自然と向き合う課題がまた……トンガの海底火山噴火【みんなの防災】

「報道部畑中デスクの独り言」(第279回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、トンガ諸島付近の海底火山噴火について—

ハアパイ火山噴火の衛星画像(赤丸部分 気象庁資料から)

先日起きた海外の海底火山噴火は、日本列島に思いもよらぬ現象をもたらしました。噴火があったのはトンガにある「フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山」……ニュージーランド北東部の島国、トンガにある火山です。

日本時間1月15日午後1時ごろ、大規模な噴火があり、噴煙はおよそ1万6000mに達しました。1万6000mは対流圏のほぼ上限にあたります。

トンガから日本までの距離は約8000km。気象庁では15日午後7時過ぎには若干の海面変動はあるものの、「津波の心配はない」としていましたが、日付が変わって16日午前0時15分に、鹿児島県の奄美群島・トカラ列島に津波警報を発表。その他、北海道から九州、沖縄にかけての太平洋側を中心に、広い範囲で津波注意報が出されました。午前3時前には岩手県にも津波警報が発表されています。

鹿児島県奄美市小湊(トカラ列島)で1.2m、岩手県久慈港で1.1mの津波が観測された他、注意報の地域でも最大90cmが観測されました。気象庁では16日午前2時に緊急の記者会見を開き、今回の経緯を説明しました。

トンガから日本の間にある海外の地点では当初、大きな振幅は観測されていませんでした。その高さは最大でも30cm、噴火地点周辺でも最大80cmほどでしたが、噴火発生後から10時間余り経って、鹿児島県の奄美市で1mを超える海面変動が観測されたことから警報発表に至りました。

気象庁で行われた緊急会見(1月16日午前2時撮影)

ただ、この海面変動は「海水全体で波が伝播する」という通常の津波の特徴とは異なるものでした。また、理論的な到着予想時刻より2時間以上前に海面変動が確認されていました。気象庁では「検討に時間を要した」と説明し、厳密な意味での津波かどうかは、現在も「わかっていない」としています。

「地震が起きて、位置と規模を求め、そこから津波の高さと到達時刻を津波予報のデータベースから予測する」という通常の予測システムの対応ではなく、海面変動の実況を基に警報・注意報を発表することになりました。気象庁では「防災上の観点から津波警報の仕組みを使って防災対応を呼びかける」、このように表現していました。

したがって、十分に海面変動が収まったことが確認されない限りは、解除も出せない状態でした。先の会見では「(警報・注意報は)しばらく長く続くもの」と慎重な姿勢を示し、結局、一連の警報・注意報が全面解除となったのは、発表から約14時間後の16日午後2時のことでした。

土佐清水と沖縄の気圧変化図 いずれも1月15日午後8時ごろ(グラフ右)に気圧が一時的に上昇している箇所がある(気象庁資料から)

今回、なぜこのような状況になったのか、そのメカニズムについて気象庁では「わかっていない」と話していますが、1つのカギとなっているのが気圧の変化です。

噴火から約7時間後、日本時間の15日午後8時ごろ、日本各地でおよそ2hPa気圧が上がる現象がありました。予想より早く海面変動が現れた時刻とほぼ重なり、トンガの火山噴火によるものと気象庁ではみています。

気圧というのは(単位体積あたりの)空気の重さを示します。気圧上昇により、重くなった空気が海を押し付け、元に戻る際の反動が海面変動をもたらした……1つの推測ではあります。

ただ、それでも2hPaで海面が変動するのは2cmほど。最大1mを超える海面変動をもたらしたのはなぜなのか、そもそもなぜ噴火によって気圧変化が起きたのか。複合的なものなのか、その因果関係については、今後の検証が必要となります。

衛星画像で見る今回の海底火山噴火はすさまじいもので、現地では被害の状況がつかみ切れていません。日本国内では四国で船が転覆するなどの被害が出た他、沿岸地域の交通機関に影響が出ました。津波警報が出た鹿児島県奄美市では、避難のための自動車渋滞が起きました。

そして、大学入試にも影響が及び、警報が出た岩手県の会場では試験の実施が中止されたところもありました。受験生の皆さんにとってはコロナ禍、東大キャンパス前で起きた高校生による切り付け事件、そして津波の影響……異例のなかでの体験だったと思います。

阪神・淡路大震災から27年、東日本大震災からまもなく11年……地震国と言われる日本はその都度、教訓としてさまざまな対策に取り組んで来ましたが、自然は人類の英知を超えて来ます。防災に関し、また新たな課題を突き付けられたと言えます。(了)

関連記事(外部サイト)