東日本大震災から10年 福島第一原子力発電所・緊急取材レポート

東日本大震災の発生から10年。福島第一原子力発電所の“現在”を、ニッポン放送・遠藤竜也記者が取材レポートする。

記者団  (代表撮影)

記者団  (代表撮影)

2011年3月11日午後2時46分、東日本大震災が発生して今年(2021年)で10年……。史上最大級の被害となった福島第一原子力発電所も、同じく10年の月日が流れました。

建屋が破壊され放射性物質が漏れた10年前、当時は民主党の菅直人内閣でしたが、連日朝から夕方まで断続的に枝野官房長官(当時)による臨時の記者会見が行われました。

原発の状況については、情報も錯綜し、当時の菅直人総理自らが現地に向かい、自衛隊のヘリを使って福島第一原発の上空から放水するなど対策を試みましたが、効果は殆どみられず、放射性物質が大気中に飛散しました。

原発事故の発生からおよそ1ヵ月が経過した4月12日には、原子力安全・保安院は今回の原発事故のレベルを、1986年に発生したチェルノブイリ原発事故と同じ最悪の「レベル7」と判断しました。その後、廃炉に向けた作業は10年経った現在も続いていて、順調に進めば2041年〜2051年には、その作業はすべて終了する予定です。

しかし、原発の近くにある貯蔵タンクに保管されている汚染水から汚染物質の殆どを取り去ったALPS処理水については、さらに適正な処理をした上で、2年後をめどに海に流す方針を政府は決めたものの、海洋汚染につながるのではないかという反対意見もあり、なかなか進展しない状況が続いています。

1号機  (代表撮影)

1号機  (代表撮影)

そんななか、「福島第一原子力発電所はいまどうなっているのか?」……その内部を自分の目で確かめたいという思いで、日本記者クラブ主催の取材団に申し込み、選考の結果10人の1人に選ばれまして、先月(11月)28日に取材に行ってまいりました。

福島第一原発の入り口では、新型コロナウイルスの感染対策として、体温チェック、さらに手指の消毒といった作業をした上での入構となりました。東京電力によりますと、福島第一原発でも感染者は出たそうで、拡大を防ぐためにPCR検査、最近は抗原検査も実施していて、とにかく廃炉への作業を遅れさせることなく対応をしていました。

また現場に移動する際には視察バス、その前にはマスク、ヘルメット、ベスト、靴下、ゴム製の靴、さらに放射線をはかる線量計という装備で現場に入りました。

まず建屋が吹き飛んで、無惨な骨組みとがれきの姿をさらした1号機、そのすぐ隣にある2号機、3号機はバスから降りて、ほぼ100メートルの高台から取材しました。1号機はほぼ被災当時のまま、骨組みが動物の骨組みの模型のようにあらわになっており、鉄骨が曲がり、さらにがれきがいたるところに積み重なっていました。

2号機  (代表撮影)

2号機  (代表撮影)

ただ、先日入ったニュースでは、来年(2022年)1月にもロボットによる燃料デブリ(溶けた核燃料が冷えて固まったもの)の取り出し作業を始める予定です。さらに3号機、4号機は核燃料の取り出しに成功しています。

高台から取材したときの様子、東京電力ホールディングス広報室兼福島第一原子力発電所廃炉推進カンパニー廃炉コミュニケーションセンター・リスクコミュニケーターの高原憲一さんが説明してくれました。

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(高原憲一さん 1号機を前に)

1号機は東日本大震災が発生して最初に爆発したプラントなのですが、がれきがたまっていて、その下に燃料プールがあります。がれきを取り除かないと、廃炉への前提となる燃料棒は取り出せないわけです。

これから取り出す作業を始めるのですが、がれきが下に落ちないために、燃料プールの上にエアクッションのようなものを浮かべてあります。それで万が一がれきが崩れても当たらない対策をしているところです。

