有本香が激白 「対中非難決議」見送りの内幕

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月22日放送)にジャーナリストの有本香が出演。中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧を非難する国会決議案が通常国会で採択されなかった経緯について解説した。

習主席、国連総会の一般討論演説=2020年9月11日 〔新華社=中国通信〕 中国通信/時事通信

公明党の幹部が対中非難決議の先送りについて、自民党に一因があると述べる

公明党の北側一雄中央幹事会長は6月17日の記者会見のなかで、中国の新疆ウイグル自治区などでの人権侵害を非難する国会決議案が採択されなかったことについて、「自民党がまず党内で一致しないといけないが、最終的にそこまで至らなかった」と語った。中国との関係を重視する公明党が採択に慎重だったとの見方に関しては、「決議を止めた話はまったくない」と強調している。

飯田)16日に閉まった国会ですが。

有本)自民党は一部の議員の人たちが一生懸命やろうとしていた。しかし、自民党の党本部の幹部、とりわけ幹事長の周りはまったく積極的ではありませんでした。

通常国会で採択されなかった内幕を夕刊フジに執筆

飯田)その辺りを、17日発行の夕刊フジで有本さんが書かれています。

有本)思わぬ大反響になっていますが、このときの内幕を取材して書いています。「明日閉まるか」という国会の最終盤に、どうしても今国会でということで、自民党でこれを一生懸命おやりになっていたウイグル議連、チベット議連、南モンゴル議連という3つの議連の代表者、それから事務局的なことをやっていた人たちで幹事長室に行き、そこであるやり取りがされた。これをかなり詳らかに夕刊フジに書きました。

飯田)3つの議連の代表者が。

有本)すると、翌日私のところに早速、自民党の幹事長室名で文書が来ました。当然あまりよくない文書なのですが、それに対して夕刊フジが毎日のように追撃をしていたのです。17日に私が書いている連載コラムで幹事長室におけるやり取りを詳らかに書いたところ、大きな反響があって、ネット番組でもその内容をすべて話しました。すると、自民党の幹事長室周り、あるいは関係者のところに抗議がかなり行ったということです。

興味がないのなら興味を持って欲しい

有本)それで幹事長室名で私に対して文書が来た。少し事実と違うのではないかというご指摘の意図と、いまのところはぼかしておきますが、こちらとしてはかなり正確な取材に基づいているので、私としてはまったくそのことに対してあちらから指摘を受けるいわれはないと思っています。私は何よりも記事にあるように、自民党幹部の1人が「この種の問題にあまり興味がない」と言ったというセリフを書きました。もちろん密室でのやり取りなので、私はそこにいたわけではなく、ぼかして伝えることもできたのですが、個人名も特定してそのやりとりを書いたというのは、「興味がないのなら興味を持ってください」という意味なのです。

隣国である日本が「どのようなスタンスか」ということも示さない〜菅総理はG7で言及

有本)これを今国会でやらなかったというのは、日本はどうなっているのだと、国際社会からもそのように思われる。国民の良心からしても、これはいかがなものかと。なぜならば、対中非難決議というものは、別に法的拘束力があるものではありません。例えば、中国に対して「実質的な制裁をするぞ」というような意味合いではなく、一種の決意表明なのです。日本は人道や人権を大事にする国として、そして外交においても人権外交を掲げている国として、国際社会から各国の諜報機関や、あれだけ中国の影響が強いと言われている国連ですら、大規模な強制収容や人権侵害、集団レイプが行われているという報告書を出して、その裏付けも出ているのです。このことに対して、隣国である日本はどのようなスタンスなのかということを示さない。しかも、先ごろイギリスで行われたG7でも、この問題について菅総理も言及しています。

飯田)声明のなかにも、強制労働はやめるべきだという。

有本)中国といままで経済的に深く結びついて来た先進7ヵ国も、「それすらも見直そう」という流れになって来ているのに、日本は自分たちの精神すらも表明しない。

自民党のなかでの苦肉の策であった「外交部会での決議」

飯田)何が起こったのだろうと、私も少し個人的に聞いてみたりしたのですが、有本さんがお書きになったのが17日ですけれど、やり取りがあったのは14日だと。翌15日の午前中に外交部会があって、そこで自民党としての決議をした。見方はいろいろで、自民党として対中国に遠慮したということではなく、自民党としては決議を出したのだという向きもあり、一方で国会に出さないということで、自民党のなかだけの決議になってしまったと、忸怩たる思いだという人もいる。「対中国をどのように考えるのか」ということと、「都議選に向けて公明党に譲歩しなければならないのだ」などと言う人もいたのですが、実際はどうだったのですか?

