コロナ対策の“次の手“に駆使すべき「リアルタイムデータ」〜これまでの対策には効果検証が必要

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月10日放送)に慶應義塾大学総合政策学部教授・教育経済学者の中室牧子が出演。政府が6月9日に公表した「骨太の方針」の原案について解説した。

【新型コロナ】マイナンバーカードに関する手続きで多くの人が詰め掛けた品川区役所=2020年5月8日午前、東京都品川区 写真提供:産経新聞社

政府が今年の「骨太の方針」原案を公表

政府は6月9日、経済財政諮問会議を開き、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案を公表した。国と地方の基礎的財政収支(?プライマリーバランス)を黒字化する目標について、「堅持する」と明記した他、医療提供体制の見直しや、グリーン社会の実現、デジタル化の加速、地方創生、子ども・子育ての支援などについて集中的に強化、検討する方針を示した。

ポイントは感染症対策と財政金融政策のあり方の見直し

飯田)18日の閣議決定を目指すということです。子育てなども盛り込まれておりましたが、注目ポイントはどの辺りとお考えですか?

中室)私は経済産業省の産業構造審議会でも有識者をやっているのですが、そこでも出て来たキーワードが「デジタル」「グリーン」「レジリエンス」でした。骨太の方針のなかでも同様のことが示され、これは、これまで日本が遅れてきた分野、課題がある分野に重点的に投資をして行くことが示されたとも言えます。

医療人材確保へ法整備

飯田)コロナ禍が浮かび上がらせたさまざまな課題として、お医者さんをどう配置するか、また保健所単位での基本的なやり方がどうかという辺り、10日の読売新聞が1面トップで「医療人材確保へ法整備」というような骨太の原案に絡む話もありました。一部お医者さん方の私権の制限のようなところにも及ぶと思うのですが、やらないことには今後立ち行かなくなるということですか?

中室)感染症の対応で言えば、感染症対策の実効性を高めるために、あるいは有事の場合に備えて一定程度そういう意図はあるのではないかと思います。

「リアルタイムデータ」を使って検証されているアメリカのコロナ対策の効果

飯田)産業構造審議会の有識者も務められていますが、先日の総会のところで、財政の出し方について、新しい形の産業政策でも構造改革でもなく、「重点的に必要なところにはきちんとお金をつけなければならない」というところまで踏み込みがあったように記憶しているのですが。

中室)コロナ禍で行われたさまざまな経済対策については、きちんと効果の検証を行うべきだと思っています。ノーベル経済学賞の最有力候補と言われるハーバード大のラージ・チェティが、民間企業の匿名化されたリアルタイムデータを使って、アメリカのコロナ関連の経済対策の効果を評価しています。

飯田)リアルタイムデータを使って。

中室)低所得世帯への景気刺激策は、個人消費を大幅に増加させたが、COVID-19ショックの影響を最も受けた企業にはほとんど流入していません。つまり、感染症の流行のように、健康上の懸念から個人消費が制限された場合には、総需要を刺激したり、企業に流動性を提供したりする伝統的なマクロ経済手段は雇用を回復するには十分ではないということです。そこで次の打ち手をどうするか。ここを慎重に考えるべきではないかと私個人は思っています。

中小企業への公的ローンも雇用の改善には影響しなかったアメリカ

飯田)消費の喚起というよりも、飲食店など、閉めざるを得なくなったというような、痛みのあるところを重点的にやった方がよかったかも知れないということになりますか?

中室)ただ、前出の研究では、中小企業向けの融資は、中小企業の雇用を2%しか増やさず、雇用1件あたり38万ドル(約4,200万円)ものコストがかかっています。。ですので、いままで我々が経験したものとは異なる状況に直面しているということです。これまでのような経済ショックのように、伝統的な財政金融政策を発動すれば効果があると考えるのは危険だと思います。

さまざまなデータを最大限生かして次の政策につなげるべき

飯田)その辺り、100年前のスペイン風邪のときにはデータがなかったものが、いまは分析できるようになっている。

中室)おっしゃる通りです。先ほども申し上げたように、携帯電話の位置情報やクレジットカードのヒストリーなど、リアルタイムデータが手に入るようになっています。これを最大限に生かして、次の政策、打ち手につなげるということだと思います。

関連記事(外部サイト)