派遣という形式ではない「継続的な雇用」が必要 〜非正規社員10万人の転職支援

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月17日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。非正規労働者ら10万人を対象に、求人の多い業種への転職を支援するという政府が創設する新制度について解説した。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

非正規社員10万人の転職支援

政府は新型コロナウイルスの影響を受ける非正規労働者ら10万人を対象に、求人の多い業種への転職を支援する新制度の創設を、11月19日に決める経済対策に盛り込む。国が費用を負担して派遣会社が研修を実施し、派遣先企業で試験的に働いてもらった上で就職を促す仕組みで、2021年度補正予算案に500億円以上を計上する予定だ。

飯田)日経新聞によると、「コロナで打撃を受ける宿泊・飲食業界などで働くパートや派遣労働者らを、コールセンターなどに移りやすくする」ということのようです。

人材を上手く流動化させる必要がある 〜飲食や観光業界のITリテラシーでIT系のコールセンターで働くのはハードルが高い

佐々木)こういう方向の政策自体は正しいと思います。ただ、現実的には、飲食や観光業界のITリテラシーで、IT系のコールセンターで仕事をするのはかなりハードルが高い感じがします。でも、人材を流動化することは重要で、コロナ禍に限らず、「AI時代に残る仕事、なくなる仕事」というような記事や本がよく出ているではないですか。

飯田)ありますね。

佐々木)産業構造が2020年代から2030年代にかけて、大きく変わるだろうと言われています。そうすると、当然なくなる仕事が出て来るのは間違いないし、新しい仕事も出て来るでしょう。そこをどのように流動化させるのか。仕事がなくなって困る人が大量に現れ、新しくできた仕事には人が足りないという現象が起きます。過去何度もそういうことは起きているのだけれど、そこを滑らかにやらないと、ハードランディングになってしまう。ですので、うまく人材を流動化させる必要があるのは間違いありません。

非正規で働く就職氷河期世代が50歳に 〜転職支援だけでは成り立たない

飯田)私の年齢だと、これからのキャッチアップは難しいという。

佐々木)それもあります。20代ならば、いま飲食で働いていてもコールセンターに転職することは可能かも知れませんが、いちばん問題になっているのが就職氷河期世代です。就職氷河期の初期にあたる人は1971〜1972年生まれくらいです。著名人で言うと堀江貴文さんが1972年生まれです。

飯田)48〜49歳くらいですね。

佐々木)そろそろ50歳になる。中心世代がだいたい1975年くらいですから、46〜47歳くらいになって来ていて、みんな中高年です。

飯田)そうですね。

佐々木)いままで正社員としての蓄積がない状態で、正規雇用に転じて行くことが難しくなって来るのです。この問題をどうするのかが、社会の大きな課題になっています。彼らが20代、30代のうちに何とかすべきだったのだけれど、何もしないうちに手遅れの状況が進んで来てしまった。だって、みんなが50代になってしまったら、いまさら「正規雇用に」と言ってもどうしようもないではないですか。

飯田)私も1981年生まれで就職氷河期の最後の世代だったのですが、20代のころは「スキルがないのも自己責任だ」という話が続いて、捨て置かれたような世代でもあるわけです。

佐々木)彼らが今後10年、15年すると高齢者になって来るのです。いったいどうするのだろうと思います。だから、転職支援というのは、必ず就職氷河期の問題も出て来るのだけれど、転職支援だけではもはや成り立たなくなって来るのだと思います。

派遣という形式ではない「継続的な雇用」が必要 〜派遣先で正社員に転じるのは難しい

飯田)今回の「国が費用を負担して派遣会社が研修を実施し、インターン的に働いてもらった上で就職につなげて行く」というスキームは、コロナ前に就職氷河期対策で打ち出されたパッケージそのものですよね。

佐々木)派遣会社から企業に派遣するということは、結局、非正規なわけではないですか。それで正社員に転じられるかどうかは難しい気がします。もう少し違うスキームで、継続的に仕事ができるような仕組みを考えた方がいいのではないかと思います。例えば公的セクターで働いてもらうとか。

飯田)そうなのですよね。結局は派遣先企業が出て、「最後は民間任せではないか」という話になってしまうのです。

佐々木)パソナが儲かるだけのような話が出て来て、また「竹中さんが悪いのではないか」という人も出て来る。パソナが悪いかどうかはわかりませんが、派遣という形式とは別の継続的な雇用ができないのだろうかと思います。

関連記事(外部サイト)