菅総理は知らなかった可能性も〜「酒提供停止」の働きかけに財務・経産の両省も関与

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月13日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。新型コロナウイルス対策で、酒類の提供停止に応じない飲食店に取引金融機関から順守を働きかけてもらうという政府の方針への、財務省、経済産業省、金融庁の関与について解説した。

記者会見する西村経済再生相=2021年7月9日午前、内閣府 写真提供:共同通信社

酒提供停止の働きかけに財務・経産両省も関与

新型コロナウイルス対策で酒類の提供停止に応じない飲食店に対して、取引金融機関から順守を働きかけてもらうよう求める政府の方針決定に、内閣官房の他、財務省と経済産業省、金融庁も関与していたことがわかった。

飯田)「事務連絡」という文章が出ていたということです。内閣官房は金融庁や財務、経産両省と調整・検討していたということを明らかにしています。そうなると、組織ぐるみだったということですね。

奥山)これは菅さんにとっては大打撃です。「お酒を」というところで、勝手に官僚が暴走したという感じになるのですかね。普通、選挙を意識している政治家であれば、こういうことはやらないのではないかと思いますけれど。

麻生財務大臣にも上がっていなかった〜菅総理は知らなかった可能性も

飯田)総理側近の与党議員に取材して回ったのですが、「ひょっとすると、菅さんは本当に知らなかったかも知れない」と言っていました。というのも、今回の話は事務連絡なだけに、麻生財務大臣にも上がっていなかったということです。

奥山)そうですよね。

飯田)内閣官房で発表を担当した西村大臣は、もちろん把握はしていたでしょうけれど、麻生大臣にも上がっていなかったとなると、本当に菅さんにも上がっていなかった可能性もあります。ぶら下がり取材で、驚いたような表情で「西村さんはそんなことは言わないだろう」とおっしゃっていました。

「緊急事態宣言を出しながらオリンピックをやる」というありえない状況のなかで、できる選択肢を必死に選んでいる

奥山)こういう話を聞くにつけ、「リーダーは大変だな」と思わざるを得ません。我々庶民の立場からすると、「上の人たちはうまくやっているのだろう」と思いますからね。

飯田)そうですね。

奥山)私は「戦略」というものを勉強しています。実務家の人たちは全員おそらく同じだと思うのですけれど、戦略をやる人は、「何も先が見えない状況」なのです。いま菅さんは、オリンピックがあります。しかし、新型コロナ対策もしなければならない。どちらもやめられないなかで、「緊急事態宣言を出しながらオリンピックをやる」という無茶苦茶な状況になっているわけです。

飯田)普通ではない状況です。

奥山)そうなったとき、渦中にいるリーダーはかなり大変なのだろうなと、何となく想像はつくのですけれども、やっている本人たちは、「よくわからないなかで、できる選択肢を必死に選んでやっている」のだと、我々も想像しなければいけない部分もあるのかなと思いました。

戦場の霧

飯田)すべての情報は入って来ているだろうと思うけれど、一方で、戦略の世界のなかで「戦場の霧」という言葉がありますよね。

奥山)よくご存知ですね。あのような状況のなかで戦っている人たちがいるわけではないですか。

飯田)霧が濃くて何も見えず、どこに敵がいるかわからないなかで、でも、戦わなければならない。

古代ローマの「ハンニバル」

奥山)私がなぜこういうことを話したかというと、ハンニバルという人のエピソードを話したいのです。古代ローマの話です。古代ローマ帝国に対して、いまのチュニジア、アフリカ北部にあるのですけれど、「カルタゴ」という小さい町がありました。

飯田)イタリア半島のブーツの先、爪先のさらに先ですね。

奥山)アフリカ側ですね。そこに昔「カルタゴ」という小さな国がありました。商売が上手くて、ローマと戦っていたのですけれど、その戦っていたところに有名な人がいました。その方が、ローマを追い詰めたのですけれど、最終的に負けて島流しにあったのです。講釈師のような人が当時いまして、その講釈師の人が「ハンニバルはこのようにしてしまい、うまくやれなかった。あいつはアホだ」ということを言った。それを聞いて怒りながら出て来たハンニバルさんに、「どうなのですか! ハンニバルさん、あの人はあんなことを言っていましたけれど」と言った瞬間に、「俺はあんなアホは見たことがない」と言ったというのです。

飯田)あんなアホは見たことがないと。

実務家でないと、その人の本当の状況はわからない

奥山)実務家でないと、その人の本当の現状はわからないのではないかと思います。だから、いろいろあるのだと思うのですけれど、菅さんも言いたいことがあるのではないかなと感じますね。実務をやっている人は、霧のなかでやっているようなもので、わからないのです。「リーダーはやはり大変なのだな」ということを、実感するわけです。

飯田)だからこそ、あとから検証して、よりよい選択肢があれば、それを勉強するということが必要なのでしょうね。

奥山)そうですね。

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