人は何のために生きるのか 〜コロナ禍でわかった「大切なこと」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月29日放送)に元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が出演。11月からイベントの上限1万人が解除されるというニュースについて解説した。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

11月からイベントの上限1万人を解除

新型コロナウイルス対策として、緊急事態宣言などを解除した27都道府県で続けられているイベントの上限1万人について、政府は11月から解除することを決めた。11月からすべての都道府県で収容人数の半分まで入場できるようになるとのことだ。

クライマックスシリーズ、日本シリーズも制限見直し

飯田)このニュースにはいろいろと反応をいただいています。松戸市の“アキヒサ”さんから、「クライマックスシリーズ、及び日本シリーズでの観客数の制限が見直される模様。我が家も地元ロッテを球場で応援したいです」といただきました。チケットも発売になるというタイミングで、「ようやくかな」というところです。

松井)プロ野球もそうですが、寄席やコンサートなどは、人間性の復権のためにも必要なことです。人間に必要な潤いを、安全性を確保して取り戻す。

政治家にとって「制限解除」は勇気のいること

松井)解除するということは、政治家にとって勇気がいることなのです。解除して何かあれば、またいろいろと言われてしまいますから。常に「安全サイド、安全サイド」の方針に向かってしまう。酒類の提供時間もそうですよね。

飯田)長かったですね。

松井)未だに小池都知事は「何人以上はダメ」と、根拠がどこまであるのかわかりませんが、おっしゃっている。バランスがとても難しいのですが、「人間は何のために生きているのか」ということです。もちろんコロナに感染して死んでしまったら元も子もありませんが、人間は何のために生きているかということを考えたときに、慎重でなければいけないけれど、やはり解除するときは解除して欲しい。

飯田)そう思います。

松井)イギリスでは感染しても、人流を制限するのはやめようという判断をしましたが、いろいろな議論があってのことだと思います。

飯田)感染して重症化する人はきちんと救って行くという体制はつくるけれど、という。

松井)全部を抑制してしまったら経済も死んでしまうし、人間性も死んでしまうということではないかと私は思います。

人は何のために生きるのか

飯田)イベントに行って、空間を共有したり、時間を共有する。最後はちょっと1杯やって感想を言い合い、「面白かったな」と帰りたい。その1杯はうまいですよね。

松井)「人は何のために生きるのか」ということではないでしょうかね。

飯田)コロナ禍によって、いままで何気なく享受していたものがなくなり、「あれは大切なものだったのだな」と改めて実感させられました。

松井)そうですよ。

英中部リバプールで、マスクもソーシャルディスタンスもなしで音楽ライブに熱狂する観客。イベント開催の在り方を検証する政府の実験の一環だが、新型コロナウイルスによるストレスも吹き飛びそうだ。=2021年5月2日 EPA=時事 写真提供:時事通信

学生にとっての対面授業の大切さ

松井)学生に対しても、授業で伝えることは、もしかするとオンラインの方が集中して伝えられるかも知れないし、資料共有も同じ画面でできるから便利かも知れない。でも、そのあと学生と喫茶店や居酒屋に行って話すという時間は、とても大切なことですよね。

飯田)大切ですね。

松井)安全にどうやって授業で伝えるべきことを伝えるかというのは悩ましいところで、私たちはこれまで試行錯誤で解除したり、またオンラインに戻したりと、悩みながらやっているし、職場での仕事もそうだと思います。もちろん政治家もそうでしょうが、やはり、何のためにそれをやっているかということを忘れないでいたいと思います。

「公」と「私」以外の第3の場としての「酒場」の必要性

飯田)先日、日経新聞の「春秋」に書かれていましたけれど、結局コロナで「公」と「私」の2つはそのまま、いままで通りやった。けれど、この2つだけだと息が詰まるから、第3の場所として「酒場」があり、イギリスでは「パブ」と呼ぶと。

松井)パブリックですからね。

飯田)そういうところが消えたことによって、息苦しくなったという指摘があり、「そうだな」と思いましたね。ただの酒飲みの言い訳かも知れませんが。

演者と観客の出会いは一期一会

松井)寄席などは、まさしくそうです。一之輔師匠が本題のお話に入る前に、「まくら」として時事問題について軽く触れることがあります。そうすると、客席がそれに反応するわけです。その温度を測りながら次の本題にどうやって入るか、場合によっては何の落語を演じるのか。「何をやるかは、高座に上がる前までは決められない」という師匠も多いのです。

飯田)なるほど。

松井)その日の時事ネタで、客席の空気を読んで「これで行こうか」と。寄席の場合は前の出演者が何を演じたかによって、ネタが続いてはいけないということと、客席の空気で「これで行こう」と決めるわけです。

飯田)客席の空気で。

松井)私たちからすれば、「まくら」を聞いて「こういう話題で私も腹が立っていたけれど、横にいる人たちも腹が立っているのか」とか、「これはすごく痛快で感動したよね。いい話だよね」などと、お互いに感じられる場は大事であり、面白いところではないですかね。ライブでも、ミュージシャンと客席のコミュニケーションを楽しんでおられる方が多いので、復活して欲しいと思います。

飯田)それが一期一会なのですよね。

松井)そうなのですよ。同じコンサートツアーでも、翌日は同じ人ではないわけです。だからパフォーマンスをする人たちも一期一会で、その客席によって空気が違うのです。

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