LINE問題は、単なるアプリの不具合ではなく「安全保障の問題」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月19日放送)に朝日新聞編集委員で元北京・ワシントン特派員の峯村健司が出演。LINE問題調査委員会の最終報告書公表について解説した。

LINEのロゴ 政府、LINEに報告要求=2021年3月19日 写真提供:共同通信社

LINE問題で調査委員会が最終報告書を公表

通話アプリのLINEが、データを海外で保管していたことなどを利用者に十分説明していなかった問題で、調査に当たった委員会が最終報告書を公表した。報告書はLINEの中国子会社への業務委託について、中国政府に情報が流出するリスクなど経済安全保障への適切な配慮ができておらず、事後的に見直す体制も整っていなかったことを問題視。グループ全体でデータの安全な管理体制を強化するよう提言した。

飯田)きょう(10月19日)のコメンテーターである朝日新聞編集委員の峯村健司さんは、LINEの個人情報管理問題のスクープと関連報道で、10月6日、優れた報道に贈られる2021年度の新聞協会賞を受賞されております。おめでとうございます。

峯村)ありがとうございます。

飯田)あのスクープがきっかけとなって問題が動き出し、「第三者委員会に調べさせる」という話がありましたが、その最終報告書が出ました。どうご覧になられていますか?

峯村)私も昨日(18日)のオンライン記者会見に参加させていただきました。3月のLINE社の記者会見では私の質問は無視されましたが、今回は答えてくれました。

飯田)あのときは、最前列で手を挙げていたのに一切指されなかったとおっしゃっていました。

「すべてのデータは日本に閉じている」と虚偽の説明をしていた 〜誰が責任を取るのか

峯村)LINEはおよそ8600万人が利用しており、ほとんど公共インフラとなっているのに、「大丈夫なのかな」というのが報告書を読んでの率直な感想です。「お任せしてしまっていいのか」という不安は完全には解消されていません。

飯田)大丈夫かと。

峯村)私の報道がきっかけとなって明るみに出たのですが、「利用者の全画像・動画が韓国にあるサーバーに保管されていた」ということがいちばんの問題だったわけです。

飯田)韓国のサーバーに。

峯村)中間報告で、一部のLINE役員が政府や自治体に対して、「安心してください。すべてのデータは日本に閉じている」と虚偽の説明をしていた。「本当は韓国にあるのですけれども」とか、「第三国にあるのですけれども」と説明しておけば、問題はここまで大きくはならなかった。国や自治体に対して嘘の説明をしていた。これがいちばんの問題だと思うのです。

飯田)なるほど。

峯村)では、「担当した役員はいまどうなっているのか」と聞いたら、まだその職にいるということなのです。昨日ははっきりと答えませんでしたが、私の取材では、まだ役員にとどまっているそうです。政府を「だました」と特別委員会が認定しているのに、LINE社は「誰が責任を取ったのか」ということも明らかにしていないわけです。今後、本当に責任を取るのか、処分をするのかということも注目しています。

総理が外遊するときもやり取りしていたLINE 〜韓国なり中国に情報が流れていた可能性も

飯田)新型コロナワクチンの予約システムもそうですし、あるいはキーマンとなるような政治家や官僚の方も、連絡手段として使っています。つまり「データは日本に閉じていますよ」という説明を信じた部分はあるわけですよね。

峯村)朝日新聞の3月17日のタイトルが、

『日本のLINE利用者の画像・動画全データ、韓国で保管』

〜『朝日新聞デジタル』2021年3月17日配信記事 より

峯村)……というタイトルだったのですが、朝から国会議員の方や官僚の方から、「私のデータが入っていたか調べることはできないですか」という電話やメールが殺到しました。

飯田)殺到した。

峯村)見られたくない画像なども含めて、皆さんLINEを使っている。それが第三国に流れていたということについて、恐怖心もありますし、プライベートの話だけならいいのですけれども、私の知り合いの外交官なども普通に業務で使っているのですよ。

飯田)業務に。

峯村)ワシントンの日本大使館員などもそうだったのですが、総理が外遊するときもLINEを使ってロジや業務のやり取りをしていた。こうした内部のやりとりが、日本との関係が必ずしもよくない第三国、韓国なり中国に流れていた可能性はあるわけです。

飯田)そうですよね。

峯村)外交の交渉から言えば、いきなり不利な状況になる。驚いたのは、昨日の最終報告書でも、経済安保的な問題も含めていろいろなガバナンスがダメだと言っているにもかかわらず、未だに「何が問題だったのか」と呑気なコメントをする有識者がいるのです。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

第三国に利用者の情報が流出していないことが確認できたのは1年間だけ それより前のことは確認のしようがない

峯村)昨日も「第三国に利用者の情報が流出したことは確認できませんでした」と座長の方は言っていましたが、それが確認できたかどうかは、昨日もはっきり言っていましたけれども、1年間だけなのです。「ログ」というアクセスした記録を残しているのは1年だけで、その1年間より前のことは確認のしようがないわけです。だから「流出しなくてよかったね」ではありません。「流出したことが確認できなかった」だけなのです。

第三国が悪意を持ってそのデータを脅しに使う可能性も 〜日米同盟にも影響しかねない

峯村)「流出していた可能性も充分にある」と考えると、政治家のプライバシーの問題や、官僚の不祥事のような話が第三国に漏れているかも知れない。その第三国が悪意を持ってこうしたデータを溜め込み、それを脅しに使うとか、メディアにリークするようなことも十分にあり得るわけですし、ないとは言い切れないわけです。

飯田)可能性はある。

峯村)その意味では、ただのアプリの不具合ではなく、安全保障の問題なのだということです。昨日の最終報告でも、「経済安全保障への適切な配慮ができていなかった」という、まさにこの部分ですよね。いま米中の対立が深まって、バイデン政権も「経済安保がいちばん大事だ」と言っている矢先に、日本の公共インフラ、ほとんどの自治体や政府が使っているアプリが、これほどずさんな状況だったということになると、日米同盟にも影響しかねないことです。

会見を聞いていると、本当に真摯な対応なのかと、疑問に思わざるを得ない

飯田)データに関して、日本のサーバーに移すのだということを、3月の時点でも言っていたと思いますが、進んでいるのですか?

峯村)計画通りに進めてはいます。ただこの計画も、話が二転三転しているのです。基本的にLINE社の対応は、「聞かれなかったら黙っていればいいや」という風潮があるように感じます。よく聞くセリフなのですけれども、「だって、あなたたちは聞かなかったよね」というスタンスなのです。「だから私は言わなかったのだよ」という。こうした説明責任の意識の欠如が根本的な問題だと思います。

飯田)聞かれなかったから言わなかったと。

峯村)公共のプラットフォームなのだから、自分たちから開示するという意識を持つべきです。しかし、そうした改革の意識は感じられません。例えば、この事件を受けて委員会が社内2300人に再発防止に向けたアンケートを取ったそうです。その回答率が30%しかなかったと言うのです。

飯田)30%ですか。

峯村)信じられないですよね。普通、このような問題が起きたときは100%に近い回答が来るというのに。そして、あまりにも回答が少ないから2回も追い質問をして、ようやく30%の回答があったということを考えると、本当にこの会社は変わろうとしているのだろうかと。当時の検証部会の川口さんという座長も、「非常に残念だ」とおっしゃっていましたけれども、昨日の会見を聞いていると、本当に真摯な対応なのかなと疑問に思わざるを得なかったですよね。

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