日本も「コスト」でなく「チャンス」と捉えて構造改革を 〜アメリカの「気候変動対策」への取り組み

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月28日放送)にAPI主任研究員の相良祥之が出演。米バイデン政権が掲げる大型経済対策法案について解説した。

3日、米ホワイトハウスで演説するバイデン大統領(ロイター=共同)=2021年8月3日 写真提供:共同通信社

大型経済対策法案

アメリカのバイデン政権が掲げる気候変動対策や子育て支援などを盛り込んだ大型経済対策法案が今週、実現に向け山場を迎えている。バイデン大統領は今週末、イタリア・ローマで行われる20ヵ国・地域(G20)首脳会議や、イギリスで開催される国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を前に、与党・民主党内の合意を取り付けたい考えだが、党内における中道派と左派の意見対立が激しく、調整が続けられている。

飯田)予算の法案が通らないということで与野党対立かと思ったら、与党内なのですね。

相良)バイデン政権は来年(2022年)の中間選挙もそろそろ気になって来ますし、何としても通したい。できればCOP26の前に通したいという考えはあると思います。

飯田)党内保守派のなかには大型法案に反対している人もいるということで、ジョー・マンチンさんの名前も出ています。

アメリカの「気候変動を次の成長につなげて行く」という取り組みは日本にとっても参考になる

相良)今回のポイントとして、「気候変動」がキーワードになっていると思います。気候変動対策をいかに経済社会活動の再開につなげるかというところで、「どこまで大型の対策が出せるのか」という議論が続いています。

飯田)炭鉱を抱える州選出の議員のなかには、再生可能エネルギーへの補助や仕組みについて、あまり行き過ぎるのはどうなのか、と反対する人もいます。民主・共和どちらが、ということでもないようですね。

相良)額が大きいですから、財政赤字の拡大が懸念されています。当初は3兆5000億ドルくらいだったと思うのですが、そこから2兆ドルくらいに削られるのではないかという見方もあります。その辺りをどうするか。ただ、気候変動を次の成長につなげて行くという側面は、日本でも参考にできるところが多いと思います。

グリーンをテコにしていかに構造改革を進めて行くかという発想が日本にも重要

飯田)どうやってそれを産業として成り立たせて行くか、あるいは儲けさせて行くかというところですか?

相良)本来は去年(2020年)の時点で、EUがグリーン・リカバリー(緑の復興)を打ち出していました。「構造改革なくして支援なし」という形で、航空業界なども「気候変動に配慮しないと支援をしない」ということを、EUは去年からやっていました。

飯田)グリーン・リカバリー。

相良)去年の「骨太方針2020」を見ても、日本には「グリーン」という文字がほとんどなかったのですが、今年の「骨太方針2021」では「グリーン」、「デジタル」という言葉が出て来ている。グリーンをテコにして、いかにイノベーションを進めて行くか、構造改革を進めて行くかという発想は、ますます日本でも重要になると思います。

「2050年カーボンニュートラル」を宣言した日本はここを進めて行くしかない 〜「イノベーションのチャンスだ」と捉えることが重要

飯田)水素燃料、EVも含めていろいろと投資するという青写真は日本でも出て来ていますが、どうご覧になりますか?

相良)菅内閣が「2050年カーボンニュートラル」を宣言していますから、やって行くしかありません。欧州も「もっと」というところが出て来ていますので、いかにコストではなく、「チャンスなのだ」と考えるかです。「イノベーションのチャンスだ」と捉えることは重要です。先日、経済産業省が第6次エネルギー基本計画を出しましたけれども、再生可能エネルギーの比率をますます高めて行こうという動きですので、太陽光や地熱、風力などを使って、いかに動かして行くか。いかに構造改革を進めるためのテコにするかが重要だと思います。

電池が経済安全保障の重要物資の1つになる 〜経済安全保障を織り込みながらイノベーションを進めて行く

飯田)EVの普及などに関連して、「それをつくる電気について、どこまでCO2を出さないものにできるのか」という問題提起をする向きもあります。この辺りは全体で考えなければいけない問題ですよね。

相良)EVについては、電池の問題があります。実際に蓄電させる電池のサプライチェーンが重要になって来ています。中国もEVをつくっていますから、今後は電池の供給が難しくなるのではないか、戦略的に重要になるのではないかという、いわゆる経済安全保障の重要物資の1つになりつつあります。日本も新しい資本主義のところで経済安全保障が入っていますけれども、日米ともに経済安全保障を織り込みながら、イノベーションも進めて行く。それをどちらとも進めているのだと思います。

飯田)例えばリチウムをどこから持って来るのかなど、そういう対応になるのですか?

相良)レアアースの話も出て来ますし、半導体の問題も当然出て来る。それをリスクではなく、チャンスだと政府が示しながら、ビジネスと一緒にオールジャパンで打って出て行こうという議論が必要だと思います。

飯田)きっちり予算を付けなければならない、ということも含めてですか?

相良)戦略的に重要な物資には、きちんと投資をするべきです。

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