日本だけが遅れる「経済回復」 〜その根本にある問題

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月16日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。2021年10〜12月期のGDPが年率換算でプラス5.4%と2期ぶりにプラスになったというニュースについて解説した。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

2021年10〜12月期のGDP年率プラス5.4%、2期ぶりプラスに

内閣府が2月15日に発表した2021年10〜12月期のGDP速報値は、物価の変動を除いた「実質」の伸び率が前の3ヵ月と比べてプラス1.3%、年率に換算してプラス5.4%と、2期ぶりのプラスとなった。緊急事態宣言が解除されたあと、新型コロナウイルスの感染状況が比較的落ち着いていたため、GDPの半分以上を占める「個人消費」が持ち直したことなどが要因とされている。

飯田)一方で、16日の朝日新聞1面トップは、

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『昨年GDP、1.7%増どまり 欧米に比べ回復遅れ 10〜12月期、年5.4%増』

〜『朝日新聞デジタル』2022年2月16日配信記事 より

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飯田)……という見出しとなっています。年間GDPについて、欧米に比べて回復が遅れていると。

佐々木)欧米と比べると伸び率が低いです。アメリカはすでに2021年の段階から伸び率が上がっています。日本から見ると、アメリカは1日の感染者数が100万人以上で、死者もたくさん出ているのに、日本はすぐに抑えられて素晴らしいと思っていたけれど、経済に関しては日本だけ落ち込んで回復力が弱く、欧米だけ伸びているのはいったいどういうことなのか。2008年のリーマンショックの時期に、日本だけ影響があまりないと言われていて、リーマン・ブラザーズを野村證券が買収して引き受けたことがありました。そのあと、なぜか日本だけ経済が全然伸びず、アメリカやヨーロッパの成長に追いつかなかった。

飯田)そうでしたね。

佐々木)あの辺りから、日本だけ給料が上がらない状況がずっと続いている。このまま行くと、日本だけコロナが感染爆発しないで収まっているのに、経済だけはまたダメだということになりかねない感じがします。

個人消費は伸びているが、企業の設備投資の伸びが悪い 〜自国の経済に自信が持てない

佐々木)個人消費は持ち直しているのだけれど、各紙いろいろと読み比べてみると、やはり企業の設備投資の伸びが非常に悪く、それが足を引っ張っているようです。結局マインドの問題ですよね。日本の産業界が自国の経済に自信を持てていないという話ではないでしょうか。

改革をすればするほど、みんなで貧しくなる方に行く日本の企業 〜未だに企業マインドが上向かない

佐々木)いままでを考えると、経済を何とかしようというときに、常に規制緩和や改革だと言って、この20年やって来た。けれど、人材や雇用をもっと流動化すれば、給料に関してもよりよい方に移りやすくなると思います。

飯田)成長産業に。

佐々木)そうです。「雇用規制を緩和することでよくなるのだ」と言って来たのだけれども、NTTドコモが「NTTグループに合わせて給料を10万円下げます」という話をしたり、日本郵政が非正規雇用との間で休暇の数が少ないから調整しろと言われて、「では正社員の方の休暇を減らします」という話になってしまう。結局、日本は企業マインドが上向きになっていないので、自由化したり改革をすればするほど、みんなで貧しくなる方に行くだけなのではないかという感じがします。

飯田)貧しくなる方に。

佐々木)もはや、改革や規制緩和が経済を上向きにするという期待は持てなくなって来た。2000年代はずっとそういう期待で「改革だ」と言って来たのだけれども、その結果、この体たらくなわけでしょう。

雇用法制を変えて非正規雇用を増やしたら格差が広がり、みんな貧しくなっただけ

飯田)景気が上向かなかった場合には、「改革が足りないからこうなっているので、もっと徹底的にやらなくてはいけない」という意見が幅を利かせていましたからね。

佐々木)そうなのですよ。2000年ごろを思い出すと小泉内閣で、竹中平蔵さんが「規制緩和すれば経済が上向く」と言って雇用法制などを変更し、非正規雇用を増やしたら、結果的には格差が広がってしまった。

飯田)製造業派遣とか。

佐々木)そうです。結局みんな貧しくなっただけではないかという。いい加減それではダメだということに、みんなが気付かなくてはいけないという話ですよね。

トータルでマインドを上げて行くことが最優先課題

飯田)規制が緩和されてどうなるかというと、いままで規制がはめられていて、ものがつくれないという供給面の制約があった。それが外れるから供給が増えるのだけれども、世の中に需要がないとなると結局、価格が下がって行く一方になる。

佐々木)そうなのです。非正規雇用を増やしてコストカットをしたのだけれど、非正規雇用者も消費者なわけですから、給料が減って消費マインドが沈んだだけだったということです。しかもこの間、消費増税もした。消費税よりも、「見えない増税」と言われている社会保障費の異常な負担増も大きいと思うのです。可処分所得が見た目の給与よりもずっと下がっているという。

飯田)給料天引きで明細を見ると、「こんなに引かれていたのか」と思うことがあります。

佐々木)90年代に会社員をやっていたころは、あんなに引かれていなかったと思うのですけれども、いつの間にこんなにたくさん引かれるようになったのだろうという。そこも含めて、トータルでマインドを上げるということを最優先課題でやって行かない限り、この状況は変わらないと思います。

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