政治の道具として語られ過ぎた東京五輪〜今後の五輪のあり方

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月10日放送)にジャーナリストの末延吉正が出演。8月8日に閉幕した東京オリンピックについて解説した。

【東京五輪2020 閉会式】閉会式が行われている国立競技場に上がる花火=2021年8月8日午後、東京都渋谷区の渋谷スカイ 写真提供:産経新聞社

菅総理大臣が東京オリンピックについて、開催国としての責任を果たしたと述べる

菅総理大臣は8月9日に記者会見を行い、東京オリンピックが閉幕したことについて、「開催国としての責任を果たし、無事に終えられた」と述べた。感染対策については、海外から厳し過ぎるという声もあったが、日本だからできたと評価する声も聞かれたとした上で、「皆さんの協力に心から感謝申し上げたい」と述べた。

飯田)コロナ禍でのオリンピックが閉幕を迎えました。

政治の道具として語られ過ぎた東京オリンピック

末延)私も含めて、テレビでオリンピックをやっていなかったら、ものすごい喪失感があったと思います。その意味では、みんなが楽しんだと思います。一方で、無観客にしなくても、2020年からワクチンを打って、政府や東京都がしっかりしていれば、有観客で子どもたちを入れて、直接観てもらえたという批判もあります。あまりにも政治の道具として語られ過ぎましたね。

飯田)そうですね。

末延)もうその線は崩れて来たけれども、オリンピックを成功させて支持率を上げ、パラリンピックが終わったら解散総選挙という話もありました。しかし、実際に支持率も上がっていません。それを見るとお祭り資本主義的な、政治学者の言う祝賀資本主義、そういうものがこれからできるのかという問題が今回見えましたよね。

飯田)祝賀資本主義。

末延)選手も頑張ったし、ボランティアの人や関係者には敬意を表しますが、一方で五輪をどうやって維持するかは考えなければいけない。その契機になったと思います。日本人がいけないのは、忘却の民で、最初はいろいろと言うのだけれども、終わるとすぐに忘れてしまうのです。今度は夏の甲子園、そちらがBGMになるのですよ。

飯田)社会全体の。

選手や関係者は頑張ったが、リーダーからの言葉はなかった

末延)それが終わると今度はパラリンピック。終わると全部忘れてしまう。そうではなくて、私は今回のオリンピックはあってよかったと思うし、見たかったし、新しいタイプの若い人がたくさん出て来た。しばらく海外出張にも行けていないではないですか。私はオリンピックを観ながら、「パンデミックが収まったらどこへ出張しようかな」などと考えていました。

飯田)私もこれはどこの国旗だろう、と思って調べたりしました。

末延)私は過去70ヵ国くらい回りましたが、「こんな国ができていたのか」というような国があって、実に面白かったです。地球は狭くなっています。そういう意味では、菅さんや小池さんなどの政治リーダーは、オリンピックというものの意義、自分たちがどういう思いを持っているのかということを言葉で、みんなと共鳴できるように語って欲しかったです。無理な感じがしますけれども。それが私のいちばんの印象です。若い人は頑張ったし、関係者の皆さんはご苦労されたと思います。しかしリーダーの人が何も言わなかったですよね。

飯田)そうでした。口で「平和の祭典」などという題目のようなものはありましたけれども。

日本は海外メディアの論調に弱過ぎる

末延)それともう1点、日本人の悪いところで、海外メディアの論調に弱過ぎる。海外の報道を見ると、例えばニューヨーク・タイムズなどはボロクソに書いているけれども、ウォール・ストリート・ジャーナルなどはうまくやったではないかと言っている。日本のメディア自身が外国のメディアの論調を利用する形で、政権批判とセットにしてしまっている。もっと本質的な議論を整理しながら自信を持って語っていいのだと思います。スケートボードの若い選手やレスリング女子の須崎さんもそうだけれど、若い人たちのはつらつとした感じを見ていると、素直にもっと楽しんでまっすぐ議論をしていいのではないかなと思います。その辺も含めて、政治家もメディアも考えるきっかけにして欲しいと思いました。

東京五輪の開会式で入場行進を終え、競技場内で記念撮影する各国選手団=2021年7月23日、東京・国立競技場 写真提供:時事通信

日本はこれまでのオリンピックのあり方を変える提言をするべき

飯田)事務総長の武藤氏が8月9日の会見のなかで、このままだとお金のある大都市でしかできないのではないか、ロスとパリと東京を行ったり来たりするのではないかと言っています。「そうでないものをつくらなくてはいけない」という理念のようなものは、2016年の招致の際には語られたのだけれども、結局やってみてどうだったというのは。

末延)しかも武藤さんがはっきり、「8キロ以内のコンパクト五輪というのは大嘘だ」と言っていた。事務総長があそこまで言うのですよ。「あんなものは一見よさそうだけれど、現実的ではない」と言っていたではないですか。8キロ以内に新しい設備をつくっただけだと。初めて関係者の言葉でストンと落ちましたよ。

飯田)それを早く言ってよという。

末延)言葉は躍ったけれども、それはあくまでプレゼンのための、大手代理店を含めたいままでのスポーツイベントのやり方です。日本はやはり変えなければいけません。同時に、開催したのだからその実績を持って、世界に「こういう問題がある」ということを提起する。海外に叱られたからこうです、というようなことはいい加減にやめるべきです。

飯田)自分たちできちんと総括までできる国にならなければいけない。

末延)過信はいけないけれども、根拠のあるものはもっと自信を持って、積極的に語っていいのだと思います。

もっと自信をもっていい

飯田)「選手村が中世のようだ」という記事が出たときに、フェンシングの太田さんがツイッターで、「そんなことはない、本人に確認したけれど」という発信が出たり、幻の開会式みたいなものがメディアで出たり、少しずつ、「真相はこうだった」というものがネットにも出て来ていて、少し希望はあるのかなと思いました。

末延)「選手村の餃子がすごく美味しかった」などということが出ているではないですか。

飯田)コンビニ最高とか。

末延)もっと自信を持つところは持っていいし、メディアもステレオタイプで語り過ぎていて、そこは反省ですよね。

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