イスラエルの本音は「やるべきことはやった」〜イスラエルとハマスが停戦

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月21日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。イスラエルとハマスの停戦が5月21日に発効されたというニュースについて解説した。

パレスチナ自治区ガザで続くイスラエル軍の空爆。=2021年5月16日 AFP=時事 写真提供:時事通信

イスラエルとハマスの停戦協定が発効

イスラエルとパレスチナ自治政府ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの停戦が、5月21日に発効された。

飯田)エジプトの仲介だそうです。

やるべきことはやったイスラエル

宮家)停戦については国際的な世論が出て来たし、アメリカもこれを強く求めました。アメリカが直接やってもダメだから、エジプトを立ててということだと思いますが、こんな話は昔もありました。今から7年前、2014年のときも同じようなことがありました。停戦自体はいいことで、人道的にも正しいのですが、イスラエルの本音は「やるべきことは全部やった」ということでしょう。軍事オペレーションとして、今回はハマスが1週間あまりで数千発のミサイルをイスラエルに撃ち込んだわけです。7年前は確か4800発を2ヵ月で撃ったと言っていました。

飯田)2ヵ月かけて。

宮家)ですから今回ハマスはものすごい頻度と量でミサイルを撃っているわけです。しかもトンネルをたくさんつくっている。それを全部潰さなければいけないわけでしょう。イスラエルはガザにミサイルを撃ちトンネルを全部潰し、軍事的にやるべきことは全部やって、オペレーションは終わりつつあった、だから、「そろそろ停戦してもいいな」ということだと思います。

停戦によって解決することはない〜パレスチナ問題は解決しないけれど、どちらにしても中東に安定はない

宮家)この問題が停戦によって解決することはないと思います。昔は「パレスチナ問題はアラブの大義だ」と言われました。私が外務省に入ったときには、「パレスチナ問題を解決しない限り、中東に安定はない」と言っていましたが、いまは「パレスチナ問題は解決しないけれど、どちらにしても中東に安定はない」となっています。

イスラエルのネタニヤフ首相(イスラエル・エルサレム)=2021年3月11日 AFP=時事 写真提供:時事通信

アメリカとイランの代理戦争的な要素が

宮家)パレスチナ問題ももちろん大事なのだけれど、問題の本質はいまや湾岸です。特にアメリカの最大の関心はイラン問題になって来てしまっています。パレスチナ問題はアラブとイスラエルの対立だったのだけれど、いまやアメリカとイランの代理戦争的な要素が出ていて、その中でハマスとイスラエルが戦っている。ハマスはイランが支援していますからね。あんなに貧しいガザで、何千発もミサイルをつくれるわけがないではないですか。誰かが支援しなくてはあんなことは絶対にできないわけです。かわいそうなのは一般のパレスチナ人ですよ。パレスチナ人は残念ながら指導者に恵まれていない。もう少し政治力がある、または現実的な判断ができる政治家がいたら、私はとっくにパレスチナ国家ができていると思います。もう何十年もこんなことをやっているのですから。

悲劇的な状況にあるパレスチナ人〜アメリカの関心はイランに移ってしまっている

宮家)残念ながらパレスチナはガザと西岸に分かれてしまった。ハマスが出て行ってしまったのですけれども、もともとはファタハ、パレスチナ解放機構(PLO)だったわけです。それが割れてしまって、パレスチナに統治能力がなくなってしまった。イスラエルからすれば、「誰と交渉すればいいのか。相手がいないではないか」となる。そうなればやりたい放題です。それにイランがちょっかいを出すのだから、アメリカの関心はイランに移ってしまっている。こういう悲劇的な状況が、いまのパレスチナ人にのしかかっているということです。非常に心が痛いです。

アラブ諸国にとってはパレスチナ問題よりイランの問題の方が大きい

飯田)かつてアラブの大義のもとに、アラブ各国が集結する時代がありましたよね。UAEもサウジアラビアもそうですし。

宮家)そういう時代ではもうなくなってしまった。アブラハム合意、イスラエルとの関係改善は、もともと戦争はしていませんから平和条約ではなく国交正常化なのですけれども、サウジはともかく、アラブ首長国連邦など湾岸諸国を中心に正常化はもう始まっていますよね。ということは、アラブ諸国が「パレスチナ問題はパレスチナ人でやってくれ」ということです。「自分たちは十分協力したけれども、パレスチナは結果を出していないではないか」「自分たちにとっては、イランの方が怖くて、それどころではないのだ」となってしまったのです。ずいぶん変わりましたね。いい方向に変わったかと言われれば、そうではないけれども、これが現実です。

イスラエル・ネタニヤフ首相の狙い

飯田)一方でイスラエルのネタニヤフさんは、何度も何度も選挙をやって、なかなか政権が樹立できませんね。

宮家)この人もすごいしたたかな政治家だと思うのだけれど、残念ながら、今回もハマスとの戦闘を政治的に利用したのではないかという声があります。いつ内閣が潰れるかわからないから、国内の強硬派の支持を得るために敢えて軍事作戦を強行したと言う人もいる。

飯田)「俺でないとイスラエルを守れないだろう」と。

宮家)そうして求心力を高めようとしたのだろうけれど。どうなるでしょうか。

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