面子さえ守られれば妥協しても構わない中国  〜人権外交の「仕掛け」として突くべきポイント

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月3日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。人権外交について解説した。

2021年11月22日、中国・ASEAN対話関係樹立30周年記念サミットに出席した習近平氏 新華社/共同通信イメージズ 写真提供:共同通信社

人権外交

外務省は、新疆ウイグル自治区や香港などでの国際的な人権問題に積極的に対応するため、専任の担当官を新たに設ける方針を固めた。アメリカのバイデン大統領も12月9日から「民主主義サミット」を初開催するなど、人権問題に力を入れている。

飯田)宮家邦彦さんは隔週の木曜日、産経新聞のオピニオン欄に「宮家邦彦のWorld Watch」というコラムをお書きになっています。そのなかで人権外交を考える演習をされています。

政策シミュレーション

宮家)「政策シミュレーション」というものですが、もう36回やっています。今回は慶応義塾大学の神保謙教授が仕切ってやりました。架空の国際情勢を設定して、アメリカチーム、日本チーム、中国チーム、オーストラリアチーム、ASEANでウイグルの問題を考えるという試みをしました。

飯田)架空で。

宮家)架空です。「どういう政策があり得るか」を研究することに意味があるのですが、シミュレーションの結果がどうあれ、実際にそういうことが起こるというわけではありません。しかし、たまたま今回の結果は、ウイグルをめぐってアメリカの態度が硬化し、アメリカが国内法をつくって関係国を巻き込み、「制裁だ」という方向になって来た。

米中の板挟みになり厳しくなる日本

宮家)それに中国が強く反発して巻き返しを図ると。そのなかで日本は米中の板挟みになってしまう。あくまでも中国チームは徹底的に日米間に楔を打とうとする。日本のビジネス、経済界に圧力を掛けるわけです。日本は苦しくなって、「人権や自由民主、法の支配が大事だ」と言っていても、なかなか思うようにはいかなくなってしまう傾向がある。

人権外交は「仕掛け」 〜日本なりのやり方で人権外交をするべき

宮家)人権外交が難しいのはそこなのです。それからもう1つ、人権外交で言えることは、それに1つの確固とした基準があって、「それに合わないものは全部アウトだ」というわけではなく、相手を見て使い分けていることです。ですから人権外交自体が目的ではなくて、人権外交は外交の目的を達成するための1つの手段である。ある意味では「仕掛け」なのです。

飯田)仕掛け。

宮家)そこはうまく使い分けなければならない。どの国も人権問題を抱えていないわけではありません。アメリカにだってもちろん問題はあるのです。その使い分けが難しいので、日本がこれから本格的に人権外交をやって行くのはいいのですが、いろいろと積み重ねて、自分たちなりのやり方をつくらなければなりません。あとで整合性を問われることにもなりかねませんから。担当官を付けて、総理補佐官もいるわけですから、ようやく日本も人権外交について、国際レベルのことをやるようになったなと嬉しく思います。

人権も含めて自由・民主・法の支配・人権・人道の普遍的な価値を掲げる

飯田)こういうものを錦の御旗のように立てて行くということは、効果的でもあるけれど、諸刃の剣になる可能性もありますか?

宮家)ときどきあります。しかし、よく考えてみれば、人権も含めて自由・民主・法の支配・人権・人道、これらの普遍的な価値を掲げた方が国際社会の主流でなくてはならないし、実際にそうなのです。その意味では、日本は国際社会で一丁目一番地に常にいないといけませんから、この問題を避けては通れないだろうなと思います。

綿花の収穫=中国=2013年10月26日 Imaginechina/時事通信フォト 写真提供:時事通信

人権問題について、日本ですら黙っていることはできない時代 〜中国はそこを理解するべき

飯田)さまざまな国を巻き込みながら、日本としての国益を追求して行く。中国とも付き合って行くという方向性において、人権は1つのツールとして有効であるということですね。

宮家)そういうことだと思います。その部分は中国にとって反論のしようがないですから。

飯田)そこの部分は。

宮家)いままで日本はどちらかと言うと、黙っていたのです。でも、そういう時代ではないだろうと思いますし、日本国内の判断も変わって来たことは事実です。そのことを中国はよく理解しなくてはいけません。

飯田)そうですね。

宮家)香港、ウイグル、チベットなどの問題になれば、日本だって黙っているわけにはいかないですよ。その部分に国際社会がどれだけ厳しくなるか。日本ですらこういうことを言わざるを得なくなって来たことの重大さを、中国には理解してもらわないといけません。

飯田)ある意味、日本をそこまで追い込んで来たのだと。

宮家)日本が懸念を持っているということだと思います。

面子さえ守られるのであれば、妥協しても構わない中国

飯田)中国は各国の目を気にするものですか?

宮家)外には見せませんが、すごく気にしていると思います。外には見せなくても、彼らの面子の基準がある。それを潰されたときのことを考えると、面子さえ守られるのであれば、実質的な部分で、ある程度妥協しても構わないというのが、私の印象です。

飯田)面子さえ守られるのであれば。

宮家)そこをうまく突けば、中国の人権政策が実質的に変わる可能性もゼロではないと思います。中国と付き合って行くなかで、使えるカードが1枚増えたという意味では、いいことではないかと思います。

彭帥さんの問題にアタフタする中国 〜政策を変えればいい

飯田)コラムでも最後に指摘されていますが、プロテニス選手の話も、昔であれば、そのまま葬られていただろうと。

宮家)中国当局はSNSのような場所で公開するとは思わなかったでしょうね。相当アタフタしています。中国側の情報戦という意味では、彼らは攻めるときは強いのだけれど、守りは下手ですよ。

飯田)なるほど。

宮家)今回は中国側は大失敗を続けています。でも本来は、そういうことではなくて、政策を変えればいいのです。それだけです。

飯田)すべてオープンにして見せてくれれば。

宮家)それがいちばん効果的な情報戦なのだけれど、それをやらないから、不手際が目立つのではないかと思います。

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