中国のウイグル弾圧のきっかけは「9・11」だったという事実

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月5日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。米電気自動車大手のテスラが、中国の新疆ウイグル自治区にショールームを開設したというニュースについて解説した。

習近平氏、中国共産党・世界政党指導者サミットで基調演説 (北京=新華社記者/李学仁)= 2021(令和3)年7月7日 新華社/共同通信イメージズ

テスラ、新疆ウイグル自治区にショールーム

2021年12月31日、米電気自動車大手のテスラが、中国の新疆ウイグル自治区にショールームを開設したが、アメリカ最大のイスラム教市民団体「米イスラム関係評議会」は1月4日、ツイッターの公式アカウントに「テスラは大量虐殺を支援している」と投稿し、テスラを批判している。

飯田)テスラ側の返答はないということです。新疆のウルムチにショールームを出した。

佐々木)中国経済とアメリカ企業、アメリカのみならず西側企業がどう付き合うのかということは、悩ましい問題になって来ているわけです。ジェフリー・ケインさんというアメリカのジャーナリストが、『AI監獄ウイグル』という本を書いています。なかなかに強烈で恐ろしい本なのですが、邦訳版が1月14日に刊行されます。書評を書かなければいけないので、事前にゲラを読ませていただいたのだけれど、かなり衝撃的な内容です。

中国のウイグル弾圧は「同時多発テロ」がきっかけ 〜米が「グアンタナモ収容所」でウイグル人反体制派を中国人に尋問させていた

佐々木)ウイグル弾圧について、以前だとチベットの弾圧については言われていましたが、ウイグルに関してはそれほど問題になっていませんでした。実は、最初のきっかけになったのは、2001年の同時多発テロ、9・11だったという話があるのです。あのときアフガンにアメリカ軍が攻め入り、そこでアフガンとパキスタンの国境で活動していたウイグル反体制派の人たちを、何の根拠もなく逮捕・勾留しているのです。キューバにある「グアンタナモ収容所」に連れて行き、当時、習近平体制ではなかったためアメリカと中国は蜜月期で、ウイグル人反体制派を中国人に尋問させているのです。

飯田)そうだったのですか!

9・11をきっかけにウイグル人によるテロが発生 〜以来、ウイグル弾圧が始まる

佐々木)グアンタナモに、アメリカ人ではない外国人が入って来て、収容者を尋問するということは、多分他にない。その辺りから話がこじれて来るのだけれど、まず同時多発テロが起きたことで、「イスラム側がアメリカに異を唱えるためには、テロを起こすことがいいのだ」ということが、1つのテロリストのテーゼとして生まれた。ウイグル人たちは、「なるほど、そうやって我々も中国に対抗すればいいのだ」と考えるようになり、9・11後にウイグル人によるテロがいくつか起きるのです。

飯田)9・11後に。

佐々木)それに対して、中国は「これはまずい」と。「いままでは、ウイグルに対して何もしていなかったけれど、これは徹底的に弾圧しなければいけない」と発想が切り替わるようになる。

綿花の収穫=中国=2013年10月26日 Imaginechina/時事通信フォト 写真提供:時事通信

グアンタナモ収容所で拷問するアメリカ人を見て「法の逸脱はOKなのだ」と思うようになった中国

佐々木)もう1つは、グアンタナモでウイグル人を拘留していて、しかもアメリカ人は拷問をしている。アメリカ人兵士が首を絞めたりしているところを、中国人が写真を撮っていて、その写真が残っているらしいのです。例のウイグル弾圧について書かれている「新疆文書」のなかに。

飯田)「新疆文書」に。

佐々木)それを見た中国政府は、「そうか、別に逮捕状や根拠がなくても、収容所に無理矢理連れて行って、強引にやっても大丈夫だ」、「法の逸脱はOKなのだ。アメリカもやっているぐらいだから」と思うようになったという話です。

飯田)特に、対テロ戦という大義名分があれば。

佐々木)それまでは、「何の根拠もなく拘留するのはよくない」というぐらいの節度は中国政府にもあったのですが、それがグアンタナモで切れた。解き放たれたということです。

ウイグルの一般家庭のなかにも監視カメラが設置

飯田)グアンタナモで。

佐々木)それ以来、徹底的にウイグルを弾圧して、根拠なく全員を収容所に入れたりしている。いまはウイグル人のすべての一般家庭にカメラが入っているのです。いままでは、街頭や集会などで反体制的なことを喋ると、マークされることはあった。

飯田)外で話せば。

佐々木)しかし、家のなかでは、みんな本音で、夫婦や親子の間で喋っていた。それが、家のなかにもマイクを付けられたので、家庭のなかでも喋れなくなってしまった。そこまで徹底的に監視を強めているという状況が、いま生まれているのです。

ウイグル人の若者がテロに走ったのは、イスラムがヨーロッパで遭ったことと同じ 〜「悪意と憎しみの連鎖」

佐々木)ただ、これも本当に皮肉な話だけれども、弾圧を強めれば強めるほど、ウイグル人の若者たちは「もうテロで対抗するしかない」と逆に思うようになる。これは、イスラムがヨーロッパで遭ったこととまったく同じです。

飯田)イスラムと。

佐々木)当初、イスラムはヨーロッパに移民として行って、多文化主義に馴染もうとしたけれども、なかなか馴染めなかった。そのときヨーロッパでは、テロがいくつか起きると弾圧に入る。弾圧に入った瞬間に、イスラムの一般の若者も、「この国に我々の居場所はない」と絶望するわけです。そしてテロリストに転じる人がたくさん増えてしまうという、「悪意と憎しみの連鎖」です。それがウイグルでも起きている。そういう現状であると書かれています。

飯田)引き金を引いたのは、9・11のときの、アメリカのブッシュ政権の当時の対応だった。

佐々木)結局、これは「力に力で対抗すると、その力と力の応酬は延々と繰り返される」という典型的なケースです。

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