原発というと、シーベルトやベクレルなどさまざまな数字があり、わかりにくいのですが、前提として覚えておきたい数字は、「1ミリシーベルト=1000マイクロシーベルト」ということです。

1号機から100メートルほどの場所では70マイクロシーベルト程度、1号機のすぐそばの場所では370マイクロシーベルトの表示がありましたから、10年が経過してもまだまだ高い数字ではあるなと感じます。

ちなみに福島第一原発の作業のルールとして、1日に浴びる放射線の許容量は「0.1ミリシーベルト=100マイクロシーベルト」と決められています。そのため0.02ミリシーベルトごとに線量計の警告音が鳴り、0.1ミリシーベルトまで合計5回鳴ることになっています。

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1号機で廃炉へ取り組む作業員    (代表撮影)

1号機で廃炉へ取り組む作業員  (代表撮影)

ちなみにこの0.02ミリシーベルトについて、X線で1回に浴びる放射線の量が0.01ミリシーベルトであり、私がおよそ2時間の取材が終わって確認した線量計では0.02ミリシーベルトでした。

一方、地元福島だけでなく、日本全体が注視している処理水の海への排出の問題です。これまでに放射性物質などを取り除くため、多核種除去設備(ALPS)を使い、トリチウム以外を取り除くことに成功しました。政府はトリチウムを国際的に放出してよい基準の60000ベクレルの40分の1(1500ベクレル)まで薄め、海洋への排出を2年後をめどに行うと、今年4月に当時の菅義偉総理大臣が記者会見で表明しました。

ただ、これについては未だに福島県の漁師の方々などから懸念する声が上がっています。この処理水の海洋排出について、東京電力は事前に魚への影響があるのかどうかに関し、東京電力の高原憲一さん曰く、こんな調査を検討しています。

トリチウム水  (代表撮影)

トリチウム水  (代表撮影)

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(高原憲一さん ALPS処理水を見せながら)

ALPS処理水の排水前の段階で、その水を使って魚の飼育を考えています。普通の海水と比較して、両方で飼育してみて差が出るのかどうか? 専門機関と協力してやってみたい。かつ実際に排水をスタートしたら、そこの水を使って飼育してみて、環境への影響などを確認して行きたいと思っています。

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高原憲一さんは「一方的に、全面的に進める気はないんですよ」と話してくださいました。現実問題として、再来年の春にはこれまで用意していたタンクがいっぱいになる。約137万トンの処理水が眠っている状況を境に、しっかりと次の手立てを考えなければいけないという現実へ、どう取り組むべきか? 苦悩の表情が伺えました。

そして、新型コロナウイルスの影響で福島第一原子力発電所への視察がストップしていましたが、10月から再開。希望が殺到していて、1日に何回かに分けて協力をしているものの、1日に100人程度が精いっぱいという状況も知ることができました。東京電力の高原さんは、とにかく現場を観て、それぞれの考えをさまざまな立場から伝えて欲しいという希望を持っています。

ALPS処理水保管タンク  (代表撮影)

ALPS処理水保管タンク  (代表撮影)

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(高原憲一さん 日本記者クラブ主催の視察記者団を前に)

まずは福島第一原子力発電所への興味を持ってもらい、我々の説明でわかってもらえればありがたいと考えています。しかもメディアの方はメディアの方なりに伝えて欲しいし、一般の方々にもわからないことを理解してもらうことが大事です。どう受け止められるかはわからないし、やはり現在の実態をみてもらうことが、私たちの心得だと感じています。

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やはり10年は節目だと感じている方々が多いように思います。廃炉までの30年〜40年……それまでにどういった動きがあるのか? そのときの政権はどういう判断をするのか? 今後も注視して行きたいと思います。

ちなみにいま、大きなニュースになっている軽石の問題ですが、福島第一原発にも流れ着くと予想していて、「オイルフェンス」と、海面から5メートルまでブロックできる「シルトフェンス」の強化で対応するということです。

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