有本)外交部会で決議をしたというのは、自民党のなかでの苦肉の策なのです。結局、何もできなかった、「ゼロ回答」というのは流石に問題があるだろうということで、急遽一部の重鎮から知恵が出て、「とにかく外交部会で決議をしよう」という流れになったのです。

ミャンマーに対する非難決議は国会に出てすぐに通っている

有本)ただ、これはおかしな話で、佐藤正久外交部会長はご自身のSNSで少し反論されていましたが、例えばミャンマーに対する非難決議はすんなり国会に出て、すぐに通っているのです。党内手続きでも、実際にそれを見た人に聞いたのですが、国会の本会議場のなかに入ってから承認のサインをもらっていたと言うのです。法案の審議ではないので、そのぐらいでやってしまえることなのです。

「とりあえず自民党としてはやったのだ」という形をつくった〜もう1度外交部会に戻して決議

有本)つまり、対中非難決議もそうなのですが、相手が中国だと幹部会に出されたり、二幹二国と言われる自民党・公明党の幹事長・国対委員長会議や、あるいは責任者の会合とか、そのようなものに何度も出されながら、最後はもう1度外交部会に戻るのですかと。ミャンマーの決議に関して、ミャンマーでの決議文そのものを外交部会がわざわざ決議したのかと言うと、そこはしていないのです。

飯田)そこは国会に直接出せた。

有本)3月末に1度、ミャンマーに対する非難決議を外交部会でしているのですが、それは国会に出された決議文をそこで決議したわけではありません。

飯田)独自に文書を外交部会でやった。

有本)そうなのです。しかし、今回は「全会一致で出しましょうね」という文書そのものを、もう1度最後に外交部会に戻して、決議をするという。これは自民党が「とりあえず自民党としてはやったのだ」という形をつくったということなのです。

中国とは関係が深いからこそ、人権問題を看過してはいけない〜自民党本部に抗議が来ている意味を受け止めるべき

有本)私から見れば、日本の代表が集まる民主主義の府である国会で、堂々とみんなで決議するべき問題だったと思います。日本は看過しないよと。中国とは隣国であって関係も深いからこそ、このような問題については突き詰めて行くべきで、政治的意思すら示さなかったというのは、痛恨の極みだと本当に思って欲しいです。いま自民党本部や幹事長室側に抗議が来ていることの意味を受け止めて欲しいです。都議選には直接の関係はないと私は思いますが、選挙を控えているからこそ、やるべきだったのです。国民の良心はむしろいまそちらに向いています。その空気を読めないという意味で、自民党の幹部周りはどうなっているのですかと。

飯田)やはり全会一致でなければならないという慣例があるのでしょうか?

有本)それはありますが、あくまでも慣例に過ぎないので、理念的なものを謳う採択であれば、それを外して出すという勇気も必要だったと思います。

飯田)あるいは党議拘束であっても外してしまって、ということもできるかも知れません。

有本)それぞれの議員の見識を問う意味でも、外してもいいかも知れません。そのような工夫が今後あってもいいでしょうし、私はこうなったら議場でいきなり動議ということをやるような、根性のある議員が出て来てもいいのではないかと思いました。

対中非難決議として最適な文書に書き直して、ぜひ臨時国会の冒頭で堂々と決議して欲しい

飯田)結局16日で国会は閉まってしまった。これは次の国会でやるのでしょうか?

有本)次は臨時国会の冒頭などでいきなりやらないと、もうそれほど時間はないですよね。

飯田)その上、メッセージとしても弱くなってしまいますよね。

有本)皮肉で言ったのですが、これだけ非難決議には時間がかかるのに、私への対応はわずか1日ですよ。それと比べてはいけませんが、法案審議でも何でもないので、ミャンマーの事例もあるのですから、やればできるのでしょうと。秋の臨時国会の冒頭にでもぜひやっていただきたいことと、それからこの件は、各方面に配慮し過ぎてわけのわからない文面になっていたのです。「対中非難決議」と言いながら、文書のなかには「中国」という文言が入っていない。加害国当局である国の名前が入っていないことと、ミャンマーの決議は別にしているにも関わらず、この文書のなかに「ミャンマー」が入っている。大騒ぎになっているのだから、きちんとした対中非難決議として最適な文書に書き直して、ぜひ臨時国会の冒頭で堂々と決議して欲しいですね。

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