ワクチン接種の管理は「紙」では非合理的〜スマホアプリを介した「データ」の利便性が高い

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月10日放送)に慶應義塾大学総合政策学部教授・教育経済学者の中室牧子が出演。6月9日に行われた菅総理と野党党首との党首討論について解説した。

2021年6月3日、挨拶する菅総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202106/03ikenkokan.html)

菅総理と野党党首が初の党首討論〜コロナ対策などで論戦

6月9日、国会では菅総理大臣と立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、共産党の野党4党の党首による、初めての党首討論が行われた。新型コロナウイルス対策や東京オリンピック・パラリンピック開催の是非などをめぐって論戦が交わされた。

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枝野代表)リバウンドを防ぐためには、東京で1日あたりの新規感染者が50人程度になるまでは苦しくても我慢しなければならない。同じ間違いをしないために、私たちのような厳しい基準を明確にすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

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菅総理)世界どこでも、ロックダウンをやった国でも簡単に収まっていないことも事実ではないでしょうか。そして、ワクチンを接種することによって、いま大きな成果を上げていることも事実であります。政府としては、何と言ってもワクチンの接種に全力をあげて取り組んで行きたい。まさにワクチン接種こそが切り札だと思っております。今年の10月から11月にかけては、必要な国民、希望する方、すべてを終える。そうしたことも実現したいと思っております。

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菅総理のワクチン接種の目標「1日100万回」〜こんなに早く達成できたことは評価できる

飯田)ワクチン接種を希望する方に関しては、10月〜11月にはすべて接種を終えるということです。全体を通して中室さんはどうご覧になりましたか?

中室)「1日100万回」という、菅総理が掲げておられた目標がこんなに早く達成できるということは予想していなかったので、驚くと同時に、政府や自治体の関係者が努力して目標を達成されたということについては、正直に評価したいと思います。

飯田)現場力が日本はすごいのだなと改めて思います。

中室)本当におっしゃる通りですよね。

規制緩和されオンライン診療が恒久化〜最も大きな変化

飯田)一方で、枝野さんが指摘していましたけれども、「諸外国に比べたらワクチンそのものが遅いではないか」という話も出ておりました。しかし、国内治験に時間がかかったことも一方ではあるわけですよね。

中室)治験のあり方をどうするかということは、考えて行かなければいけないと思います。いま、国内産ワクチンの開発も進んでいますが、対照群の設定が難しいことを理由に遅延しているというニュースも出ています。臨床試験、治験のあり方を見直すべきタイミングでしょう。

飯田)諸外国と比べると、日本は新型コロナウイルスの患者数が少ないということがあって、治験がなかなか難しいと言われております。規制改革推進会議にも中室さんは参加されていますが、規制の問題がいろいろなところで出て来るのですか?

中室)規制改革会議の1つのテーマだったのが、オンライン診療です。恒久化されるということで、数日前に河野大臣から発表がありました。コロナ以前は初診のオンライン診療はできなかったのですが、それができるように規制緩和されました。そこが大きな変化だったと思います。

速やかに対応しなくてはならないデジタル化

飯田)コロナ禍によって炙り出されたいろいろな社会の齟齬のようなものに関して、少しずつ手当てもされて来ていますが、一方で、給付金を出す際のマイナンバーの使い勝手の悪さなどが問題とされています。その辺りは課題として残って行きますか?

中室)やはりデジタル化なのです。それが遅れていたということが、さまざまな課題を明らかにしたところはあると思います。マイナンバーの利用もそうですし、さまざまなことがデータ化されていない。骨太の方針にも書き込まれていますが、速やかに対応していただきたいです。

ワクチン接種〜日本のように「接種券で管理するか」、ニューヨークのように「管理しないか」

飯田)「ワクチンを打ちたいけれど接種券が来ていない」という声もありますが、諸外国であれば、社会保障番号などと紐付いて一括管理ができるのですが、ここはどうですか?

中室)「接種券を管理したい」と考えるかどうかだと思います。例えばニューヨークは、観光客に対してもワクチンを打っているというのは有名な話ですけれど、これは何も管理をせず来た人にどんどん打っているという形です。接種券も何もないということです。そういう方法もあるのです。

飯田)そうですよね。

中室)「誰が打って、2回目がいつなのか」ということを管理しながらやるか、またはニューヨークのように、「来た人を全員受け入れる」かということですが、日本の場合は前者を選択しているわけです。

普及させるべきスマートフォンアプリ「Health Amulet(ヘルスアミュレット)」

飯田)製薬会社等が進めている「Health Amulet(ヘルスアミュレット)」というアプリなどがありますが、結局それも公式にはなっていないため、どこまで証明になるのかというところが、個々人の判断に任されてしまうような部分があります。

中室)Health Amuletは皆さんにご使用いただきたいと思います。私は開発途上国で調査する関係でたくさんワクチンを打つのですが、ワクチンを打ったときにもらう接種証明は紙なのです。紙ですと、長く保管することが大変です。

飯田)紙では難しいですね。

中室)Health Amuletはコロナウイルスだけではなく、他のワクチンについてもすべて情報が入れられるので、今後、インフルエンザのワクチンなどを打つことを考えると、これをスマホのなかに入れておいて、「次にいつ打つべきか」という情報をアプリから知らせてもらうのが、合理的で利便性が高いと思います。

飯田)それが世界共通のプラットフォームのなかで、見せて接種していることを証明することができれば楽になる。

中室)おっしゃる通りです。飛行機に乗るとき、新幹線に乗るとき、それを見せればより自由度の高い活動ができるということになれば、なお素晴らしいと思います。

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