バイデン政権はどのように中国を突破しようとしているのか  〜米中首脳会談

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月17日放送)に産経新聞編集局副編集長兼外信部編集委員、黒瀬悦成氏が出演。オンラインで行われた米中首脳会談について解説した。

オンライン形式の会談に臨むジョー・バイデン米大統領(左)と中国の習近平国家主席[中国国営中央テレビ電子版より]=2021年11月16日 写真提供:時事通信

衝突回避で一致 〜米中オンライン首脳会談

アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席のオンラインによる初めての首脳会談は11月16日、3時間40分にわたって行われた。両国は偶発的な軍事衝突など不測の事態が起きないよう、対話を継続して行くことで一致している。

飯田)11月17日朝の一般紙は、3紙で1面トップになっています。ここでは産経新聞編集局副編集長兼外信部編集委員の黒瀬悦成さんに、今後の米中関係なども含めてお聞きします。黒瀬さん、よろしくお願いします。

「米中対立をこれ以上エスカレートさせない」ということが今回の最大のテーマ

黒瀬)おはようございます。

飯田)今回の米中首脳会談について、率直にどうご覧になりましたか?

黒瀬)台湾情勢が緊迫化するなかで、両首脳がオンラインとは言え、顔を合わせて話し合ったところが最大の成果だったのではないかと思います。

飯田)バイデンさんが副大統領時代に習近平さんとは面識があるということで、最初は和やかに始まったようですね。

黒瀬)そうですね。以前、ブリンケン国務長官とサリバン大統領補佐官が、中国の王毅(ワンイー)国務委員兼外相たちとアラスカで会ったときは、最初から中国には強硬な姿勢でした。しかし今回は、「大人の関係ができているのだ」ということをお互いアピールしたかったのだと思います。

飯田)お互い、「これ以上エスカレートさせるのはまずい」という意識が根底にあるわけですか?

黒瀬)それが今回の会談における最大のテーマだったと思います。

同盟国を巻き込み広い形で中国に圧力を掛けるバイデン政権

飯田)スタジオには佐々木俊尚さんもいらっしゃいます。

ジャーナリスト・佐々木俊尚)バイデン政権になり、トランプ時代よりも対中姿勢が和らぐのではないかと思われていましたが、意外と強硬姿勢ですよね。その対応はいまも変わらないのですか?

黒瀬)変わらないと思います。むしろトランプ時代よりも強硬になっている部分があるのではないでしょうか。特に台湾に対する姿勢は、具体的に政策を打ち出しているところもあると思いますし、トランプ政権ではアメリカが中国と1対1で対決しようとしたのに比べて、バイデンさんは同盟国を巻き込み、広い形で中国に対して圧力を掛けるというアプローチをしています。そういう意味でも、効果的なのかなと思います。

かつてのソ連と比べても強い中国経済 〜バイデン政権はどのように突破しようとしているのか

佐々木)かつての冷戦時代、ソ連は結果的に経済がうまく行かなくて、勝手に崩壊してくれたようなところがあったと思います。しかし、中国は国内市場も圧倒的に大きいし、経済も強い。いずれその経済も終わると言われながら、ずっと高止まりの成長のまま続いています。

黒瀬)そうですね。

佐々木)かつてのソ連に対する向き合い方では通用しない、新しい超大国になって来ているわけです。単に対決するだけでは、もはや対応しきれなくなっていると思うのですが、バイデン政権はどのように突破しようとしているのでしょうか?

黒瀬)そこはいちばん難しいところだと思うのです。日本もアメリカもそうですが、中国経済と密接に関わって来ています。トランプ時代は、中国経済全体を世界経済から切り離すような取り組みをして来たのですが、やはり限界がある。

飯田)限界が。

黒瀬)経済界としては、「政治的にはわかるけれども、経済原理としてはついて行けない」というところがあります。そのなかで、バイデンさんがどう動くのかについては難しい話だと思います。私としても、どうするのか注目しているところです。

佐々木)「共存して行くしかない」という方向性を考えている政権担当者も、バイデン政権にはいるのですか?

黒瀬)人権問題を含めて、「中国の権威主義体制に対立して行かなければいけない」ということは、トランプ政権のころから変わっていないと思います。そういう意味では、いまの中国のあり方をそのまま受け入れて共存して行く方向性は、選択肢として考えていないと見ています。

1日、中国・北京の天安門広場で開かれた中国共産党創立100年を記念する式典で演説し、拳を突き上げる習近平党総書記(国家主席)[中国政府のニュースサイト「中国網」の中継動画より]=2021年7月1日 写真提供:時事通信

国内の引き締めのためにもアメリカへの対抗姿勢を強く出す中国

佐々木)アメリカ国内で、中国に対する世論はどのような感じなのでしょうか?

黒瀬)非常に厳しくなっています。いろいろな世論調査にも表れていますが、いまや7割以上のアメリカ国民が中国に対して否定的な見方をしている状況です。

飯田)一方で、中国国内でも対米世論が強硬になっているという話もあります。

黒瀬)そうですね。中国の方も、習近平体制の1つの形として、「大国となった中国が対抗すべき相手はアメリカだ」という対策を打ち出すことによって、国内の体制を引き締めるという意図があるのだと思います。

経済的にも軍事的にもアメリカと肩を並べつつある中国 〜このまま平行線が続く

飯田)いままでであれば、アメリカのターゲットにならないように動いていたのが、変わって来た。ソ連の冷戦での失敗をくり返さないようにしていたのに、ここへ来て、それが変わって来たのではないかという指摘もありますが。

黒瀬)強国路線という形で自信をつけて来ているのは間違いないと思います。中国がアメリカと完全に肩を並べる超大国になるのはまだ先かも知れませんが、経済的には2030年ごろに抜くだろうという予測があります。

飯田)そうですね。

黒瀬)同時に軍事的にも、いまや2030年までに1000発の核弾頭を持つと言われています。アメリカは3750発ですが、それを減らそうとしています。そうなると、軍事的な分野でも中国はアメリカに追いつくことができるのだという確信を強めているのではないでしょうか。

飯田)平行線が続くような状況になりますか?

黒瀬)その可能性はあります。

北京五輪は「外交的ボイコットすべき」という声が高まるアメリカ

佐々木)反中世論がアメリカで高まっていて、北京オリンピックに対しても、ウイグル・チベット問題でボイコットすべきだと言っている人も多いと思います。その辺りはどう予測されていますか?

黒瀬)日本では鎮静化しているようですが、アメリカの方は民主党も共和党も、北京五輪に関しては外交的ボイコットをすべきだと、政府関係者を送るべきではないという声が強く、法案も出ています。これからオリンピックの時期が近付くにつれて、そういう声が盛り上がって来ることは必至だと思います。

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