程遠い「1日100万回」のワクチン接種〜“有事対応”できぬ日本の大きな課題

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月24日放送)に東京大学公共政策大学院教授・政治学者の鈴木一人が出演。東京と大阪で行われる大規模接種センターでのワクチン接種について解説した。

橿原市で始まった新型コロナワクチンの集団接種=2021年5月10日 かしはら万葉ホール 写真提供:産経新聞社

大規模接種センターでのワクチン接種が開始

東京と大阪に政府が設ける大規模接種センターで、5月24日から新型コロナウイルスのワクチン接種が始まる。接種センターでは21日に承認されたモデルナ製のワクチンが使われる。

7月末までに終わらせることは難しい〜程遠い「1日100万回」のワクチン接種

飯田)東京と大阪に大規模接種センターが設置されましたが、自衛隊が運営を行うということです。ここに至るまでにも、いろいろな報道がなされていますが、どうご覧になりますか?

鈴木)本来ならばワクチン接種は、市町村が担当することになっているのですが、ここでは大規模接種センターにたくさんの人が必要だということで、困ったときの自衛隊頼みと。自衛隊には、お医者さんも看護師さんもいらっしゃるので、その人たちを集めて大規模に接種しようということです。ただ、大規模と言っても1日5000人、東京でマックス1万人です。「1日100万回打つ」ということが、7月末までに高齢者の接種を終える条件になるわけですが、大規模接種会場が東京と大阪に1つずつで1日1万5000人と、1日100万回まで到達することは難しいところです。季節性インフルエンザのワクチン接種は1日60万回なのですが、それよりも40万回多いわけですから、大規模接種会場を入れても、それだけの数が出せるのか。また予約のトラブルなど、いろいろなことが報道されていますから、7月末までに終わらせることは難しいのではないでしょうか。

有事としてのワクチン開発ができなかった日本

飯田)1月に河野大臣がワクチン担当になり、ワクチンがいつ入って来るのか、どれくらい入って来るのかという話から始まってここまで来ましたけれども、全体の管理や進み方はどうご覧になりますか?

鈴木)まずはワクチンをつくれないというところですね。研究はやっていたのですが、モデルナやファイザーが歴史上まれに見るくらいのスピードで、新しいmRNAという技術を使って早くつくれるようになった。ここが大きなゲームチェンジャーでした。そして日本はそれに乗り遅れたということがあります。

神戸でワクチン集団接種開始 神戸市で新型コロナワクチンの集団接種がスタート。仕切られたブースの中でワクチンを注射器に詰めていくスタッフ=2021年5月10日午後1時16分、神戸市兵庫区の兵庫区役所 写真提供:産経新聞社

さらにワクチン接種が2ヵ月遅れた日本〜オリンピック開催までに進めるべきであった

鈴木)その後、ワクチンが欧米で承認されて緊急使用が認められているのに、日本は日本人のDNAにとって安全かどうかということで、160人くらいを対象に2ヵ月間ほど日本人のための接種の安全を確認すると言って、承認も2ヵ月ほど遅れているのです。さらに最初の方はワクチンの供給が滞っていました。いまは契約でアストラゼネカも入れると、全体で3億6000万回分くらいあるのですが、いまのところ7月までに1億回分は入るということになって、ようやくワクチンの供給も安定しました。しかし、本当にオリンピックをやるのであれば、それまでに高齢者だけではなく、人口の半分とまでは言いませんが、かなりの数のワクチンを打っておかなくてはいけない状況です。それができていないというのは大きな問題だと思います。

有事として法律を変えて対応するべきであった

飯田)お医者さんの確保などもヨーロッパやアメリカの先行事例を見ると、いろいろな形でやっています。足りないのであれば法律を変えてしまおうということまでありました。

鈴木)イギリスの場合は医者でもない、普通の人がボランティアとして訓練を受けて、筋肉注射をしています。筋肉注射は難しいものではないので、かなり幅広くできます。しかし、日本の場合は医師法という法律で管理されていて、その法律を変えるのは面倒だと。法律を変えてたくさん打つということをせず、平時のままの状態でワクチン接種に対応するので、結果的に遅れてオリンピックを無観客にせざるを得ないなど、いろいろな問題を抱えてしまった。緊急事態宣言もまた長引いていますので、平時の状態を変えるということは、大事なことだと思います。

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