「1人1万円」で取引される現在の「奴隷制度」の実態

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月15日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。政府が取引先などの人権侵害リスクを調べて予防する「人権デューデリジェンス」の指針をつくることになったという報道を受け、企業への人権侵害リスクについて解説した。

インドネシア北スマトラ州ランカット県知事の自宅で発見された金属製おり=2022年1月25日付の北スマトラ州警察公式ツイッターより 写真提供:時事通信

政府が強制労働排除に向けて現地調査  〜日経新聞が人権問題を積極的に取材

政府が2022年夏を目途に、取引先などの人権侵害リスクを調べて予防する「人権デューデリジェンス」の指針をつくることになったと、2月15日に日本経済新聞が伝えた。サプライチェーンに強制労働や児童労働がないか、調査の手順を示すということである。

飯田)日経がスクープで出していましたが、それに追撃する形で掲載されています。将来的には法整備が行われるという話も出ています。

奥山)掲載される記事が株価に直結する、企業と仲がいい日経新聞がこの話を追いかけています。人権問題に対して積極的に向かっているという印象です。

飯田)そうですね。

奥山)そういう問題が日本企業に跳ね返って来るのだということです。安全保障もそうですが、他の新聞よりも、中国の人権に関して鋭い分析をしているのではないでしょうか。

飯田)他紙よりも。

奥山)日本は安全なので、我々はあまり意識しませんが、実際に海外では、とんでもない状況が未だに続いているということです。人権的に大変な状況が続いているのだということを、改めて認識しなくてはなりません。

未だに続く奴隷制度

飯田)ルールが変わりつつある。それに合わせなければならないということですね。

奥山)海外の報道を見ていると、中国の人権問題が取り沙汰されている状況のなかで、海外企業が当然の如く北京五輪を応援してスポンサーになっています。しかし、スポンサーになっていることの人道的な意義はどうなのかと。

飯田)人道的な意義。

奥山)中国には大きなマーケットがあります。そこに攻勢を掛けるために、協賛企業として名前を出すことは大事なのですけれど、人権的な問題もあり、オリンピックに協賛している企業が微妙な立場に置かれているのだと、海外の報道を見ていても思います。

飯田)板挟みになっている。

奥山)私はどちらかと言うと、海外のダークサイドを中心に見て分析する人間なので、人権侵害リスクの、特に「奴隷制」というところが引っかかるのです。

飯田)奴隷制。

奥山)国際政治にはいろいろな闇がありますけれども、我々が忘れてはならないのは、奴隷制度が未だに続いているということです。

飯田)「奴隷貿易」などを世界史で習いましたが、かなり昔の話だというイメージがあります。

現在の奴隷制度の実態 〜「1人1万円」で取引されている

奥山)奴隷制の実態は見えなくなっていますが、未だにグローバルに展開されているのです。例えば「フリー・ザ・スレーブ」という活動団体があります。「FTS」と略されますが、現代にも奴隷が未だにいるのだということを、いろいろなデータで公表しています。

飯田)FTS。

奥山)少なくとも世界には2700万人いるとされています。全世界の人口が70億人を超えるなかで、2700万人は少ないと思われるかも知れませんが。

飯田)いや、ものすごい数ですね。

奥山)ものすごい数です。しかも、奴隷とされる方々はとんでもなく安いのです。

飯田)安い。

奥山)『ジャンゴ 繋がれざる者』という映画が、日本では2012年に公開されました。タランティーノ監督が撮った作品です。

飯田)クエンティン・タランティーノ監督の。

奥山)黒人俳優のジェイミー・フォックスが主演した西部劇です。1850年代、南北戦争前のアメリカを舞台とした映画で、悪者である白人の牧場主をレオナルド・ディカプリオが演じています。

飯田)ディカプリオが。

奥山)この牧場主に対して、クリストフ・ヴァルツが演じる賞金稼ぎのドイツ人が、黒人の主人公を連れて行って、みんなで悪い白人たちを倒す。「黒人を解放する」というのが1つのテーマになっています。

飯田)なるほど。

奥山)1850年代の奴隷の値段は、実際に資料も残っているのですけれど、「1人4万ドル」と言いますから、500万円前後の価値があったのです。

飯田)1人約500万円。

奥山)昔の奴隷は高かったのですが、FTSという団体が発表した現在の数字では、仕事の内容によりますが、平均して「1人1万円」という値段だそうです。

飯田)奴隷を買うのに。

奥山)90ドルとなっていますので、約1万円ではないですか。とても安くなっている。いまもそういうグローバルなネットワークで、奴隷を使いやすい状況になっているのです。「こういう事態を忘れてはいけない」というところが本当はあるのです。

北京冬季五輪のエンブレム=北京市延慶区(共同) 写真提供:共同通信社

見えにくい奴隷制度の実態 〜リスクを負う可能性のある日本企業

飯田)奴隷の定義について、人間として扱われず、ものとして売買されるところがあるわけですか?

奥山)そうですね。奴隷というのは、必然的に「人間以外」ということになってしまうのです。そのような形で使われている人がたくさんいるのです。

飯田)正当な対価は支払われないということですか?

奥山)支払われないでしょうね。「買われてしまう」という状況ですから。扱いが「人間以外」になってしまうので、彼らの苦しみや痛みに対して同情するような制度ができにくいということです。表向きには、書類上で「私のところに働きに来てもらっている」などと、雇用契約として。

飯田)装うということですか?

奥山)そういうことです。だから昔の奴隷よりも、いまの奴隷の方が安いという実態があるのだけれど、それが見えない状況があるということです。

飯田)実態が見えない。

奥山)日本人としては、「倫理的に問題があるものがたくさんある」というところが見えないので、「我々は普通に商売しているだけではないか」と思うのだけれど、実はそこにはダークサイドが十分にあるということです。

飯田)思わぬリスクを背負う可能性があると。

奥山)日本は先進国として、しっかり対策するべきだと思います。

大企業が率先して解決方法を探るべき

飯田)企業だけで対応できるかというと、記事にも指摘がありますけれど、国レベルや行政レベルでお金を出してくれないと、なかなか中小企業には難しいですよね。

奥山)そうですね。日本には大企業、大きな某アパレルブランドがあるではないですか。

飯田)アパレルの。

奥山)エコやSDGsもいいのですけれど、そういうところが率先して、ダークサイドの部分を解決して行くようなやり方を打ち出すべきだと思います。

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