現実には「技能実習生」という移民を入れている日本〜入管法改正断念

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。出入国管理法などの改正案の今国会成立が見送られたニュースについて解説した。

政治 外国人労働者・野党合同ヒアリングで発言する技能実習生ら=2018年11月8日午後、国会内春名中 写真提供:産経新聞社

出入国管理法などの改正案、今国会成立見送りへ

外国人の収容のあり方などを見直す出入国管理法などの改正案をめぐり、自民党と立憲民主党の幹事長が会談し、野党側が収容施設でスリランカ人女性が死亡した真相の解明が欠かせず、採決に応じられないとしていたことなどを踏まえ、自民党は今国会での成立を見送る方針を伝えた。

飯田)5月18日の午後、自民党の二階幹事長と立憲民主党の福山幹事長が会談して、見送りの方針を伝えました。

現行では「難民申請をしていると、その間は強制送還しない」〜難民申請は何度でもできる

佐々木)なぜ改正をしたいのかという、背景事情の説明が必要だと思います。

飯田)そうですね。

佐々木)「難民申請をしていると、その間は強制送還しない」というルールがあるのです。これがあるので、日本に不法入国や不法滞在をしている人が難民申請するのです。何回でも難民申請できるので、「申請している間は送還されない」ということを逆手に取り、送還されないようにしている人たちがいる。それではまずいだろうということで、「2回までは難民申請していても送還されないけれど、3回目以降は難民申請していても強制送還します」というルールに変更しようというのが、この自民党案の中身です。

諸外国と比べて難民認定をしなさ過ぎの日本

佐々木)「ルールを破る人を防ぐ」という意味では、もちろん間違いではないのだけれど、そもそも日本は難民の認定をしなさ過ぎるという問題があるのです。1年間に1万人くらいが難民申請していますが、認めているのは数十人です。もちろん、なかには難民でも何でもなくて、単純に強制送還されないために難民申請している人もいると思うので、一概に割合が高い、低いとは言えません。ただ諸外国と比べると「あまりにも難民認定をしなさ過ぎる」という問題はあります。

飯田)しなさ過ぎ。

佐々木)では「移民を認めるのかどうか」という議論になるのですが、日本は難民に限らず、異質な人を認めにくい社会なので、移民が大量に入って来ると問題は起きやすいだろうと。特にヨーロッパで移民・難民が大量流入した結果、イスラムとリベラル側の対立のようなものが起きて、移民排斥運動が起きるという大変な状況になっています。あれを見ると、「あまり移民を入れ過ぎるべきではない」ということも間違いなく言えます。

東京入国管理局 建物 外観 看板=2018年12月7日午後、東京都港区 写真提供:産経新聞社

劣悪な労働条件で外国人技能実習生を大量に入れている日本〜現実には移民を入れている

佐々木)一方で日本は外国人技能実習生を大量に入れているわけです。移民とは呼ばないけれども、外国人の労働者を入れている。しかも労働条件は劣悪で、安い給料で酷い目に合わせている。ベトナムはボートピープルのころから親日度が高かったのに、あまりにも待遇の悪い条件で実習生を入れ過ぎたせいで、いまでは親日度が下がっているという話もあるくらい、よろしくないわけです。そうすると、ここで議論しなければならないのは、難民を入れるか入れないかというところに限らず、「日本は移民をどう扱うのか」ということです。実質、いまはコロナで外国人実習生が入って来ないため、成り立たない産業がたくさんあると指摘されています。

実習生ではなく、難民をある程度受け入れる方が国際社会の受けはいい

飯田)農産物の収穫ができないという報道もありました。

佐々木)2020年に野菜の値段が上がったのは、そのせいだなどと言われていましたものね。ですので、現実には移民を入れているのではないか、もしくは入れないと成り立たない国になっているのだということです。それを認めるのであれば、実習生のような制度ではなくて、きちんと移民を認めるという方向に持って行った方がいいし、その段階で難民をある程度受け入れるということをやった方が、国際社会においては受けがいいはずです。

飯田)実習生ではなく。

佐々木)既に入れているのに、入れていない体で難民申請を断るというのは、国際社会のなかでイメージが悪い。それであれば、「移民を入れます。それで日本の産業を成り立たせます」ということを建て付けにして、「難民もある程度は認めます」という方が国際社会に受けがいいわけです。「どちらが国益に適うのか」ということを考えた方がいいのではないかと思います。

「(実習生という移民を)既に入れているのだから、それをきちんと認めた方がいい」という議論をすべき

飯田)そこで議論を進めて行くと、例えばシンガポールのように期限付きにして、ここで生活するということではなく、「お金稼ぎのためだけに来てくださいね」ということを厳格化する方に行くのか、定住まで許す形にするのか。その辺の制度設計の話にもなります。

佐々木)そうなのですが、私は移民を入れた方がいいとは思えません。ヨーロッパの事例を見ていても失敗が多過ぎるし、日本の社会に馴染まないと思います。だから「移民を入れた方がいいか、入れない方がいいか」という議論ではなくて、「(実習生という移民を)既に入れているのだから、それをきちんと認めた方がいい」という議論をするべきだと思います。

飯田)技能実習生の仕組みは、実習生という建て付けだから、当然ながら「技能が上がったら自分の国に帰って、それを活かしてください」という形です。これをある意味、看板の架け替えのようなことをしているのかも知れませんが。

佐々木)技能実習生に関しても待遇をきちんと考えてあげて、「日本に行ってみたら素晴らしい待遇だった」と、「あそこはよかったよ」と言って帰ってもらった方が日本にとっても得なはずです。「奴隷労働をさせられた」と帰って行くのは、対外的にイメージが悪いし、何もいいことはありません。日本国内で移民の議論をしにくいというところは確かにありますが、その議論をしない限り、実態とのズレは永遠に解決しません。やはりここで自民党には、この議論にあえて踏み込んでやって欲しいと思います。

飯田)技能実習生も理念そのものは素晴らしいはずだけれど、もはや移民がダメだから、そのすり抜けのように使われてしまっている。

佐々木)形骸化してしまってね。奴隷労働の材料になってしまっているわけで、これはあまりよくないですよね。

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