米軍のアフガニスタン撤退を中露が反対する理由

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月19日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。アフガニスタン政府と反政府勢力タリバンが和平協議を開始したというニュースについて解説した。

19日、米デラウェア州で記者会見するバイデン前副大統領(ゲッティ=共同)=2020年11月19日 写真提供:共同通信社

アフガニスタン政府と反政府勢力タリバンが和平協議を開始

アフガニスタンで戦闘を続けるアフガニスタン政府と反政府勢力タリバンの代表団が7月17日、カタールの首都ドーハで和平に向けた協議を開始した。和平プロセスを主導する国家和解高等評議会のアブドラ議長が速やかな停戦を呼びかけている。

飯田)アメリカ軍が8月末までに完全撤退するということです。

須田)これに対していろいろなハレーションが起こっています。「上海協力機構」という、中国・ロシアが中央アジアの国々とやっている協議会でも、米軍のアフガン撤退が大きな問題点になりました。一言で言ってしまえば、「アメリカ軍は撤退するな」ということです。

飯田)撤退するなと。

須田)中露が「勝手に撤退するなんて無責任だ」というようなことを言っているのです。「何を言っているのか」という感じですが。

飯田)中露からすると、プレゼンスが減るので、いいことなのではないかと思うのですが、そうではないと。

新疆ウイグル自治区に隣接するアフガン北部が反政府組織、ゲリラやテロ組織の温床地帯になっている

須田)なぜかと言うと、特に中国にとっては、アフガンに隣接するウイグル自治区に関して、不安定化するのではないかという恐れがあります。アフガニスタン北部が反政府組織、ゲリラやテロ組織の温床地帯になっているという指摘があって、そこから新疆ウイグル自治区に対して工作が行われているという認識になっているため、安定してもらわないと困るのです。ロシアも同じような関係を持っています。とは言え、アフガンから撤退して、中央アジアの国々に米軍が駐留するのはどうかと言うと、これについてはロシアは反対なのです。

飯田)自分たちに近いところに来るのは困ると。

須田)そして中国は、「アメリカはもっとアフガニスタンに対して投資をしろ」と。金を出せというような言い方をし始めています。アメリカがアフガニスタンに介入し、駐留していたことによって、最も恩恵を受けていたのは周辺国ではないかと思います。「タダ乗り」という側面が色濃かったのではないでしょうか。そういう点で言うと、バイデン政権が完全撤退すると決めたのは、もちろん米軍は反対ですが、外交や中露に対する牽制という点では、比較的いい手だったのだろうと思います。

しかし中露が介入することはない

飯田)なるほど。アメリカがそこに釘付けになって身動きがあまり取れなくなっていることで、中露が好き勝手やれるような環境だったということでしょうか?

須田)しかも中露の国内の安定にもつながっていた。だから、アメリカが撤退してアフガニスタンが不安定化することによって、中露にも影響を与えるという状況に対し、文句をつけて来たのです。しかし、中国がそこに介入しても泥沼になることは明らかですし、ロシアは過去、撤退した痛みを持っていますから。

飯田)そうですよね。1979年くらいからアフガン侵攻がありましたよね。

須田)それが結果的にソ連を崩壊させたとも言われていますから。

飯田)ここは手を出したくないと。

中国共産党創建100年を記念する祝賀大会で、大型スクリーンに映し出された「中国共産党万歳」と叫んで拳を突き上げる習近平国家主席=2021年7月1日、北京の天安門広場(共同) 写真提供:共同通信社

世界の警察官から退くアメリカ〜アジア太平洋地域にシフト

飯田)この先ですが、米軍撤退の方針は変わらないわけですよね。

須田)変わりません。これをきっかけとして「世界の警察官」という称号からは退き、その分をアジア太平洋地域にシフトさせるというのがアメリカの戦略です。

飯田)21世紀に始まった「テロとの戦い」から、またシフトして行くということですか?

須田)そうですね。アメリカとしては、アフガン撤退が「テロとの戦い」の終結という位置付けですから、高みの見物を決め込むことができるのかなと。できれば、そこに中国を引きずり込めたらいいなというくらいの感触でしょうね。

飯田)8月末までにということになっていますが、やはり9月11日という日付が意識されているわけですか?

須田)そうです。「20年経ってようやくこれが終結する」ということになるのだろうと思います。

今後、アフガニスタンを中国はどう扱うのか

飯田)中国としては、新疆辺りも含めて不安定化して行くとなると、いままでのように南シナ海に積極的に出るということもやりづらくなりますか?

須田)そこに中国がどう対処して行くのか。国境が接しているだけに、痛い問題ではないでしょうか。

飯田)アフガニスタンは一帯一路の沿線国でもあるわけですよね。しかし、そこまでお金を入れたくないわけですか?

須田)加えて、国というより、部族の集合体のようなところがあるし、地理的にも山岳地帯が多く、中国としても、どう扱っていいのかというところがあるのではないかと思います。

飯田)いろいろな大国の思惑が絡み合っている感じがしますね。

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