アメリカと中国と「ナンバースリー」の関係は“猿山”と同じ 〜世界の「バランスオブパワー」

黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(7月28日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。地政学における「バランスオブパワー」、「チョークポイント」について解説した。

バイデン米大統領(ゲッティ=共同)、中国の習近平国家主席 写真提供:共同通信社

バイデン米大統領(ゲッティ=共同)、中国の習近平国家主席 写真提供:共同通信社

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。7月26日(月)〜7月30日(金)のゲストは地政学・戦略学者の奥山真司。3日目は、地政学における「バランスオブパワー」、「チョークポイント」について

 

黒木)国の地理的な条件を基に、他の国との関係性、国際社会の行動を考える地政学です。きょう教えていただくのは?

奥山)「バランスオブパワー」と「チョークポイント」について、お話させていただきたいと思います。

黒木)バランスオブパワーというのは?

奥山)日本語でいうと、「勢力均衡」と言いますが、地政学のなかでは大切な概念です。「世界は猿山だ」という話なのです。

黒木)というと、ボスがいて。

奥山)猿山では「若頭」と言うのですかね、ナンバーツーがいて。

黒木)ナンバーツーがいて。

奥山)あとはその他もろもろ。

黒木)その他がいまして。

奥山)「1位、2位、3位の関係性で国際社会のリーダーは決まっています」という話です。

黒木)リーダーは決まっています?

奥山)リーダーは構造的に決まってしまっているという状況なのです。例えば、いまナンバーワンのボス猿と言ったら失礼かも知れませんけれど、アメリカです。国力もありますし、経済力もある。1位なのですけれど、1位と2位は必ず喧嘩をするものなのです。

黒木)そうですね。

奥山)いまナンバーツーにいるのは中国です。ナンバーワンとナンバーツーの関係は、社長と副社長のような関係なのですけれど、必ず仲が悪くなる。そうすると、ナンバーワンがナンバーワンで居続けるために何をするのか。ナンバーツーを貶めたいので、ナンバースリーとつくという構造が出てきます。人間社会でも同じことが起こりますが、国際社会でも、同じような1位、2位、3位の関係がありますよねという話が、この「バランスオブパワー」という考え方です。

黒木)なるほど。それでボス猿は勢力を保つということですね。構図はわかるのですけれど、それと地政学はどう関係あるのですか?

奥山)地政学は、そういう海と陸の争いのなかに、各国いろいろな地域によって、1位2位3位の構図が生まれているという話なのです。

黒木)すべては地図に秘密が隠されていると。

奥山)その通りです。

奥山真司 / 地政学・戦略学者 国際地政学研究所上席研究員

奥山真司 / 地政学・戦略学者 国際地政学研究所上席研究員

黒木)もう1つその「チョークポイント」というのは?

奥山)チョークポイントというのは、ある地理の1点をどこかの国が支配するとします。そうすると、その国は、そのなかで地域のなかで、いちばんの権力を持つことができるのです。例えば、宝塚劇場があります。誰が最も力を持っているのかと言うと、もちろん、社長さんなのですけれど、社長さんはどのように力を発揮するかというと、お客さんに来ていただいて、そこでお金を払ってもらいますよね。具体的にそれを地理的にどこでコントロールするかと言うと、劇場でチケットを取るところ、入り口の狭いチケットブースですか、あそこでお金を払ってもらいます。あれと同じような構造が、世界の地理のどこかにあるのだということです。いわゆる関所というものがあって、みんながそこを通らなければならないので、「そこを管理している人が権力を持っている」という考え方です。

黒木)奥山さんのご本のなかでは、シンガポールがアジアのなかでものすごく発展したというのは、その関所があるからだということですね。みんながシンガポールのマラッカ海峡を通って行くことによって、シンガポールが盛んになって行く。

奥山)シンガポールに最も影響力をいま持っているのは、アメリカです。アメリカがにらみを利かせていて、アメリカがシンガポールに「よろしくお願いしますね」と、「海をしっかり管理をしてくださいよ」ということで、アメリカがシンガポールを担保することによって、シンガポールも発展するし、アメリカも海を管理できることで、お互い。うまく行くのです。

黒木)日本の石油もアメリカのおかげで、日本に無事に石油を運ばれているというのも、いまのお話に関係あるのですね。

奥山)その通りです。中東から来る石油は20万トンという大きいタンカーで、1日に2回日本の港に着いています。我々いま電気を使っていますけれど、それは海の上をパイプラインが敷かれていて、そのパイプラインは、タンカーとして必ずシンガポールを通らなければいけないのです。「そこを止められたらまずいよね」ということで、そこを管理している人は立場が強いということです。

奥山真司 / 地政学・戦略学者 国際地政学研究所上席研究員

奥山真司(おくやま・まさし)/ 地政学・戦略学者 国際地政学研究所上席研究員

■1972年・横浜市生まれ。
■カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学卒業後、英国レディング大学院で、戦略学の第一人者コリン・グレイ博士(レーガン政権の核戦略アドバイザー)に師事。
■独自の情報網と分析で活躍する地政学者の旗手であり、ブログ「地政学を英国で学んだ」は、国内外の多くの専門家からも注目。新の国家戦略論を紹介している。
■著書に『地政学・アメリカの世界戦略地図』『ビジネス教養 地政学(サクッとわかるビジネス教養)』、訳書に『中国4.0』など多数。

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