極超音速兵器が脅威なのは速さよりも「変則軌道」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月8日放送)に日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が出演。中露が開発を進める極超音速兵器について解説した。

28日午前、慈江道竜林郡都陽里で行われた極超音速ミサイル「火星8」型の試射 朝鮮通信=時事 写真提供:時事通信

極超音速兵器の開発競争が世界各国で加熱

米軍が音速の5倍以上の速度で飛行し、迎撃が非常に困難とされる極超音速兵器に関する実験を相次いで実施。中国との競争を意識し、開発を急いでいる。

飯田)中国やロシアが研究をしているという話はありました。アメリカも実証実験を行い、実戦配備に向けた動きが加速しているようですが、今年(2021年)の夏に「中国が極超音速兵器の実験をした」ということをアメリカ側が発表しています。これは相当な脅威ですか?

秋田)最初に「フィナンシャル・タイムズ」というイギリスの新聞が報じました。筆者は私と昔から交流のあるディミトリさんという、東京にもいたことがある記者の方で、ペンタゴンに食い込んでいる人です。彼が放ったスクープで、そのあとにアメリカも発表したのが、この極超音速兵器です。アメリカのペンタゴン、特に米軍は「スプートニク・ショック」という、ロシアが初めてアメリカを出し抜いて人工衛星を打ち上げた事例に等しいショックだと言っていて、懸念を強めているところがあります。

極超音速とあることよりも、「変則軌道」が脅威

飯田)スプートニク・ショックのあとにマーキュリー計画やアポロ計画もあり、宇宙開発競争に拍車がかかって技術革新が進みました。今回もそのような危機感なのでしょうか?

秋田)その可能性はあると思います。ただ、メディア的には「極超音速、マッハを超える音速兵器がスプートニク・ショックだ」となっているところがあるのですが、専門家に取材をすると、ロシアや中国が持っているICBMは既にマッハ25なのです。冷戦中から極超音速の兵器はたくさんありました。ただ今回、脅威なのは、極超音速ということだけではなくて、落ちて行く軌道を変則的に変えられる。さらには低軌道で飛ぶということで、日本やアメリカの持っているミサイル防衛網が無力化されてしまう危険がある。「変則軌道だ」というところに注意する必要があるのです。

これによって米中のパワーバランスが変化することはない

飯田)いきなりパワーバランスが変化するようなことはありますか?

秋田)結論から言えば、ないと思います。中国としては、「パワーバランスが変化する」とアメリカが焦ってくれることを望んでいると思います。そうすると、交渉上は妥協しなければいけないことになる。しかし、既にアメリカは千数百発の核ミサイルを持って、中国やロシアなどいろいろな国に標的を定めているので、中国の新しい兵器が多少増えてもバランスが崩れるわけではありません。アメリカのミサイル防衛網を突破して、アメリカに落ちる核ミサイルを中国が1発や2発開発したとしても、それで劇的に変わるというものではないと思います。

関連記事(外部サイト)