「新しい資本主義実現会議」の実態 高橋洋一が解説

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月27日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。岸田総理が「成長と分配の好循環」の実現に向けて設置した「新しい資本主義実現会議」の初会合を開いたというニュースについて解説した。

2021年10月15日、看板掛けを行う岸田総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/100_kishida/actions/202110/15kanban.html)

総理官邸で「新しい資本主義実現会議」初会合

岸田総理大臣は10月26日、「成長と分配の好循環」の実現に向けて設置した「新しい資本主義実現会議」の初会合を開き、科学技術立国の推進や経済安全保障の強化など、最優先で取り組む課題について、11月上旬にも緊急提言案を取りまとめるよう指示した。

実はアベノミクスと同じ「成長なくして分配なし」

飯田)閣僚としては岸田総理、山際経済再生担当大臣など、そして民間有識者には渋沢栄一さんの孫の孫(玄孫)にあたる投資信託会社会長の渋沢健さんなどが出席したということです。新しい資本主義実現会議についてですけれども。

高橋)「分配をする」というのはわかりますけれどね。でも選挙戦のなかでは、分配のことを言わなくなってしまった。オーソドックスなところでは、分配も成長もどちらが先などということは言わないで、「分配と成長の好循環」と言うのが無難なのです。

飯田)分配と成長の好循環と。

高橋)でも選挙戦のなかで、野党の方から「分配なくして成長なし」と言われるものだから、「成長なくして分配なし」と、野党の人が言ったことをひっくり返した言い方が最近多いのです。そうすると、新しい資本主義が何なのかわからなくなってしまって、「成長なくして分配なしです」と。これ、実はアベノミクスと同じなのです。だからそれが嫌だと岸田さんも思っているのでしょうけれど、そうしないと選挙戦も争点がわからなくなるし、はっきり言うとこれは「成長なくして分配なし」なのですよ。

30年間成長していないのは日本だけ 〜ここが最大の問題

飯田)「成長と分配」という話ですけれども、どちらかと言うと、きょう(27日)の新聞の紙面などでは、中間層の雇用や賃金を中心に書いているところが多いのですが。

高橋)それは成長ですね。

飯田)結局、それも原資がないとできない。

高橋)だから「成長なくして分配なし」になってしまうのだけれど、どうやっても、それしか答えが出て来ません。日本の現状を考えても、ジニ係数というものを見ると、2000年の頭くらいがピークになっていて、そこから低下しているから、平等度は改善している方向なのです。

飯田)格差の部分は。

高橋)成長のところは、ほとんど30年間、世界で最も低いので、やはり成長がより重要なのです。分配の方は改善している傾向があるけれど、成長率はほとんど世界の最下位ですからね。成長しなければまずいと。30年間ほとんど成長していない国は日本しかないのです。ここがやはり最大の問題だろうと思います。それを分配と言ってしまうと、「ええ? 成長しないで?」となる。

「令和版所得倍増計画」は取り下げるべきではなかった 〜インフレ目標を4%に上げ、規制緩和もする方が株式市場にはプラス

高橋)岸田総理は「令和版所得倍増計画」を取り下げてしまったでしょう。

飯田)そうですね。

高橋)あれは取り下げない方がいいのですよ。所得倍増の方が夢があります。所得倍増計画をやるために、マクロのインフレ目標を2%から4%に上げる、またミクロの政策で規制緩和もする。マクロとミクロでやるという方がいろいろな夢があって、株式市場にとってもプラスなのです。

飯田)各国その辺りで規制緩和等々と、合わせてハイプレッシャー経済という名前がついたり、金融と財政を一緒に出して行くというやり方も合わせて実施して行きますよね。

高橋)だからマクロとミクロを組み合わせてやるというのが普通なのですけれどね。それを両方ともやらないと言ってしまったから、インフレ目標も2%でいいと言ってしまっているし、規制改革のところは所信で述べなかったでしょう。規制改革が入らないのは40年ぶりですけれどね。だから成長の方のネタがないので、株式市場は困ってしまいます。規制緩和をすると、あとは民間の方が勝手に「これが次の産業です」と、うまく言ってくれるのです。その方が面白いですよ。

