二次世界大戦で一緒に戦ったアングロサクソンの仲間です。そのときに盗聴情報をナチスや日本相手に共有して、それをそのまま残していまに至るという、非常にディープなクラブです。

NSAが通信傍受した秘密性の高い情報

飯田)ここでやり取りされている情報は、機微に触れるものも多いのですか?

秋田)CIAなどが集めて来る情報はヒューミント、つまり人間対人間から聞いて来るという情報が多いと思うのですが、この情報はアメリカで言えば国家安全保障局(NSA)が集める通信傍受なのです。通信傍受とは、手の内がわかったらすべて相手に暗号を変えられてしまうので、絶対に通信傍受しているということが露見してはいけないという、秘密性の高い情報です。ですからディープと言えますし、何をしているのか、存在すらもつい最近までは公表されていなかったクラブです。

同盟国であるが情報を抜き取る

飯田)それこそエドワード・スノーデン氏の情報流出によって、「このようなことまで録ってあったのか」というようなことがいろいろと出て来ましたよね。

秋田)メルケルさんの携帯電話とか、日本でも安倍首相の携帯電話から情報を抜き取っていた。それを日本政府に聞いたら、「そのようなことはあり得ると思っていた」と言っていますが、「そこまでやっていたのか」というところです。

飯田)同盟国であろうと。

秋田)同盟国であろうとやっていたのです。いまもやっているのだと思います。

陸上自衛隊と米陸軍が実施したサイバー競技会で、問題に取り組む陸自隊員ら=2019年8月22日、防衛省 写真提供:時事通信社

ファイブアイズに日本が加わること〜会員権を得られることは意味があるが、相当な覚悟が必要

飯田)そこに日本が加わるのはどうかというところなのですが。

秋田)結論から言うと、そのようなディープな盗聴クラブに日本が入るということは「完全な仲間」になるということですから、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの仲間になるので、そのような形で会員権を得ることは意味があると思いますし、できるならやれたらいいと思います。ただ、相当覚悟が必要だと思いますね。

秘密を共有した以上は、合意したことは一緒に行動をする〜相当な覚悟が必要

飯田)というのは、機密情報をもらうからには、こちらも出さねばならないということですか?

秋田)そうですね。情報を非合法も含めて集め、それを共有している5人組がいるとします。そこへ「入れてよ」と言うときに、私がその5人組だったら、「ではあなたは何を持って来てくれるの?」となりますよね。「まさかタダ取りではないよね」と。さらに「ここで話したディープな話は絶対に漏らしてはいけないのだ」とも。パソコンなども「セキュリティ対策はしているね」となるではないですか。まず日本はそのような非合法的な盗聴情報ということについて、国内で盗聴は厳しく禁止されています。犯罪捜査も令状がないといけません。外国の電波情報は集めていると思いますが、その情報は彼らが「これほど持っているのならば、入れてもいいか」と思えるようなものなのか。それと大事なのは、「日本に情報を渡しても漏れない」というようなサイバーセキュリティ対策も含めてやっておくのが、最低限の条件です。

飯田)インフラ面のようなものですね。そこさえ整備すれば、あるいは「スパイ防止法をつくります」というようなことがあれば何とかなりますか?

秋田)それは受験勉強で言うと基礎学習のようなもので、そこから応用編に入って行くことになります。応用編をクリアしないと入れないと思いますが、その応用編とはどのようなものかと言うと、「秘密を共有した以上は、そこで相手の言ったことを信じる。信じている以上、5人で合意したことは一緒に行動をする」ということです。

飯田)一緒に行動する。

秋田)情報は趣味で集めているものではないので、制裁や外交をするために、またあるときは軍事攻撃をしなければいけないような場合のために集めるのです。そこに入っていて情報を共有しているのに、「自分は制裁を控えます」というようなことは許されませんよね。

飯田)そうですね。

秋田)具体的に言うと、ファイブアイズは最近、香港やウイグルの問題で共同声明を一緒に出して批判しています。そして香港などでは同時に制裁も出しています。日本もそこに入っていたら、きっと香港やウイグルのディープな情報を共有すると思うのです。日本は両方とも制裁せずに口で批判しているだけですが、情報をもらって制裁をしないということはできません。「そのような覚悟があるのか」ということです。

飯田)相当な覚悟ということですね。

秋田)ロシアがイギリスでリトビネンコさんの暗殺を試みましたよね。あとは数年前に、親子でお父さんと娘さんを公園のベンチで、ということがありました。ファイブアイズはその情報を共有していると思うのです。共有してロシアの外交官を追放するなどして、制裁を加えています。日本はファイブアイズではないのですが、私の取材した当時の記憶では、情報をもらっています。しかし、安倍さんとプーチンさんが北方領土交渉をしていたので、日本は情報を貰っても制裁をしませんでした。そこのクラブに入るということは、情報を共有するだけではなく、「お前がやるというなら自分もやるよ」という運命共同体のような覚悟が必要だと思います。

米司法省の記者会見で提示されたロシア軍参謀本部情報総局(GRU)のハッカー6人の写真=2020年10月19日、ワシントン(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

「ファイブ+ワン」と言う枠組みでオブザーバー的な存在に日本がなる

飯田)そこまでの覚悟というか、場合によってはメリットも多いと思いますが、外交的なオプションが減らされるかも知れない。天秤にかけて判断ができるのかというところですね。

秋田)そうですね。私がいいなと思うアイデアは、「シックスアイズ」にならなくても、「ファイブ+ワン」のような枠組みにして、日本は準会員のような、オブザーバー的な存在になる。なかの情報で必要なものは共有しやすくする。それが最も現実的ではないでしょうか。

最も情報量が多いのはアメリカ、次いでイギリス

飯田)これは5ヵ国ありますが、やはりアメリカが持っている情報が最も多いのでしょうか?

秋田)どのようになっているのかはわからないのですが、普通に考えて、通信傍受なので地上に傍受するための局を置いています。アメリカは日本の三沢基地にも、国家安全保障局(NSA)のアンテナがあると言われています。日本にもあるように、アメリカは世界中に基地を持っています。そこに通信傍受の大きなパラボラアンテナがあって、世界中の情報を集めているのです。どう考えてもオーストラリアやニュージーランドよりも、アメリカの方が情報を持っていると思います。イギリスもいろいろなところに旧イギリス領があり、軍事協定の英連邦をシンガポールやマレーシアと結んでいるので、イギリスは次に情報量が多い。オーストラリアやニュージーランドは南太平洋など、地域性のある情報はディープに持っているかも知れませんが、圧倒的なのはアメリカ、次にイギリスだと思います。

米英との「情報共有協定」を深め、事実上の「ファイブ+ワン」とする

飯田)地域的に考えると、東アジアの情報というもので日本も出せるものがあるかも知れませんね。

秋田)そうですね。いまの話で欠けているのが東アジア、特に中国や北朝鮮の情報です。イギリスのジョンソン首相が「日本にも入ってもらったらいいではないか」と言っているのは、そのようなことがあるからだと思います。地域的にこの部分は少し手薄なのです。

飯田)メリットとデメリットの部分も含めて、ここから考えて行かなければいけない。

秋田)ファイブ+ワンのようなアイデアでアメリカ、イギリスと組めば、ファイブアイズのほとんどの情報は入って来ると思います。いま、アメリカとイギリスと日本は情報共有協定を結んでいるので、そこを深めるのがいいのではないでしょうか。そして事実上のファイブ+ワンにする。

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