IoT時代に求められる日本の技術〜「半導体・デジタル産業戦略」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月7日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。経済産業省が「半導体・デジタル産業戦略」を発表したというニュースについて解説した。

ハイシリコンの半導体チップ(ロイター=共同)=2019年5月17日 写真提供:共同通信社

経済産業省が「半導体・デジタル産業戦略」を発表

経済産業省は6月4日、世界的に需要が高まる半導体の確保を国家事業と位置付けた「半導体・デジタル産業戦略」を発表した。半導体などのデジタル産業の基盤強化に国家事業として取り組み、次世代の製造技術の国産化などを進めるとしている。

飯田)かつては「電子立国」と言われた日本ですけれども。

須田)半導体は「産業のコメ」と言われていますからね。こういう動きが出て来た背景には、「半導体工場の火災問題や世界的な需要の高まりがある」というような解説がありますが、違うのです。

IoT時代を迎え、圧倒的に半導体の数が足りなくなる

須田)水面下で数年前から進めて来た戦略なのです。今後5年〜10年後には間違いなくIoT時代を迎えます。「Internet of Things」という、インターネットにあらゆるものがつながって行くという時代。代表的なものが自動運転車になりますが、そういう時代を迎えると、圧倒的に半導体の数が足りなくなって来るのです。ありとあらゆるものに入って来るわけですから。

求められる日本の技術

須田)そしてIoT時代を5G、6Gが後押しする。それを見据えて水面下で着々と進んで来た。加えてもう1点、「中国製のものは危ないのではないか、リスクが高いのではないか」とも言われているのです。これには「クリーンな半導体であるということを自己認証する」という作業が必要になります。特にアメリカに輸出する際には、1つ1つは調べられないけれども、何か問題が起こったときに、責任の所在を明確にして責任を負わせるための認証が、今後は重要になって来るのです。

飯田)認証が必要に。

須田)それを認証したときに、「中国製のものは本当に信用できるのか」という問題にもなります。ですから日本の役割が、数年前からアメリカサイドで指摘されているのです。いまの半導体の製造は、かつてと違って分業体制になっています。設計をする企業と、設計した半導体をつくる企業が分業しているのです。設計する会社の方が優秀で、製造する会社が劣っているかと言うと、そうではない。製造するラインは、先端半導体になると相当精緻なものを求められるために、巨額の設備投資と高度な技術が必要になって来るのです。

飯田)なるほど。

須田)その先頭を走っているのがTSMCという台湾企業なのですが、TSMCだけでは量、安全性ともに心もとない。だから「日本の半導体企業がもう1回復活してくれないか」というアメリカの要望もあるのです。そういうなかで進んで来ていますから、言ってみれば、日本企業の復活という意味合いも含んで来るのだと思います。

次々にバージョンアップするサイクルをどう構築するか

飯田)TSMCはもともと李登輝さんの時代に、国策としてつくられたという経緯があります。日本の半導体産業がよかったときというのは、景気も日本国内はよかったので、設備投資を積極的にやっても大丈夫だった。この30年間、それができなくなったことによって、技術的にも置いて行かれてしまったし、コストの安いところに移転してしまった。この辺り、「お金をどうするのだ」という話にもなりますよね。

須田)半導体は次々にバージョンアップするため、巨額の設備投資をしても、それが回収できないまま、次のバージョンに移ってしまうという問題点も抱えているのです。そのサイクルをどう構築して行くのかというところが問われているのだと思います。

巨額の資金が必要になる

飯田)かつての電子立国と呼ばれた時代の日本メーカーは、設計から製造まですべて垂直統合のような形でやっていた。これから先は製造に特化して行く形で、企業の数もたくさんはいらないということになりますか?

須田)そうですね。先ほど申し上げたように、巨大な装置産業ですから、巨額の資金が必要になるのです。分散すると、そういうサイクルが回って行かないので、一点集中型の方がいいのではないでしょうか。

経済安全保障の面からも日本のクリーンな半導体技術が求められる

飯田)G7サミットを目の前にしていますけれども、前段の会議のなかでも、サプライチェーンが問題になっています。半導体はサプライチェーンの具体的な形ということになります。

須田)加えて、もう1つキーワードを挙げると、最近流行の経済安全保障です。ここに位置付けられることになって来るわけです。技術の流出、漏洩、ハッキング、こういうところにきちんと対峙するということです。だからクリーンな半導体が求められているという流れになっているのです。

飯田)それこそ5G、6Gの話が出ましたけれども、基地局の基幹になるところにもクリーンな半導体が求められる。そうすると、いま完成形をつくれるのがノキアやファーウェイなどと言われていますけれども、日本の技術が期待されるところはありますか?

須田)日本電気(NEC)が基地局の生産、製造に乗り出すという方向性で動き出しています。通信の分野では、NTTが中心になると思います。ですから経産省と連携プレイを取って行くのでしょう。NTTドコモに関しては、かつての方針を大転換して完全子会社化し、NTTグループの強化に乗り出した。NTTの強化というのは、アメリカサイドの要求でもあるということです。

飯田)NTT本体は国際化だと言って、いろいろなところに進出して行きました。その辺りは、「統合してクリーンな技術をどうするか」ということも視野として入って来るのですか?

須田)国内だけではなく、海外展開というところも視野に入れて、機器についてはNECがしっかりサポートして行くという体制なのだろうと思います。

設計はできても製造する会社がない中国〜技術的に劣る中国ネットワーク

飯田)そうすると通信の面、半導体の面でも、中国側なのか、西側なのかという色分けが鮮明になって行くということになるのですか?

須田)日米間では完全にデカップリングさせて行く方向です。バイデン政権でも引き継いだのですが、トランプ政権時代に「クリーンネットワーク」構想というものがありました。完全にそこを意識しているものです。

飯田)クリーンネットワーク構想。

須田)そこは完全に分断して、5G、6Gについては日米欧、西側のネットワークなのか、それとも中国側のローカルネットワークなのか、「どちらを選ぶのですか」という形になって行くのだろうと思います。

飯田)そうなると、アフリカやアジアなどの新興国をどちらの陣営が取り込むのか、という話にもなるわけですね。

須田)しかし中国の場合は、半導体の話に戻しますけれども、例えばファーウェイにしても、設計する会社はあるのです。ただ、それを製造する会社がないのです。製造する能力がない。製造ラインをつくるためには、最短で5年、場合によっては10年以上必要ですから、大きく遅れる。この5年の遅れというのは、5G、6Gの時代では致命的になります。そうすると、技術的に劣る中国ネットワークなのか、最先端の西側ネットワークのどちらなのか。選ぶのは自明の理になって来るのかなと思います。

関連記事(外部サイト)