米国がTPPから抜けているいまが日本の「天下」 〜TPPのルールメーカーになって国際交渉力を強化

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月9日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。米政府が、日本の鉄鋼への関税上乗せについて一部免除すると発表したニュースについて解説した。

2日、英グラスゴーで記者会見するバイデン米大統領(ロイター=共同) =2021年11月2日 写真提供:共同通信社

日本の鉄鋼への関税上乗せ、一部免除

アメリカがトランプ政権のときから日本の鉄鋼とアルミニウムに高い関税を上乗せしている輸入制限措置をめぐり、アメリカ政府は鉄鋼について一部を免除すると発表した。ただ、アルミニウムは上乗せ関税が継続されることになる。

飯田)2月8日朝にバイデン政権が発表したということです。EUとの交渉も妥結されています。

高橋)EUとは報復関税を掛けているから交渉が簡単なのですけれど、日本は報復関税を掛けていなかったので大変です。トランプさんがTPPを抜けてしまったために、TPP枠内で話ができなかったのでこういう形になっているのでしょうね。TPPに入っていれば、簡単に外せるはずなのです。逆に言うと、トランプさんはTPPを抜けるから実行したのかも知れません。

関税を掛けたことでその分、鉄鋼の価格も上がる 〜インフレ圧力になり批判が出る可能性も

飯田)当時はアメリカ国内に雇用を戻すのだと。鉄鋼も自国でつくるのだということで、関税の話になりましたが。

高橋)日本製のようなものはつくれないのではないでしょうか。

飯田)高性能のものは。

高橋)品質が違うので。関税を掛けておいて、結果的にアメリカ国内が困っているということでしょう。アメリカはインフレになりそうだから、総需要が総供給を上回っているのです。そうすると、こういう状況にも批判が出てしまうから、ということかも知れません。

飯田)関税が掛かった分だけ鉄鋼価格も上がるということで、インフレ圧力になっていると。

高橋)そういう可能性もあるかも知れません。

TPPに参加するために日本からの輸入規制を外さなければならない 〜TPPの枠組みは重要

飯田)大元を辿ると、中国に対してという部分があります。かなり鉄鋼をだぶつかせていた状況がある。

高橋)そういう問題もあったのでしょうね。TPPの枠に入っているか、入っていないかでだいぶ違います。TPPの話をすると、台湾の輸入規制が緩和されたでしょう。東日本大震災のあと、55ヵ国が輸入制限をして、いま残っているのは14ヵ国かな。他の国はみんな規制を外したのです。TPPに入っている国はみんな撤廃しているので、やはりTPPには意味があるのです。台湾もTPPに入りたいのであれば、輸入規制をなくす必要があったのでしょう。

飯田)輸入制限を掛けたままだと入れない。

高橋)台湾は抜けましたが、輸入制限が残っている国として、中国と韓国があります。中国はTPPに参加することは難しいですね。

飯田)こうなって来ると。

高橋)イギリスや台湾は、輸入停止はしないけれども、証明書などを要求するという規制なのです。そうするとイギリスにも、「TPPに入るのであれば、証明書はやめてくれ」と言えるのです。TPPに入っている国はみんな撤廃していますから。

飯田)きちんとチェックしているし、安全なものしか出していないことを考えると、追加で証明書というのも。

高橋)過剰規制になるのです。こういうときに、いろいろな枠組みがあると便利です。日本もTPPのルールメーカーでしょう。だから、今後はいろいろなことが言えるのです。「TPPに入りたいの? それなら、これをなくしてくれ」と。台湾にもいまの話だと、輸入停止は外すけれど「証明書を付けろ」ということを言われても、「それを外せ」と言えるのです。イギリスにも言えます。

飯田)この証明書は非関税障壁ではないですか、というように。

高橋)言えるのです。だから枠組みがあるというのは重要で、今回の鉄鋼の話も、TPPの枠組みがないから大変なのです。TPPの枠組みがあれば、「ルール違反だろう」と簡単に言えるのです。

台湾の双十節(建国記念日)祝賀式典で演説する蔡英文総統=2021年10月10日、台北(中央通信社=共同) 写真提供:共同通信社

アメリカがTPPから抜けているいまが日本のチャンス 〜日本がTPPのルールメーカーに

飯田)アメリカのTPP復帰を日本は求めていますけれども、どうですか?

高橋)バイデン政権はすぐには復帰できないでしょうから、いない間が日本の天下です。その間に国際交渉力を強化し、中国には「TPPに入れない」、韓国には「無理だ」と言って、イギリスと台湾には、「福島の産品の輸入規制を撤廃するのであればいいですよ」という言い方ができるのです。

飯田)ある意味、いまがいちばんチャンスである。

高橋)チャンスです。イギリスも台湾もTPPに入りたいと言っているのでしょう。ルールメーカーは日本ですから。ルールメーカーは、国際政治の舞台では強いのです。だからみんなルールメーカーになりたいのです。アメリカが抜けてくれたため、いまは日本がルールメーカーになっているので、いい立場にいます。

アメリカが抜けたために日本がルールメーカーに

飯田)日本がルールメーカーになるという機会は、なかなかないですね。

高橋)なかなかありません。TPPの場合は、アメリカが抜けたからです。

飯田)棚からぼたもち的な。

高橋)棚ぼたです。

飯田)でも、そこで汗をかいたというところですよね。

高橋)アメリカが抜けても頑張ったという側面がある。TPP亡国論を言っている人がいたけれども、大間違いでしたね。

経済安全保障にもつながる

飯田)これが経済安全保障にもつながって行くのですか?

高橋)もちろんそうでしょう。いろいろな意味で、国際舞台でルールメーカーになってトップを走るということは、大変なのだけれども、それなりの国益はあります。アメリカとは、こういう形で枠組みがなくても、ある程度の話はできるのです。

バイデン政権の2期目があればアメリカがTPPに復帰する可能性は高い

飯田)「経済版2プラス2」をやろうという話が、先日のオンライン首脳会談のあとに出ました。

高橋)アメリカも中国と対峙しているので、日本と中国を同じ扱いにしていたらまずいでしょう。民主主義国同士が同じような制度になりつつあって、対中国という話が色濃くなると思います。

飯田)TPPを拡大して行くなり、あるいはドッキングする形で、日米のFTAをもう少し拡大するような方向になるのですか?

高橋)アメリカもバイデン政権の2期目があればそういう話ができるのでしょうけれど、いまは無理でしょうね。

飯田)中間選挙が終わるまで。

高橋)終わって2期目があれば、バイデン政権もTPPに入るかも知れません。入らないと、1つ1つやりとりをしなくてはならないので大変です。日本が報復関税を掛けていないから、こじれてしまったのです。お互いに「やめよう」と言って、今後のきっかけをつくるためにも、報復関税を掛けておいた方がいいのです。

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