台湾TSMCが熊本に工場を建設する本当の理由

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月18日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。台湾のTSMCが熊本に工場を建設するというニュースについて解説した。

半導体大手、台湾積体電路製造(TSMC)のロゴの前を歩く男性(台湾・新竹市)=2021年1月29日 AFP=時事 写真提供:時事通信

TSMCが熊本に工場を建設

半導体の受託生産で世界最大手の台湾のTSMCが、日本に新しい工場を建設する方針を明らかにしたことを受け、萩生田経済産業大臣は10月15日、経済安全保障の観点から手厚く支援して行く姿勢を示した。「必要な予算の確保と、複数年度にわたる支援の枠組みを速やかに構築したい」としている。

飯田)半導体の世界最大手「TSMC」が、日本の熊本に工場をつくるということですが、かなり長い間、誘致をして来たようですね。

TSMCが日本の工場でつくるのは前世代型の半導体 〜「日本はこれで遅れを取った」ことにはならない

須田)TSMCが新設工場をつくることは、アメリカに続いて日本でもということになるのですが、そこでつくる半導体の回路幅は22〜28ナノメートルで、最先端というわけではありません。いまの最先端は10ナノメートル未満なのです。そのように前世代型なので、「TSMCが日本を舐めている」とか、「日本はこれで遅れを取った」というような指摘があるのですが、それはまったくの的外れです。

飯田)まったくの的外れ。

須田)なぜかと言うと、いま中国を除いて世界的な規模でサプライチェーンの再構築が行われています。このなかで最も注目するべきなのは、これから本格的なIoT(Internet of Things)時代、つまりあらゆるものがインターネットにつながって行くという時代を迎えます。通信回路についても5G、将来的には6Gを迎えると、一気に進んで行くという状況になります。

西側陣営で使う半導体には認証が必要 〜中国でつくられた半導体は使えない

須田)アメリカや西側の戦略としては、敵視しているわけではないけれども、リスク管理の問題として、アメリカ・日本・ヨーロッパを中心とする西側先進国陣営と、中国を中心とするローカルな陣営の2極化にするということです。おそらくIoT時代では、相互の互換性はないだろうという前提で物事が進んでいるという状況なのです。

飯田)互換性はない。

須田)日本でつくる半導体は、車載用の半導体なので、最先端のものは必要ありません。ただ、車はIoTのなかでは非常に大きな意味合いを持って来ます。自動運転装置付きの自動車で、しかも電気自動車になると、そこが欠けてしまえば、日本の自動車産業は立ち行かなくなります。

飯田)なるほど。

須田)そこで、西側陣営で使う半導体については、認証が必要になります。「ダーティな回路は使っていません、ダーティなところの回線には接続していません」、あるいは「バックドアを付けて法律上の要求があれば、特定の政府や特定の政党に提供するようなことはやっていません」というような、認証が付いた半導体しか使えなくなります。そうすると、中国でつくられた半導体はもう使えなくなるのです。

TSMCが日本に工場をつくることは未来を見据えた上でのこと

須田)認証が取れないではないですか。「ダーティな半導体」という認識になってしまう。TSMCが中国でつくったとしても、その認証がない以上、日本の車載用の半導体には使えない。ですので、日本でつくるか、アメリカやヨーロッパでつくらざるを得ないのです。では、自動車はどこでつくっているのかと言うと、トヨタなどはほとんど日本国内でつくっています。サプライチェーンの一環として捉えるならば、日本に工場をつくらざるを得ない。そうしないと国際的な競争力を持てないことになるのです。10年後、20年後の状況を見据えた上で、熊本に工場をつくるというのは戦略的に進んでいるものであって、「遅れている半導体工場をつくることに何の意味があるのか」という指摘は、いま世界で起こっていることや、その戦略をまったく理解していないのだなと思います。

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