今回の衆院選はまるで「バーゲンセール選挙」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月29日放送)に元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が出演。10月31日に投開票となる衆議院選挙について解説した。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

衆議院選挙、10月31日に投開票へ

衆議院選挙は10月31日に投開票日を迎える。今回は元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治氏に、この選挙で気になる政策について訊く。

今回の衆院選は「バーゲンセール選挙」 〜「お金を差し上げます」

飯田)期日前投票はかなり伸びているという話も出ています。どこを基準に、何を論点に選んで行こうかというところですが、松井さんはどうご覧になりますか?

松井)私は「バーゲンセール選挙」と言っているのです。

飯田)バーゲンセール選挙。

松井)とにかくどこの党も「お金を配ります」と言っている。ある政党などは大きくポスターに、「〇〇歳までお金を差し上げます」というようなことを書いています。もう少し、日本の国家や社会が置かれた全体像をきちんと問いかけることをして欲しいです。

台湾有事が起きた際、どう日本の平和を守るのか

松井)各党の公開討論会を見ていても、「平和を守ります」と言うのはいいのですが、今朝のニュースでも出ていましたけれど、台湾海峡をめぐってこんなにも緊張が走っているときに、「平和を守ります」と言ってもどうやって守るのか。何かあったときに備えて、台湾はアメリカとの連携関係を密にしています。バイデン政権は民主党ですから、本来、そういうことはあまりしないのですが、中国との緊張関係を強めるというリスクを起こさざるを得ない状況になっている。その状況のなかで、「日本の防衛はいまのままで本当に大丈夫なのか」ということを、各党とも議論しないですよね。

飯田)防衛をどうするのかと。

松井)憲法の議論にしても、立憲民主党は後ろの方に少し書いてあるだけで、ほとんど書いていないのと同じです。「本当に大丈夫なのかな」と思わざるを得ません。

金配り合戦の減税合戦

松井)国民も怒るべきです。「うちはこれだけ配ります」という、お金配り合戦。あるいは減税合戦です。場合によっては「富裕層に対する増税」ということで、ある種のポピュリズム、人々の嫉妬のような感情に訴求する。それはいくら何でもどうなのかなと。

飯田)金配り合戦の減税合戦。

松井)確かに主要先進国も、ここは財政を積極的に出すタイミングだとは思います。ある程度は仕方ない。しかし、アメリカの民主党だって大盤振る舞いをしつつ、「それでいいのか」という議論が起こっているわけです。

飯田)物価が高くなって来る状況ではどうだと。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

ツケを支払わなければならない若者はシラケてしまっている

松井)財政規律至上主義であってもいけないとは思うけれど、将来世代のことを考えたときに、これでは最初の話題で若い人たちがシラケてしまいます。いまがよければいいのかと。若い人がどこかでツケを払わざるを得ないし、年金システムなどに対して若者は不信感を持っているわけです。

飯田)「どうせ払われないのでしょう」と思ってしまったりする。

松井)「いまこうやって金を使って、最後のツケを払うのは我々でしょう」とみんなが思っているわけです。「だからこそ君たちが立ち上がらなければいけない」という話をしているのですが、そういう中長期的な危機感を訴える政党がほぼ皆無です。

飯田)そうですね。

松井)現代貨幣理論(MMT)があって、「刷ればいいでしょう」という方法は1つの理屈だとは思いますし、短期的には通じるかも知れませんが、中長期的な持続性は難しいと思うのです。どんどん国債費が膨らんで行きますから。そうすると、財政制約になりますからね。仮にそれでハイパーインフレのようなことが起こらなくても、予算を組む制約になることは間違いないわけです。

飯田)国債費が膨らんで。

松井)きちんと中長期的な正論を言って、若い人たちに「そうなのか。我々も考えないといけないのだ」と思ってもらわなければならないのです。どこかの政党は「いまだけ金をバラまいてはダメだ」と言いながら、結局、いまだけ金を配る。そして「将来のツケは大企業に払わせればいい」と。しかし、その大企業が日本からいなくなって、雇用が失われるということをトータルパッケージで議論する政党が、自民党を含めて少ないという気がします。

飯田)全体的な議論をする政党が。

松井)衆議院選挙と合わせて行われる最高裁裁判官の国民審査がありますが、NHKがその特集サイトをアップロードしています。例えば従来の最高裁の判事の方々の判決評価というか、どういう判決をしたかについてサイトで見られるのです。

飯田)ありますね。

松井)これまでは、ほとんど誰もが何も印をつけないとか、よくわからないけれど、端だけバツ(×)をつけたりしていた。しかし、このように「きちんと議論をしよう」という気風が出始めているということは、いいことです。

飯田)これまではそうでした。

松井)メディアの方々が論点を逆に提起して、「こういう問題については、どう考えるのか」ということを、もっと各政党に投げかけて欲しいです。リトマス試験紙を提供して、「それぞれの政党が何を考えているのか」を炙り出すようなことをやらないと、みんな都合のいいことだけ言って、都合の悪いことは棚上げにする。あるいは何となく人気のない人たちに、懲罰的に何かを科するということは不健全だと思います。

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