難しい中国政府の「中国恒大集団」への対応 〜「共同富裕」とバブル崩壊の間で

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月30日放送)に朝日新聞編集委員で元北京・ワシントン特派員の峯村健司が出演。巨額負債で経営危機に陥っている中国不動産大手「中国恒大集団」について解説した。

恒大集団=2021年9月17日 Wang Gang / Costfoto/Sipa USA 写真提供:時事通信

経営危機の「中国恒大集団」

巨額負債で経営危機に陥っている中国不動産大手「中国恒大集団」は9月29日、傘下の地方銀行、盛京銀行(遼寧省瀋陽市)の株式を99億9300万元(約1700億円)で売却すると発表した。

飯田)このところマーケット等々でも話題になっている中国恒大集団。9月29日に利払いの期限が1つありましたが、乗り越えましたね。

峯村)結果的には、国有企業が一部株を売却する動きもあったりして、資金調達をしているので、いまのところはぎりぎりのところで乗り切っている状況です。

(※編集部注:10月4日、香港証券取引所で中国恒大集団の取引が停止になった)

飯田)この先はどうなりそうですか?

峯村)これで終わりではなく、次々と債務返済の期限が来るので、その度に「大丈夫か」という話にはなります。先日、中国のシンクタンク当局者に取材をしました。「デフォルトしてバブル崩壊はあるのか」と聞くと、「そこについては絶対に起こさない」とは言っていました。

家の価格が年収の50倍にも膨らんでいる中国

飯田)日本のバブル崩壊を教訓として見ているところがあるのですか?

峯村)あると思います。中国自体はバブルがかなりの程度で深刻になっています。中国のいま家の価格の平均が、平均年収の約50倍です。当時の日本のバブル期では、だいたい年収の10倍くらいでした。50倍となるとローンも組めませんよね。となると、「もう家を買えないではないか」という状況なのです。

飯田)そうですよね。

峯村)しかし、日本と違って中国の場合、男性は持ち家を持っていないと結婚すらできないというくらい、家はマストなのです。「家が買えない、結婚もできない。どうなるのか」と、一般市民の不満は高まっているのです。

中国政府による見せしめの1つ

峯村)そんな状況のなか、恒大集団はある種、人身御供になっているのではないかと見ています。

飯田)見せしめですか?

峯村)見せしめの1つだと思います。実は今回の危機は起こるべくして起こっているものです。発端は、中国政府が恒大集団のような不動産デベロッパーに対する資金提供を40%まで抑え込んだことなのです。

飯田)資金提供を。

峯村)当然、業界でいちばん大きなところがダメージを受ける。特に恒大集団の場合、サッカーチームや電気自動車の事業など、手広く経営していたので、影響をもろに受けてしまった。それを考えると、中国政府としてはある程度、折り込み済みの結果だったのではないでしょうか。

「金持ち、腐敗、権力」の象徴である不動産を叩きのめすことは国民の関心を得るためのチャンス〜一方ではバブル崩壊の懸念も

飯田)「共同富裕」というキーワードで、みんなで仲よく富んで行こうということをやっているではないですか。濡れ手に粟のような感じで、バブルに乗って成長した企業をおいそれと助けるわけにもいかないというのは、事情としてあるような気もしますが。

峯村)そこが難しいポイントです。中国の経済政策というのは、ケ小平氏以来、改革開放路線を敷いてきました。その重要な考え方の基礎となっているのが、「先富論」つまり、「先に豊かになる人は金持ちになってね。あとから追いかけるから」というものです。

飯田)先富論。

峯村)それを「一部が豊かになっているだけではないか、貧乏は貧乏なままではないか」ということで、習近平さんが格差を是正する政策を行っているなかで、不動産というのはある意味、「金持ち、腐敗、権力」の象徴なわけです。

飯田)不動産は。

峯村)ですので、「それを叩きのめすのだ」というやり方は、いまの中国政府にとって、民衆の関心を得るにはよい方法なのです。一方で、いま飯田さんがおっしゃった通り、「バブル崩壊が起こるからまずいね」と言って、公的資金や税金を突っ込むとなると、国民の反発を招いてしまうため、難しいグリップが求められています。

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