各党は「台湾海峡の危機」をどう考えているのか 〜衆院選で話題にならないのはなぜ

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月29日放送)に元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が出演。台湾・蔡英文総統がアメリカ軍による台湾軍の訓練支援を認めたというニュースについて解説した。

台湾の双十節(建国記念日)祝賀式典で演説する蔡英文総統=2021年10月10日、台北(中央通信社=共同) 写真提供:共同通信社

台湾の蔡英文総統がアメリカ軍による訓練の支援を認める

台湾の蔡英文総統は、アメリカCNNテレビのインタビューのなかで、アメリカ軍が台湾に派遣され、台湾軍の訓練を支援していることを認めた。台湾への軍事的な圧力を強める中国を牽制する狙いがあると見られている。CNNは「1979年の米台断交でアメリカ軍が駐留しなくなったのち、訓練の目的で台湾にアメリカ軍がいることを総統が認めたのは初めてだ」と伝えている。

日本にとっても大きい台湾の蔡英文総統の発言 〜衆院選でなぜ話題にならないのか

飯田)CNNによると、インタビューそのものは10月26日に行われたということですが、これは大きなニュースですね。

松井)大きいと思います。いよいよ「事ここに至ったか」という感じではないでしょうか。衆院選のなかで、こういうことが話題にならないというのが、私は不思議でならないのです。

飯田)公示日に北朝鮮がミサイルを撃ったし、日本の周りを中露の艦隊が1周しています。

松井)そういう状況にあっても平和憲法を守りますと。「日本はとにかく平和主義です」という一言ですべてを片付けてしまう。あるいは「防衛費の膨張はおかしい」と言っている政党がある。はっきり言って、韓国の国防費の方が大きくなるような状況になっているわけです。

台湾海峡での危機が迫るなか日本はどう国の安全を守るのか

松井)台湾有事というのは、尖閣とほとんど一体な話で、日本にとってはまったく人ごとではない。自主防衛は国家の基本なのです。そのなかで、過去の戦争の経験もあるし、日米同盟という道を歩んでいる。しかし、米国は同盟国であり信用すべきだけれど、完全に「おんぶにだっこ」という形では、主権国家としての体を成さないわけです。

飯田)どうあるべきか。

松井)しかし財政も厳しい。国防費、防衛費にそれほどお金をかけられないなかで、どうやって工夫しながら国の安全を守るのか。この状況のなかで選挙における争点として、それぞれの政党がどのように考えて行くのかということを、自民党にも問いかけ、立憲民主党にも問いかけ、日本共産党にも問いかけるような争点をつくって欲しいのです。国家、国民、国土をどう守るかという議論がなさ過ぎます。最後は、国民の生命や将来の経済的な基礎をどう守るかということです。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

将来的に日本の財政をどう運用して行くのか 〜年金改革の議論もない

松井)将来的にこの国の財政をどう運営して行くのか。あるいは何に投資して行くのかという議論をせずに、「〇〇に10万円を配ります」と。若い人が10万円をもらえるのは嬉しいし、ありがたい。でもその10万円は、「将来、自分たちの借金になるのでしょう」とみんな思っている。

飯田)ツケが回って来る。

松井)年金も、システム自体は安定しています。将来、破綻はしないけれども、所得代替率は下がって行くわけですから、「自分たちの生活に値するような年金はもらえない」という状況のなかで、一時は年金改革の議論がされたけれども、いまは誰も議論していません。唯一、自民党の総裁選挙で河野太郎さんが議論をしただけです。本来であれば、昔は野党がチャレンジャーとしてああいうことを言っていましたが、まったく言わなくなってしまった。

飯田)あの当時、7万円の最低保障年金だという話をして、「それは制度的にどうなのか」という議論が巻き起こり、みんな年金に詳しくなったという。それが選挙の効能だったりするわけですよね。

松井)年金だけではなく、セーフティネットをどうつくるかということは、これだけ所得格差が高まっているわけですから、必要だと思います。国のあり方として、低所得の人をどうやって救うのか、救わないのか。あるいは単に救うのか、もしくは再チャレンジするような仕組みで研修と組み合わせてやるのか、などという議論があるけれども、「それをどのように考えるか」ということをもう少し議論して欲しいのです。それなのに議論が行われないというのは何なのか。とても残念ですね。

国会は各党がお互いの考えを堂々と議論する場にするべき

松井)各党の党首が、選挙のときだけではなく、国会で党首討論をしっかり行い、お互いにどう考えているのかということを議論するべきです。森、加計、桜もいいですよ。不正があったとしたら、それは恥ずかしい話です。追及することも必要だけれど、国家運営をどうするのか。どういうやり方で、人々が支え合うような社会をつくって行くのか。「支え合う」という言葉を言えばいいというだけではなく、立憲民主党はどう考えるのか、自民党はどう考えるのかということを、堂々と議論するような国会にしないと、若い人たちは予算委員会など見ませんよ。あんななじり合いのようなものは見ていられないと思います。

飯田)後ろからヤジも飛んで来るし。

松井)朝9時から夕方5時まで、「これをずっと見ろということですか」と学生に言われたら、私は返す言葉がないですよ。1週間に1回でもいいから、30分や1時間の真剣勝負をして、それを国民が注視するような、そういう国会をつくって欲しいですね。

飯田)2000年代辺りは、「この政策はどうなのだ」と民主党側が出して来て議論になり、いいところは丸呑みにしてしまうということもありました。

松井)1990年代の終わりから2000年代ごろにはそれがありましたが、与野党のねじれがそうさせたという部分もあります。しかし、民主党はある意味、正当に下野させられたわけです。「言ったこととやったことが違うではないか」と。そういう意味では、正しく機能したのです。約束違反した者は退陣させるのだと。

野党は新しいメニューをパッケージで

松井)それは繰り返さなければなりません。物足りないのは、いまの自民党にきちんと、もう少し誠実な目標を立てて欲しいということです。もっと言うと、野党はチャレンジャーなのだから、もっと野心的になって欲しい。自民党は店を営業しているわけですから、棚卸しはできないのです。野党は棚卸しをしている期間なのだから、新しいメニューで「我々だったらこれをやりますよ」ということをパッケージで出すべきです。

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