コロナ禍で変わるホテル業界 〜2022年注目のホテルは?(後編)

新型コロナウイルスの感染拡大により、ホテル業界もかつてない大きな影響を受けている。このコロナ禍におけるホテル業界の現状や課題について、ポッドキャスト番組「ニッポン放送・報道記者レポート2022」(ニッポン放送 Podcast Station ほか)の1月20日配信回(担当:宮崎裕子記者)では取り上げ、前回(1月6日)に引き続き、「ホテル未来会議」の共同代表を務める武田雅樹氏に訊いた。

ウォーターズ竹芝 外観イメージ 〜2020年3月26日  JR東日本ホテルズ プレスリリースより

―――いま注目の新規ホテル

宮崎)前回はコロナ禍で変わるホテル業界や、2022年開業の注目ホテルなどについてお聞きしましたが、後編では、いま注目のホテルや、これからのホテルはどうあるべきか「ホテルの未来」についてお伺いしていきます。まず、既存のホテルで今もっとも注目しているホテルはありますか?

武田)コロナ禍でなければ、メディアからも大注目されたであろう多くのホテルが2020年以降、ひっそりと開業しています。個人的におすすめしたいホテルを、ほんの一部だけご紹介します。

1 2020年4月開業『メズム東京 オートグラフ コレクション』
2 2020年4月開業『東急ステイ飛騨高山 むすびの湯』
3 2020年6月開業『エースホテル京都』
4 2020年6月開業『SORANO HOTEL』
5 2020年8月開業『THE AOYAMA GRAND HOTEL』
6 2020年12月開業『白井屋ホテル』
7 2021年10月開業『香林居』
8 2021年12月開業『HOTEL LEPO CHAHAL(ホテル レポ チャハル)』

宮崎) これらは比較的新しいホテルですが、有名、老舗ホテルで注目しているところは?

帝国ホテル

―――「帝国ホテル」「パークハイアット東京」の魅力

武田) いまやっぱりおすすめしたいホテルは、ついに建て替えがきまった『帝国ホテル 東京』です。130年の歴史を誇る帝国ホテル東京は、いまの本館は築50年、タワーは築38年が経過していて、2036年に建築家・田根剛さんのデザインで新しくなります。いま現存している帝国ホテルに宿泊しながら、14年後の新しいホテルを妄想し、そしてホテルの歴史に想いを巡らす。そんなとこができるのは今しかありません。2024年から段階的に工事がはじまるそうなので、現存のまま帝国ホテルを体験できるのは、あと2年しかありません。行くなら今です!

そして、個人的に大好きなホテルは、西新宿にある『パーク ハイアット 東京』です。新御三家と言われたこのホテルも1994年開業なので、すでに築28年が経過し、なかなかの古巣になりましたが、このホテルはいまでも色褪せることのなく、わたし史上、最も素敵なホテルのひとつです。2階エントランスから41階へ上がるエレベーターは、はじめは薄暗く、上に上がるに連れ、エレベーターが徐々に明るくなって、41階のドアが開いた瞬間、まばゆい自然光が降り注いできて、まるで天空に来たかのような空間です。このエレベーターの体験はいつもワクワクします。パークハイアット東京は、いつ来ても変わらず素敵で、また必ず訪れたいと思わせてくれる「魔法」があるんですよね。近いうちに必ずこのホテルの秘密=「魔法」を自らの取材で解明したいと思っています(笑)

Park Hyatt Tokyo   提供 ハイアット

―――ホテルの未来は地域と「共創」

宮崎) 「ホテル未来会議」を立ち上げたとのことですが、ホテルの未来はどうあるべきとお考えですか?

武田) 未曾有のコロナ危機に直面し、改めて「ホテルとはなにか?」「ホテルとはいったい誰のものなのか?」 といったホテルの存在意義を考えるきっかきになったと思っています。ホテルもこのコロナ危機を乗り越えようと、クラウドファンディングなどで「未来のホテル宿泊チケット」などを販売する取り組みを始めたところもあります。

ただ、多くのホテルは今まで顧客との継続的なつながり、ファンづくり、街やそこに暮らす人との関係をうまく構築できていなかったと思うのです。決して悪く言うつもりはないですけど、あまりにもOTA(オンライン・トラベル・エージェント)に依存して、価格競争に必死になっていたことも要因の一つだと私は思います。

宮崎)消費者も、より安いホテルを求めますからね。

武田)ホテルは、自分達はなぜ選ばれ、どういった目的で利用されているのか、自分たちのお客様はだれなのか?本来知っていなければならないことを意外と知らないことが多いです。

宮崎)ラジオ局でも「リスナーの実像を考えた番組作りを」などと言われます(笑)

武田)ですので、コロナ禍でホテルが悲鳴をあげて「助けて」と言っても、手を差し伸べてくれる人は少なかったと思っています。そもそも、ホテルは誰に向かって「助けて」と発しているのか。ゲスト側も、そのホテルを助ける理由がみつからないのです。

さらに、もう終わりにしたほうがいいと思うのは、巨大な温泉旅館ホテルの数々。バスで乗り付けて旅館に直行。旅館の中で朝夕の食事をし、施設内の土産売り場で買い物をして、一歩も外に出ないまま、観光バスで次の観光地へ去っていく。これでは観光地や街が寂れてしまいます。地域にお金が落ちないから。

宮崎)旅行会社のメニューの中だけで終わってしまうと。

武田)そういう「自分達だけが儲かればいい」とか「宿泊施設だけが儲かればいい」みたいなものは、終わりにしませんかって強く思います。「競争」ではなくて、共に観光、まちづくりを盛り上げるための「共創」が大切ではないかと。これからのホテルの未来は、ホテルがハブとなって、街と暮らす人がつながり、ホテルから街の魅力を伝えていけるような「相互関係」が必要ではないでしょうか。

宮崎)ホテルが、その地域の活性化の一助となってほしいですね。

武田雅樹

■武田雅樹 プロフィール
創刊1966年のホテル・レストランの専門誌「週刊ホテルレストラン」の元編集部長で、2021年6月にホテルづくりをテーマにした新媒体「ホテルをつくるレシピ」を創刊し、現在、出版元のオータパブリケイションズに在籍しながら、ホテルの未来をデザインするコミュニティ「ホテル未来会議」の共同代表を務める。

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