米中「軍トップ同士のホットライン」存在の意義 〜中国が2021年8月に極超音速兵器の発射実験を実施

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月18日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。中国が核弾頭を搭載可能な極超音速兵器の発射実験を実施したというニュースについて解説した。

バイデン米大統領(ゲッティ=共同)、中国の習近平国家主席 写真提供:共同通信社

バイデン次期米大統領(ゲッティ=共同)、中国の習近平国家主席 写真提供:共同通信社

中国が2021年8月に極超音速兵器の発射実験を実施

イギリスのフィナンシャル・タイムズ電子版は10月16日、中国が核弾頭を搭載可能な極超音速兵器の発射実験を実施したと伝えた。ミサイルは地上の標的を外したものの、中国の驚異的な技術力の向上に、アメリカ情報当局に驚きが広がったとしている。

飯田)2021年8月に発射実験を行ったと、複数の関係者の話として報じられています。

須田)音速の5倍以上、つまりマッハ5以上ということなのですが、極超音速ミサイルについては、「中国が実現して実験に移るだろう」ということは事前に予想されていました。そのような意味で言うと、順調に推移しているということです。

米中で軍トップ同士のホットラインが存在する

須田)ポイントは2つあります。1つ目は、このような開発競争が今後エスカレートして行くということです。もう1つは、戦闘行為に移るつもりはなかったのだけれど、「偶発的な戦闘行為になったときに、この種の兵器が使われるかどうか」ということです。

飯田)偶発的な戦闘行為になった場合に。

須田)セーフティネットと言うのでしょうか、偶発的な衝突からエスカレートして行くのを回避するために、どのような仕組みがつくられているのか、あるいはつくるべきなのか。この点についてですが、9月下旬にアメリカ議会で米軍のトップが公聴会に呼ばれましたよね。何の話かと言うと、それまで「ワシントン・ポスト」のエース記者だった方が本を出されたのですが、「トランプ政権下において、中国軍トップと電話連絡を2回ほど取っていたのではないか」ということです。「アメリカが中国を攻撃して来るのではないか」という懸念が広がり、その懸念を払拭するために、中国側へ連絡を入れていたということが本に書かれたのです。

飯田)中国側へ。

須田)それに対して、実際はどうだったのかということを議会で聞かれました。問題なのは、そのような軍トップ同士のホットラインがあるということです。政府のトップ同士のホットラインというのは、中国側が拒否しているので存在しません。

飯田)そうですよね。

須田)しかし軍のところでは、偶発的な衝突行動がエスカレートするのを防ぐために、「相手の真意を探る」という意味でのホットラインがあり、それがきちんと機能しているということがポイントです。

中国が開発兵器を使うことがないようにするための仕組みもできている

須田)もう1つのポイントとしては、軍が勝手に独走しないように、その辺りの文民統制、シビリアン・コントロールが効いているのかどうかというところです。当時の国防長官はエスパーさんがやっていましたが、きちんと報告して了解を取っているということでした。ただし問題なのは、トランプさんの耳には入っていなかったということです。

飯田)大統領には。

須田)問題はあるにせよ、シビリアン・コントロールが働いているということは言えるのかなと思います。これからは兵器開発競争の時代に入って行くのですが、「中国側はアメリカを上回るような兵器を開発したのだから使いたくなるはずだ」とか、「使いたくなる欲望に駆られる」という指摘が出て来るけれど、「そうならないための仕組みもきちんとある」ということを念頭に置いて考えた方がいいと思います。

日中におけるホットラインの必要性

飯田)ホットラインの部分で、かつての米ソ冷戦時代もキューバ危機があり、その後にホットラインができるという流れがあったことを考えると、この有無は大切になりますよね。

須田)「やられる前にやる」という先制攻撃が軍事のイロハのイだと思うのです。兵器を持っている、持たれているということが何かのトリガーを引いてしまう可能性もある。そのような場合に、ホットラインの有無というのは大きな意味を持つと思います。日中間にそのようなホットラインがあるのかどうかというところも、1つのポイントになって来ると思います。

飯田)日中間では、現場レベルでのホットラインをつくる、つくらないという話が取り沙汰されてはいますが、まだ動き出してはいないですよね。

須田)それを真剣に考えて、必要なのかどうかというところの議論も含め、このような事例をきっかけに考えて行かなければいけないと思います。

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