安倍元総理「台湾への挑発は中国自身の利益を損ねる」は日本国内へのメッセージでもある

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月15日放送)に作家で自由民主党・参議院議員の青山繁晴が出演。安倍元総理が台湾のシンクタンクの会合に寄せたビデオメッセージで台湾情勢に触れ、「隣国を挑発することは中国自身の利益を損ねる」と指摘したというニュースについて解説した。

【政治 自民党・清和政策研究会パーティー】自民党最大派閥の安倍派(清和政策研究会)が、安倍元首相の派閥復帰後初のパーティーを開いた。挨拶する安倍晋三元首相=2021年12月6日午後、東京都港区 写真提供:産経新聞社

安倍元総理「台湾への挑発は中国自身の利益を損ねる」と指摘 〜「日本は中国へどう臨むのか」を示唆

自由民主党の安倍元総理大臣は12月14日、台湾のシンクタンクの会合にビデオメッセージを寄せ、軍備増強と海洋進出を進める中国と台湾との間で高まる緊張関係に関し、「中国に対し、隣国を挑発したり、追い詰めたりする行いは控えるべきだと言うべきだ。中国自身の利益を損ねるからだ」と重ねて指摘した。

飯田)日米台のシンクタンクが共催したシンポジウムのなかで、ビデオメッセージを寄せたということです。安倍さんはここ最近、精力的に発言されていらっしゃいますね。

青山)総理でなくなったということを、いい意味で活用されていると思います。中国共産党の独裁主義が、このところ極端になっているでしょう。ウイグル人に対する問題も極端な弾圧ですよね。

飯田)そうですね。

青山)中国が「内政問題だ」と主張することに対して、安倍さんは総理の時代から反論されて来ましたけれど、ここまではっきりとは言えませんでした。今後の新しい年は、ますます「中国に対してどういう姿勢で臨むのか」ということが日本の鍵になるという示唆でもあると思います。

中国に対してどう向かうか 〜その分岐点に立つ岸田総理

青山)私も中国に対して厳しい姿勢を取っていますが、それはあくまでも独裁主義に対して取っているのであり、中国の方々に対してではありません。アジアのなかで、いま中国共産党の独裁主義にものを言える国は、実は日本しかいないのです。ナチズムの専制主義に対して、1930年代当時のヨーロッパでものを言うことができたのは、ドーバー海峡を挟んだ英国だけでした。

飯田)そうですね。

青山)でも、その英国も最初はチェンバレン首相が宥和政策を取り、宥めようとして、かえってチェコやポーランドを差し出してしまい、それが大きな戦争につながって行ったわけです。英国はそこで切り替えて、チャーチルが現れたのです。岸田総理は、その分岐点に立っていると思います。チェンバレンになるのか、チャーチルになるのか。

飯田)チェンバレンになるか、チャーチルになるかの。

青山)安倍さんも、安倍さんの意見を自由におっしゃっているようで、岸田総理に対して「対中国に宥和的な姿勢はもう通用しない」とおっしゃりたいのではないかなと思います。

飯田)このメッセージは対中国のみならず、日本国内に向けても、と。

青山)いや、日本国内に向けてがいちばんでしょう。中国共産党に対してメッセージを出すのも大事ですが、言っても方向転換しないではないですか。できないシステムなのです、独裁主義というものは。

いたずらな宥和政策はアジアの平和にとって有害

青山)民主主義のようにいろいろな意見が出て来ないですから、独裁者が失脚するような極端なことがなければ意見を変えられないのが、独裁主義の大きな弊害の1つです。だから、中国共産党をこれで動かそうとしているのではなく、岸田現政権に対して、「いたずらな宥和政策は、アジアの平和にとって有害ですよ」ということを言いたいのではないでしょうか。台湾のことをおっしゃっているけれど、本当の真意はそこだと思います。その意味では、私は安倍さんの発言を支持します。

飯田)岸田政権に向けて。

青山)ただし、台湾国防部からすると、中国は演習に見せかけていきなり攻撃して来る可能性もある。その可能性の恐れを指摘されることは正しいのですが、現実の中国軍にはそんな能力はありません。

中国が東沙諸島に攻撃をしかける可能性も

青山)台湾の南には東沙諸島があります。日本の尖閣諸島と似ているのですが、そこに対して攻撃をしかける可能性はあると思います。そこに拠点を置いたり、また中国は賢いので台湾を破壊することはせず、そこを拠点に台湾の内政を動かし、中国共産党の思い通りにするという懸念の方が強いと思います。

飯田)なるほど。

青山)東沙諸島まで、横須賀からアメリカ海軍の主力である第7艦隊が向かっても、数日かかりますから、そういうときに狙われる可能性があります。台湾海峡から南にかけては異常な緊張状態です。

