堀江貴文氏のような「新自由主義」から「共同体主義」へと世の中の流れは変化しつつある

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月18日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。時代の変化とともに変わる世代の感覚について解説した。

著書「なんでお店が儲からないのかを僕が解決する」の発売記念イベントを東京都内で行った堀江貴文氏=2016年10月16日 写真提供:産経新聞社

新自由主義、共同体主義

1970年代生まれ、ロストジェネレーション世代を象徴するキーワード、「新自由主義」。そして1980年代生まれ、ミレニアル世代の特徴は「共同体思考」。東日本大震災と新型コロナ禍という2つの災いが、こうした世代にどういった考えをもたらしたのか。

新行市佳アナウンサー)ソーシャルメディア『note』に「ロスジェネ新自由主義からミレニアル共同体主義へと転換する日本 佐々木俊尚の未来地図レポート」という、佐々木さんの最新レポートが掲載されています。

時代の変化とともに、世代の感覚がどう変わって来ているか

佐々木)時代の変化とともに、世代の感覚がどう変わって来ているかということを書いているのだけれど、私はバブル世代なので、バブルを謳歌していたわけです。いちばん割を食ったのが、その下の70年代生まれ、団塊ジュニアという言い方もしますけれども、ロスジェネと言われる人たちです。20代のころに就職氷河期になり、就職できなかった非正規の方がたくさんいる世代です。

ロストジェネレーション世代の成功者である「新自由主義者」〜生き残れなかった奴が悪い

佐々木)これは社会の重要な問題であり、彼らの責任ではないのだけれど、一方で酷い目に遭ったが故に、被害者意識が強くなっている。また、2000年代に入り、生き延びるために一部で起業する人も出て来た。その結果、成功する人も出て来たのです。典型的な例が堀江貴文さんや、サイバーエージェントの藤田晋社長です。2人とも団塊ジュニア、ロスジェネ世代の成功者です。あの世代の起業家に知り合いが多く、仲がいいのだけれども、ほぼ全員が新自由主義者です。

新行)新自由主義者。

佐々木)新自由主義とは何かと言うと、「市場の原理に任せて、お金持ちになる奴はなればいい。国が余計なことをする必要はない」と。どちらかと言えば、社会福祉などは必要ではなくて、「自分たちの努力で何とかせよ」というのが新自由主義なのです。「リバタリアン」とも言います。

新行)自分たちの努力で何とかする。

佐々木)なぜそうなるかと言うと、生き残った起業家、成功した起業家というのは、自分の力で生き残ったのだと。これを「生存者バイアス」と言うのですが、「自分が生き残れたのだから、生き残れなかった奴が悪い」というマインドが強いのです。だからみんな新自由主義者なのですよね。

現状のアンチテーゼとして起こった外資やFX投資ブーム

佐々木)生き残れなかった、負け組になってしまった非正規雇用の人たちは、一方で被害者意識が非常に強いという構造になってしまっている。10年くらい前、震災の前、リーマンショックが起きる前に「投資で儲けよう」というようなブームがあったのを覚えていますか?

新行)ありましたね。そういう本も出ていました。

佐々木)勝間和代さんの『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』という本がベストセラーになり、外貨預金やFX投資などがブームになりました。あれもやはり非正規雇用で「人生うまく行かない」という人が、社会の状況に対するアンチテーゼとして金融で儲けよう、投資で儲けようというところに行ったのだと思います。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

新自由主義ではない1980年生まれの「ミレニアル世代」〜起業家も融和的

佐々木)1980年代生まれのミレニアルズ、ミレニアルは1000年期という意味なのですが、2000年に20歳だった人は1980年生まれです。だからそれ以降の80年代〜90年代に生まれた世代を「ミレニアル世代」と言うのですけれど、この世代は全然、新自由主義ではありません。

新行)ミレニアル世代は。

佐々木)堀江貴文さんや藤田さんのような人は、「1兆円企業をつくるぜ」という「ウェーイ」な感じなのですが、その下の80年代生まれの起業家はもう少し融和的です。それほど成長しなくてもいいから、一緒に会社をつくった仲間やお客さんたちと友好な関係をつくりたい。または、金持ちになるというよりは、いまの人生を持続させたい。価値観を壊したくないとか、社会に対して価値を提供したいというような考え方の人が多いのです。

「俺だけがジャングルで生き残るんだ」から「みんなで社会をよくして行きましょうよ」へと変化

佐々木)彼らのもう1つの特徴は、楽観的でネガティブではないということです。起業家たちは基本的に明るいのです。それを見ていると、新自由主義のような「俺だけがジャングルで生き残るんだ」というかつての70年代生まれのマインドから脱却して、「みんなで社会をよくして行きましょうよ」という方に考え方が切り替わっているのです。

新行)みんなで。

佐々木)政治に対しても、怒りを抱くというよりは、社会を変えるのだったら怒ってデモをするのではなく、政治と一緒に自分たちもやって行きたいと。政治のなかに入って、国と一緒に協力して何かやろうという方向に舵を切っている人が多いのです。だからNPOをやって、自治体や行政とも協力しながら社会を変えて行く運動をしている人もいるのです。これは新しい「共同体主義」だなと思います。

新自由主義はきつい〜「調和しながら共同体をつくって行く」という方向へ

佐々木)近年、「新自由主義はちょっときついよね」と言われるようになって来ました。特にグローバリゼーションが進んでから、貧富の差が拡大して、ジャングルのなかで生き抜くのはいいのだと言っていたのだけれども、それもきつくなって来た。だから「もう少しみんなで共同体を大事にしましょう」と言うマイケル・サンデルさんなどが出て来ました。あの人もずっと共同体主義を主張しています。そういう流れを見ると、日本だけではなく欧米も含めて、世の中全体が「もう少し調和しながら共同体をきちんとつくって行きましょう」という方向になっているかな、という感じがします。

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