世界的に高まる「スタグフレーションリスク」 〜その背景にあるもの

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月13日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。11月の企業物価指数が前年同月比で9.0%上昇したというニュースについて解説した。

米連邦準備制度理事会(FRB)本部(アメリカ・ワシントン)=2021年1月27日 EPA=時事 写真提供:時事通信

11月の企業物価指数 〜前年同月比9.0%の上昇

企業間でのものの取引の価格を示す企業物価指数の11月の速報値が12月10日、日銀から発表され、前年同月比で9.0%上昇した。比較できる1981年1月以降、最高の伸び率で、原油価格の上昇を背景に、ガソリンの他、電気や都市ガス料金などの値上がりが主な要因となっている。

飯田)企業の物価は高止まりというか、上がって来ているという話ですが。

須田)直接的に私たち一般消費者にはあまり影響がないのですが、企業間の取引の価格が上がると、いずれ消費者物価指数にも影響を及ぼし、私たちが買い物をするときの価格に影響が出るのは、当然のことです。ですから、消費者物価指数の先行指標的な見方をすると、いよいよインフレの足音が高くなって来たのかなと思います。

世界的に「スタグフレーションリスク」が高まっている

須田)もう1つ、注目しなければならないのは、景気が十二分に回復していないなかでの物価上昇となると、最悪の状況と言われている「スタグフレーション」のリスクが高まるということです。世界的にスタグフレーションリスクが高まって来ているということが、いちばんの心配の種ではないかと思います。

飯田)スタグフレーションまで行かずとも「スローフレーション」、低成長、あるいはほとんど成長しないなかでインフレが上がってしまうところも問題だという話になっています。外の原油価格などの影響ということになると、なかなか手を打つのが難しいですか?

須田)いずれにしても需給のミスマッチであることは間違いないのです。大きく分けて2つありまして、1つはいま飯田さんが言われた原油。これについては本質的に、アメリカの原油生産設備がハリケーンによって壊滅的な影響を受け、生産ができない。アメリカは意外に知られていないのですが、いまやロシア、中東を抜いて世界最大の原油産出国になっているのです。

飯田)アメリカは産油国なのですね。

須田)産油国なのです。その生産に大きなマイナスの影響を受けたものですから、需給のミスマッチが生まれて来た。しかし、生産設備をすぐに再開、復旧することはできませんから、その間をどうするか。

ハリケーンの影響で原油生産ができないアメリカ

須田)とは言っても、産油国の中東にすれば、増産体制に応じても「使わなくなったから要りません」と言われたときに、石油、原油というのは「では産出をやめようか」とはいかないのです。いったん産出してしまったら、同量がずっと出て来てしまうという状況がありますから、産油国は簡単に増産には応じないという背景がある。一定程度の期間が過ぎれば、需給のミスマッチは収束に向かうのだけれど、その間どうするのかという問題が1つ大きなポイントとなります。

OPECのロゴと石油ポンプの模型=2020年4月(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

一過性に終わる可能性のあるコロナ収束後の「リベンジ消費」 〜インフレ基調に入るのか

須田)それ以外の材料について言うと、コロナも収束に向かって、生産活動が再開されたというところです。加えて、復讐消費ではないけれども。

飯田)「リベンジ消費」などと言いますね。

須田)場合によっては、消費が一過性のものに収まってしまうという可能性もある。

飯田)いままでコロナで使えずに溜め込んでいたものが出て来る。しかし、弾がなくなったらそれでおしまいですものね。

須田)正常な状況に戻れば、またそれも落ちて来るという可能性がありますから、企業にとっても、簡単に生産設備の増強に動けるものではない。一定の期間で収まるのか、それともこれが引き金を引く形でインフレ基調に入って行くのかというところが、1つポイントなのかなと思います。

深刻なアメリカのインフレリスク 〜スタグフレーションリスクが高まる

飯田)日本の場合はデフレの圧力もまだ強いところがありますが、アメリカでは、インフレ率がどうなるかについて注目されています。アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)も、量的緩和の終了を前倒しするのではないかという観測が出て来ていますね。

須田)再任されたFRBのパウエル議長は、その辺りについてはハト派だったはずなのです。ところがこの問題に関しては、完全にタカ派の方向性を示していて、量的緩和の終了をテンポよく進めて行こうという方向性を示している。

飯田)量的緩和の終了を。

須田)ただその一方で、アメリカは先だっての雇用統計が悪かったのです。日本と違って、アメリカ中央銀行の最大の役割は、雇用統計、特に失業率を強く意識する形で金融政策を取ります。アメリカの金融政策は雇用統計次第なのです。本来であれば、緩和維持というところを選択すべきなのに、雇用統計が悪化しているにも関わらず、量的緩和の縮小を前倒しする。となると、雇用よりもインフレリスクは相当深刻なのだなと思います。

飯田)そちらの方が。

須田)物価上昇リスク。その意味で言うと、アメリカはそちらの方に重点を移して来ている。なおかつ、インフレリスクはそれだけ深刻なのだと考えてもらった方がいいのではないかと思います。アメリカももちろん、スタグフレーションリスクです。

飯田)不況下でのインフレリスク。

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