中国の中央人材工作会議が27日から28日まで北京で開かれ、習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委主席が出席し、重要演説を行った。2021年9月29日 〔新華社=中国通信〕中国通信/時事通信フォト 写真提供:時事通信社

限定条件が厳しすぎて使えない「集団的自衛権」

飯田)安倍さんは今回のメッセージのなかで、「日米台は海洋や空中、サイバー空間、宇宙においても能力を高め続ける必要がある」と、ここを連携すべきだと強く訴えている。現状として、日本の自衛隊と台湾軍が何かをやろうという動きは、オフィシャルにはできないところがありますよね。

青山)法的にできないわけではないですけれどもね。ただ、簡単に言うと、自衛隊は活動範囲がものすごく狭いのです。もちろん憲法9条の制約もあります。安倍政権下で平和安全法制ができて、集団的自衛権を認めたのですが、実はアメリカ軍から聞いた反応として、当時の私は民間人でしたが、むしろ逆に厳しいので使えないと言うのです。

飯田)逆に使えない。

青山)あまりにも限定条件がつきすぎて。第二次世界大戦当時からそうですが、なぜ世界大戦になったのかというと、一国では防衛できないからです。よくも悪くも、いろいろな国と組まなければならないわけです。

飯田)そうですね。

青山)この時代に「自衛隊だけで国防ができる」という考え方を、日本はいつまで続けるのか。存立危機という妙な言葉を使ったり、「〇〇事態」というものがたくさんあって、国民にはわかりにくいと思うのですが、アメリカにとってもわかりにくいのです。台湾にとってもわかりにくい。しかし、中国にとっては、わかりにくいままでいいのです。自衛隊が動けないわけですから。

日本の自衛隊の海での能力は高い 〜「平和を守るために、何をすべきなのか」を現実の中国の動きを見て考えるべき

青山)ただ、自衛隊の海での能力、特に潜水艦艇の能力は、世界最高だと私は考えています。原子力潜水艦より、日本の通常艦の方が局地戦で見れば上だと思います。見つからないから。原子力潜水艦は音が大きく、見つかってしまうのです。

飯田)日本の通常の潜水艦の方が。

青山)そうすると、台湾やアメリカから、「平和を守る範囲内において、もう少し活動範囲を広げるべきだ」という議論がずっとあります。安倍さんの発言はそこに対しても問題提起をしているのだと思います。先ほど岸田総理と言いましたが、私たちは民主主義の国です。私たち国会議員の後ろには有権者がいるわけですから、主権者の方も改めて客観的に冷静に、「平和を守るために何をすべきなのか」ということを、現実の中国の動きをよく見て考えて欲しいのです。

中国にとっても利益にならない 〜台湾の存在感が増加する理由

青山)しかし、「中国にとっても利益にならない」と、安倍さんは言っているわけです。例えば経済から言うと、中国がものを買ってくれる大きさと、台湾がものを買う大きさは、桁がゼロ3つくらい違うでしょう。それでも、これだけ台湾の存在感が増して来るというのは、あまりにも中国共産党の最近の動きが、習近平国家主席の独裁が極端に強化されているからです。それは自滅につながると思います。

飯田)それに対して、諫言するような人は、あの体制下では生まれ得ない。

青山)もともと少なかったのが、汚職追及の名の下に徹底的に失脚させ、追放し逮捕し、投獄したでしょう。しかし、習近平さんの派閥に属する人たちは一切そういう目に遭わない。習近平さん、あるいは中国共産党自身は独裁主義の方がいいのです。決定も早いし、ブレもないのだとおっしゃっているけれど、弊害も自分で大きくしているのが現状なのです。そうすると、いろいろな諫言は国外からもせざるを得ません。

飯田)国外からも。

青山)さらに台湾、ウイグル、チベット、南モンゴルなどの問題は、内政問題で片付けるわけにはいきません。人間の尊厳、命に関わることですから。

対中国、人権非難決議を本国会で

飯田)まさに人権についての問題。そうすると、立法府での決議に関しても。

青山)来年(2022年)の通常国会まで待たずに、対中国、人権非難決議を本国会で行うべきです。とは言っても、もう時間がなくなってしまったのですが。やるべきだということは前々から言っていますし、提案しているわけですが。

飯田)自由民主党総裁に対して申し入れを文書でやったり、直接対面でやっていらっしゃいます。

青山)安倍さんが総理のときに言ったら、「これは国会マターですよね。俺ではないよね」と言われたと思うのですが、岸田総理はそうおっしゃらずに、「茂木幹事長に伝えます」ということでした。幹事長、国対委員長間での調整を党の方で頑張るしかないです。

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