「期待半分、少し不安あり」という人事 〜人権問題担当補佐官に中谷元・元防衛大臣

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月9日放送)にジャーナリストの有本香が出演。新設する人権問題担当の総理補佐官に中谷元・元防衛大臣が起用されるというニュースについて解説した。

政治 参院内閣委員会 自民党・中谷元=2018年7月3日午前、国会・参院第31委員会室 写真提供:産経新聞社

人権問題担当補佐官に中谷元・元防衛大臣を起用

岸田総理大臣は11月8日、総理官邸で自民党の中谷元・元防衛大臣と会談を行い、新設する人権問題担当の総理補佐官に起用する方針を伝えた。このポストは、香港や新疆ウイグル自治区の人権状況に国際社会から懸念が出ている中国への対応を念頭に置いたものである。11月10日の第2次岸田内閣発足に合わせて任命する見通しだ。

飯田)中国のウイグル人権問題等に対する超党派の議員連盟の共同代表を、中谷さんは務めていらっしゃるということです。

有本)ウイグル問題等に関連する議連はいくつかあるのですけれど、中谷さんたちがやっている議連は、政治家を引退した山尾志桜里さんが熱心におやりになっていました。共同代表だったと思います。この問題は私も関心が高いので、中谷元・元防衛大臣には頑張っていただきたいと思いますけれども、この人事は意外でしたね。

飯田)意外だった。

有本)「元閣僚」という重しの点でも、この問題を重視していることを内外に対してアピールする狙いが、岸田総理にしてみればあったのかなとは思いますけれど。

飯田)元閣僚を置くということで。

有本)ただ結局、対中非難決議ができなかったという一連の流れを見ていても、中谷さんたちのやっていた議員連盟は、いずれ日本におけるマグニツキー法、つまり制裁法案を国会に出すことを目指しながらおやりになっていたと思うのです。

「期待半分、少し不安あり」という人事

有本)しかし、日本においてはかなりハードルが高い話です。まずは国会のなかで、ほぼ満場一致で「中国における重篤な人権問題はいけない」という声を上げよう、という話だったのですが、それを国会に出すということに関して、中谷さんが迫力を持って当時の自民党執行部に迫ったという経緯はありません。

飯田)そういう経緯はない。

有本)政治家で、かつ閣僚経験者・重鎮を充てるということは、局面、局面で「迫力を持って政策を押し込むことができるか」ということが問題だと思うのです。人権問題に詳しい人は民間まで含めれば、いくらでもいるわけですから。この人事で、果たして今後、人権問題を上に置く形での政策、施策、あるいは新たな法律をリーダーシップを持ってやっていただけるのでしょうか。期待半分、少し不安もありつつ、という人事ですね。

この人事は冷静に見守って行きたい

飯田)通常国会の最後の最後で、対中非難決議を出せるかどうかというところでした。

有本)6月にね。

飯田)野党もまとまって、公明党もまとまって、あとは自民党内だと。

有本)公明党がまとまっていたかどうかは微妙ですね。ただ立憲民主党も、あるいは共産党も一応まとまっている状況ではあったので、最後の最後は自民党の執行部ですよね。そういうときに中谷さんのような経験のある方が、「いまそんなことを言っている状況ではないだろう」と押し込んだかと言うと、そういう経緯はありません。その点でも、私としては今回の人事を冷静に見て行きたいなと思います。

綿花の収穫=中国=2013年10月26日 Imaginechina/時事通信フォト 写真提供:時事通信

自民党の執行部も変わり、臨時国会冒頭でやるという風向きではない 〜人権問題への取り組みは後ろへ行かざるを得ない

飯田)あのときの決議案はそのまま残っているわけですか?

有本)一応そうでしょうね。

飯田)11月10日から国会が開きます。臨時国会をやって、補正予算を決めないといけないので開かれるわけですよね。

有本)本当は冒頭でやるべきだろうと思いましたけれど、国会の方もメンバーが変わりましたからね。この辺の問題に熱心だった議員のなかには落選した人もいらっしゃるから、果たして臨時国会冒頭でやるというところまで行くのだろうかと。どうもそういう風向きではないですよね。

飯田)自民党も執行部、幹事長含め……。

有本)変わりましたからね。自民党の幹事長が茂木さんでしょう。新しい執行部もこういうことに積極的だということはないでしょうし、国会とは関係ないですけれど、外務大臣も変わりますのでね。

飯田)林芳正さんに。

有本)林さんに関しても、中谷さんの起用と同じように、最初からあまりとやかく言いたくありませんが、対中シフトから親中シフトになるのではないかという懸念は出ています。日中友好議連の会長でもあるし、かなり中国にも行っているようです。来年(2022年)は日中国交正常化50周年でもあります。新型コロナでなくなってしまったかのように見えていましたが、事実上なくなっていない習近平国家主席の国賓としての招聘が、またぞろ頭をもたげるのではないかという懸念を持っている人はたくさんいます。人権問題に対する取り組みという点では、後ろへ行かざるを得ないのかなという見通しです。

アメリカ当局は岸田政権になり、中国に対して宥和的になるのではと見ている

飯田)西側諸国はむしろ中国に厳しい目を向けていて、日本だけが後ろに引くことになると、中国に対してというよりも西側、欧米諸国に対して誤ったメッセージが出て行きますよね。

有本)アメリカ当局が日本をどう見ているかという情報も出始めています。岸田政権に政権交代して、中国に対しては「安倍政権、菅政権の路線よりも、少し宥和的になって行くのではないか」と見られているという実態があります。

飯田)岸田政権になって。

有本)ただ一方では、中国の国内事情も難しくなって来ている。そして台湾海峡も緊迫度が増している。そういうなかで、どう見られようが現実的な対処をやってくれているのであれば、まだいいのです。私が不安なのは、これだけ緊張度合いが高まっていて、何か起きたときに中国国内にいる10万人強、それから台湾にいる邦人の退避ができるのだろうかということです。さらに向こうの国内の人権問題にまで、かなり高い視座で、政府側がよく使う単語でもある「毅然とした」対応ができるのかどうかという不安がありますね。

関連記事(外部サイト)