「3つの分野」に分けて対中政策を考えるアメリカ 〜米中首脳会談がオンラインで開催へ

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月15日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。オンラインでの米中首脳会談の開催が決まったというニュースについて解説した。

バイデン米大統領(ゲッティ=共同)、中国の習近平国家主席 写真提供:共同通信社

バイデン次期米大統領(ゲッティ=共同)、中国の習近平国家主席 写真提供:共同通信社

米中首脳会談、オンラインで開催へ

アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席が11月15日、オンラインによる首脳会談を開催することが決まった。アメリカのホワイトハウスは、「アメリカと中国との競争を責任を持って管理して行く方法や、利益が重なる分野でどう協力して行くかについて議論することになる」と声明を発表している。

飯田)アメリカの東部時間で11月15日(日本時間16日)になるということです。

3つの分野に分けて考えるアメリカ 〜1つは「対決する分野」

須田)これによってクリアになって来たのは、米中関係は対決一辺倒ではなく、「3つのフェーズに分けて考える」ということなのでしょう。バイデン政権は明確にその方向性を示しています。1つは完全に対決して行く分野です。

飯田)対決する分野。

須田)安全保障問題、軍事問題、国家主権に関わる問題については対決して行くのだと思います。

「協調する分野」と「交渉して進める分野」 〜気候変動問題と貿易問題

須田)もう1つは協調する分野。筆頭に上がるのは気候変動問題です。中国のCO2排出量削減を引き出さないと気候変動問題は前へ進みませんので、これについては協調してやって行く。もう1つはどちらに転ぶかわからない、交渉して方向性を決めて行く必要があるのが、貿易問題です。

飯田)貿易問題。

須田)貿易赤字の問題については、交渉して行きましょうと。米中関係はすべて対決姿勢を露わにしているというわけではなく、このようにグラデーションのなかで進んで行くのです。それを受けて日本はどう動けばいいのか。そこを国策、戦略として考えて行くべきだと思います。

サイバー分野では相容れない米中 〜日本はどうするのか

飯田)日本も対決一辺倒ではいけないし、分野ごとにバランスの態度が変わるということですか?

須田)そうですね。特に日本の方が地理的にも近いですし、現地に進出している企業が多いだけに、アメリカ以上にその辺りのバランス感覚が重要になると思います。

飯田)「チャイナ・プラスワン」などと言われて、東南アジアにも工場をつくりました。いまは中国内需向けのものは中国でつくるけれど、それ以外は他のところでつくる企業が増えて来たようです。

須田)かつては経済と言うと中国一辺倒だった。もうそれが通用しなくなって来ています。特にサイバー分野では米中のデカップリングが進んでいますが、中国の方も事情がありますから、米中ともに相容れないのです。5G、6Gの分野では明らかにデカップリングが進んでいます。そこで日本の立ち位置をどうするのかという部分を合わせて考える。

飯田)日本はどうするのか。

須田)熊本にTSMCの工場をつくるところを見ると、日本もそういう方向に進んでいるのが伺えます。日本企業がそれについて行けるのかどうかというところを、合わせて国が考えなければいけないと思います。

台湾の双十節(建国記念日)祝賀式典で演説する蔡英文総統=2021年10月10日、台北(中央通信社=共同) 写真提供:共同通信社

人権問題と台湾問題

須田)もう1つ重要なポイントは、人権問題と台湾問題です。

飯田)人権問題と台湾問題。

須田)ここにはチベット・ウイグルの問題も入って来る。台湾の問題も、中国にとっては核心的利益なので、そこに触れられると、グラデーションが一気に決裂する方向になって行くのかなと。ただ、そこには踏み込まないといけません。台湾問題を中国に好き勝手やらせてしまうと、日本の安全保障にも大きな影を落とすことになります。

飯田)そうですね。

須田)人権問題について、欧米は絶対に譲れないところでしょうから、そこは厳しく中国と対峙して行く。日本もその問題とどう向き合って行くのかを考えなければなりません。対決する分野、協調する分野、交渉する分野と分けたはいいけれど、核心的利益に踏み込んだ瞬間、すべてご破算になってしまうリスクも合わせて考えなければならないのです。

飯田)一見関係なさそうな繊維に関しても、人権問題が入って来ると、アメリカに荷物を卸せないという問題が大手アパレルで起こっていますからね。

須田)そういうところも含めて日本政府だけではなく、日本企業も見て行かないとならない。これまでとは状況が変わっていますからね。

強気一辺倒ではいられない中国の事情 〜軍事力の差と後退して来た経済

飯田)オンラインで会談を行って、その後の声明に何が出るかということがありますけれど、表に出て来ないところが重要になりますか?

須田)ただ、一方で中国も強気一辺倒ではいられないところもあります。軍事面で中国は、最先端の高速ミサイルなどの開発は進んでいますが、いざ衝突になってしまうと、大きな劣勢にあることは間違いありません。中国はそこがいちばん怖いのです。

飯田)一部報道によると、台湾に関する強硬論が台頭するなか、中国国内では「そんなことをやってミサイルを三峡ダムに入れられたら、下流の上海が全滅するぞ。そんなことをやっていいのか」という意見が出たという話もあります。

須田)加えて中国経済そのものも、今年(2021年)8月をピークに後退局面に入っていることは間違いありません。これまでのような右肩上がりの成長は望めないなかで、外国に対して譲歩して行かないと、中国経済そのものが持たないという状況になって来ています。

飯田)購買担当者景気指数を見ると、企業間の取引や物価も上がって来ているという話もあります。

須田)改ざんできないような指数は明らかに悪くなっているのです。経済が絶好調であれば、中国共産党は恒大集団の問題が起こったときに、放置したでしょう。

飯田)そうですね。

須田)それを何とか支えようとしているのは、その背景に中国の、特に個人消費を中心とした経済が後退局面に入って来た焦りがあるのだろうと思います。

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