飯田)もちろんそこには我田引水もあるけれども。

高橋)あるけれど、政府の方は大きな方針を出して、あとは民間が勝手にストーリーをつくってもらった方が面白いのです。

2021年10月14日、会見する岸田総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/100_kishida/actions/202110/14kaiken.html)

人数が多ければ時間が足りず「事務局預かり」で終わる 〜有識者会議

飯田)成長の部分はどうかと言うと、有識者会議に出ている方々は経済同友会の幹事や日本経団連の会長などです。看板は変えたけれど、いままでと同じような人たちで、言っていることも「生産性を上げる」ということばかりですね。

高橋)官邸で選ぶと役人が選んでしまうのですよね。人数がまた多いのでしょう?

飯田)15人ですね。

高橋)それでは会議になりません。

飯田)会議にならない。

高橋)1人あたりの発言時間が少ないではないですか。これは全部、事務局主導ですよ。はっきり言って5人以上の会議は普通の会議ではありませんから。全部事前に用意して、そのまま予定された株主総会のようになってしまうのです。

飯田)その上、会議録や提出資料が既にホームページに出ていますけれど、委員の方々がいろいろ提出されていて。

高橋)それを説明するだけで終わってしまいます。1人あたり3分とか、そんなレベルで終わってしまう。

飯田)全員が説明すると、それで45分経ってしまいます。

高橋)あとは事務局説明で1時間あるでしょう、それで終わりです。事務局は楽なのです。最後は「いろいろな意見がありましたね。事務局預かりで」でおしまいなのです。

飯田)結局はお墨付きのみ?

高橋)役所がつくったものを、あとで連動するだけになってしまうのです。いちばんつまらない会議です。

飯田)経済財政諮問会議などでは、「チャンチャン」で終わるような会議を廃するということが最初にあったような気もするのですが。

高橋)経済財政諮問会議の方が、民間議員が4人なので、やり方によっては面白くできると思います。民間の人を15人も入れたら、1人3分で「おしまいです」という感じになってしまいますね。

昔の審議会方式

飯田)いままで官邸主導や政治主導だと言われ、「1強だ!」という批判もありましたけれど、ずいぶん昔に戻ってしまったような感じにも見えますが。

高橋)委員は5人以上入れたらこうなるのです。すべて事務局主導になってしまって、本当の委員の意見を聞くということにはならない。だから完全に昔の、いわゆる審議会方式です。各団体、各会をみんな入れて、最後は事務局預かり。

真水を少なくして、補正予算で事業費だけを膨らませる

飯田)この先、来年度予算の審議、さらにその前には補正があるかも知れませんが。

高橋)補正がありますね。

飯田)その辺りの規模感も、やはり圧縮の方向に行きますか?

高橋)補正はある程度、選挙で言ってしまっているから圧縮できないため、圧縮するときには真水を少なくして、事業費を膨らませるのでしょう。選挙が終わったあとの補正予算で、事業費だけ多くて真水が少なくなる確率はありますね。

飯田)事業規模というやつですか?

高橋)マスコミは数字だけ言うから大きく見えるのだけれど、実際には予算は小さいです。

飯田)実は民間が支出したり投資するようなものが多くなっていると。

高橋)ズルいのだけれどね。いずれ、政府の方が少ないという形になるかも知れないし、政府の方も前の積み残し予算を流用するようなものが多くなるとか、いろいろな予算テクニックがあるのです。そういうものは、こういう審議会では切り込めないので、「それがよろしい」という言い方になってしまうのです。

飯田)これだけ規模があればよろしいではないかという形になると。

高橋)よくわからなくて、あまり意見を言わないような人を集めているかも知れません。

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