強硬派・ライシ大統領〜それでもイラン核合意の交渉は再び進む

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月6日放送)に慶應義塾大学教授で国際政治学者の神保謙が出演。イランの国会でライシ大統領の宣誓式が行われたというニュースについて解説した。

18日、イラン・テヘランで投票後に演説をするライシ師。イラン内務省は19日、ライシ師が同国の第13期大統領選挙で当選したと発表した。(テヘラン=新華社配信)=2021(令和3)年6月20日 新華社/共同通信イメージズ

イランのライシ大統領の宣誓式が行われる

イランの首都テヘランの国会で8月5日、反米保守強硬派のライシ大統領の宣誓式が行われた。ライシ師は国際協調を掲げた穏健派のロウハニ前大統領の方針を転換。アメリカとの対決姿勢を強める見込みで、中東不安定化の要因になる可能性がある。

飯田)強硬派が来て、アメリカとの関係が緊迫するのではないかと言われております。いかがでしょうか?

イラン核合意の交渉は再び進む

神保)案外、2015年にアメリカとイランが結んだ核の包括合意の交渉が、再び進んで行く可能性が高いと思います。

飯田)前任のロウハニさんは、これを進めていて、ライシさんの就任前までに妥結するのではないかと言われていましたけれども、結局、流れてしまいましたよね。

神保)バイデン政権で交渉を担当しているジェイク・サリバン安全保障補佐官とブリンケン国務長官、ウェンディ・シャーマン国務副長官は、オバマ政権でもイランとの合意に関わったプロ中のプロなのです。合意の中身はよく知っているし、イランがどこで駆け引きをするかということにも詳しいのです。イランには、穏健派のロウハニ政権で進めていた路線が、トランプ前大統領によって「ひっくり返された」という思いがあります。

飯田)トランプさんに。

判断材料はアメリカの中間選挙と大統領選

神保)つまり今度合意をするにしても、「どのくらい継続できるのか」ということがイランにとっては政治リスクにあたるのです。「お前、妥協したのにひっくり返されたな」ということになりかねない。イラン側からすると、最も大きな判断材料は、アメリカの中間選挙と大統領選挙です。

飯田)アメリカの。

神保)そこでバイデン政権が第2期に入り、民主党政権が8年間続くということになれば、しっかりと合意を結んで経済制裁を解除させた方が、イランの国益にとってプラスではないかという判断が働くのだと思います。

飯田)なるほど。

神保)実際に経済制裁が効いているのです。特に水と電力に関しては、相当テヘランでも厳しい状態にあります。国民の支持を集めないと大統領職は務まりませんので、やはり経済を回復させることは重要です。ただし、合意をしてアメリカに裏切られるということは許されない。そうなると、ポイントとなるのは、アメリカ国内の政治の安定性です。その判断ということになるのだと思います。

飯田)来年(2022年)の中間選挙まで1年を切っています。そこが最初の試金石になって来る。

神保)大体の情勢はわかって来ると思いますし、それを見ながら、イランは条件を付けつつアメリカと交渉して行くのではないでしょうか。当然、「アメリカが勝手に放り出したのだから、まずは経済制裁を緩和しろ」という駆け引きをいま行っています。同時にそれを引き出すために、核施設のウラン濃縮のパーセンテージを上げて行くのですけれども、わだかまりが取れて具体的な条件設定になれば、交渉が転がり出す可能性はあるのではないかと思います。

アメリカとの交渉を批判する勢力も

飯田)タンカーの襲撃に関して、イランに関係する組織がやったのではないかというような話や、ドローンを飛ばして襲撃ということも出て来ていますけれども、この辺も交渉へのプレッシャーなのでしょうか?

神保)イランが一枚岩かどうかがわからないのですよね。

飯田)そこがわからないわけですね。

神保)アメリカとの交渉を批判する勢力はあるし、アメリカがパッケージで「湾岸諸国のシーア派への支援を止めろ」という形になると、イエメンやアラビア半島の湾岸諸国、そしてイスラエル近隣の国々に対するイランとの関係が断ち切られてしまいます。それはシーア派全体の影響力の低下につながることになる。「そのようなことを合意するのか」という勢力は、イランのなかには居ると思います。

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