「民主主義サミット」の功罪

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月17日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。アメリカ主催で開催された「民主主義サミット」について解説した。

オンライン形式の「民主主義サミット」に参加するバイデン米大統領=2021年12月9日、ホワイトハウス(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

民主主義サミット

バイデン米大統領の肝煎りで初の「民主主義サミット」が開かれた。米政府は会合の成果を自画自賛するが、内外の論調は「賛否相半ば」のようだ。この米国の大規模オンライン興行を我々は如何に評価すべきだろうか。

飯田)宮家さんは産経新聞に「宮家邦彦のWorld Watch」という隔週の連載をお持ちですけれども、そのテーマも「民主主義サミット」でした。

宮家)民主主義サミットは12月9日〜10日に行われています。

バイデン大統領の選挙公約であった「民主主義サミット」

宮家)このサミットの話は、元々バイデンさんの選挙公約だったわけです。民主主義と言っても、アメリカ国内でも問題があり、最大の問題はトランプさんでした。「彼はポピュリストでダメなんだ」と、「民主主義的ではないのだ」ということになり、対抗軸としてバイデンさんは「当選したら民主主義サミットをやるのだ」という状況になったのです。勿論、対外的には中国もロシアもいるわけですから、そういう意味でも、公約を早期に実現したということです。

飯田)公約を果たした。

宮家)ただ、その招待基準がどうなのだというと、問題はある。NATOのトルコやハンガリーが入っていないけれど、しっかりとした基準はあるのかと言うと、実は「民主主義国のサミット」などとは一言も言っていないのですよ。バイデンさんは「民主主義のためのサミット」と言っているだけなのです。

飯田)英語では、「The Summit for Democracy」ですね。

宮家)「for Democracy」ですから。だからどうだという話ですが、結局、この会合には批判がないわけではなかった。

報告書まで出して対抗した中国 〜中国にも民主はある

宮家)中国は中国で、これを米中の情報戦だと思って徹底的に交戦したわけです。アメリカが「民主主義サミットをやる」と言ったら、「何を言っている。中国にもきちんと民主があるのだ」と。

飯田)民主がある。

宮家)「民主」であって、「民主主義」ではない。我々の言う「民主主義」というのは、中国では「主義」ではないのです。共産主義と堂々と肩を並べる「主義」とは「違う」のだと。

飯田)違う。

宮家)「毛沢東思想に基づく中国共産党のなかにも民主はあるのだ」と。「アメリカだけが民主ではないのだ。俺たちも持っているのだ」という理屈で、「アメリカの民主主義だって、人種問題などいろいろ問題があるではないか」という報告書まで出して、アメリカに対抗する情報戦をやったわけです。

国際話語権 〜中国の影響力を確立しなくてはいけない

宮家)調べてみたら、中国にはアメリカの学者も注目している「国際話語権」という面白い概念がありました。面白いと言っても、ただの情報戦の手段ですから、本質ではないのだけれども。「国際話語権」とは中国の国際社会における発言力、いやもう発言力を超えて、「中国の権力、もしくは影響力」、これを確立しなくてはいけないという考え方です。そこからすると、まさにアメリカが民主主義で中国を非難し、けんかを仕掛けて来た。そうしたら中国もやり返さなければいけないから、白書や報告書をつくるということになるわけです。

2日、英グラスゴーで記者会見するバイデン米大統領(ロイター=共同) =2021年11月2日 写真提供:共同通信社

功罪ある「民主主義サミット」 〜功もある

宮家)民主主義サミットのメリットは「あまりない」と言う人が多いのですが、台湾まで呼んで、110を超える国と地域を集める形でデモンストレーションを行ったことは、ある意味で中国の「話語権」に対応しているのではないでしょうか。

飯田)カウンターパンチとして。

宮家)国際社会ではやはり民主主義の方が大事に決まっています。中国が屁理屈で、「中国には民主がある、投票権もある」と言っても、「被選挙権はどうなのだ、言論の自由はどうなのだ」と言うと、中国はそこは全然触れないわけです。ですから、その意味でアメリカは中国の痛いところを突いているのです。「民主主義サミット」も、これはこれで問題はあったけれど、私が「功罪」と書いたのは、「罪だけでなく功もありますよ」という意味です。

うまく行けば来年は対面で開催も

宮家)110の国や地域を呼ぶと言っても、すべての話を聞くことは難しいですね。

飯田)オンラインですからね。

宮家)バイデンさんはともかく、誰かが聞いているのでしょう。今回が初めてのサミットですから、うまく行けば来年(2022年)は対面でやる可能性もあります。

飯田)対面で。

宮家)そうなれば、ロビー外交もできるわけですから、それはそれで面白いイベントになるかも知れませんね。

参加するハードルを下げて東南アジア諸国なども参加できるイベントに

飯田)これだけの国が集まる会議は、国連総会以外にはない。

宮家)国連総会で、中国とロシアとイラン、北朝鮮などが来ない。それだけならいいけれど、「トルコやハンガリーは来ないの? シンガポールは来ないの?」となります。

飯田)そこですよね。

宮家)「東南アジアはどうなの? ミャンマーも来ないの? それだと中国の思う壺ではないか」と。やるのはいいけれど、国際的に中国やロシアを追い詰めようとするのであれば、少しハードルを下げて、東南アジアの国も呼ぶ。そして、「皆さん、いろいろあるかも知れないけれど、民主主義に向かって努力してね」と、「お手伝いしますよ。中国の方には行かないでね」、「ロシアの言うことを聞いてはダメですよ」というやり方もあったのではないでしょうか。

飯田)こういうものは線引きが非常に難しい。

宮家)どちらにしても情報戦で、宣伝なのだから。それを言っては終わりだけれど、これもキツネとタヌキの化かし合いの一環だと思えばいいのではないでしょうか。

政権が共和党になれば開催することはない

飯田)これは最初の一手のようなものですか?

宮家)そうですね。来年は第二回民主主義サミットがあるかも知れないけれど、政権が共和党になった場合はやらないでしょうね。

飯田)そこは中間選挙による。

宮家)こういうところは民主党だなという感じがします。

飯田)仲間を連ねて「こんなにいるのだぞ」ということを見せたがる。

宮家)トランプさんのような人が帰って来たら、あくまでアメリカ一国主義であり、「民主主義のリーダーになる」などということは考えないでしょうから。

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