韓国の若者の間で高まる「反中感情」 〜「韓国大統領選」保守系野党勢力に有利か

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月16日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。2月15日から公式の選挙期間に入った韓国大統領選挙について解説した。

演説で台湾統一実現への決意を表明した中国の習近平国家主席=2021年10月9日、北京(共同) 写真提供:共同通信社

韓国大統領選 〜各候補が遊説開始

韓国の文在寅大統領の任期満了にともない、3月に投票が行われる韓国大統領選挙は、2月15日から公式の選挙運動期間に入った。世論調査の支持率で競り合っている革新系与党候補と保守系最大野党の候補は早速各地で遊説を行い、支持を訴えている。

飯田)投票日は3月9日で、選挙期間は22日間。与党「共に民主党」の文在寅氏の後継とされる李在明氏と、保守系最大野党「国民の力」候補である前検事総長の尹錫悦氏、この二者の戦いと言われております。

佐々木)最大の争点は、中国との距離をどう取るかということに尽きます。日本にとっても大きな影響があるということです。いまの文在寅政権は中国寄りで、向こうに行きすぎなのではないかと、日米からも危惧されていたわけです。では中国寄りの文在寅さんの後継者である李在明氏なのか、それとも中国から距離を置こうとしている保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦氏なのかというところです。

「反中国」が多くなりつつある韓国の若者 〜きっかけは北京五輪での2つのこと

佐々木)気になるのは、いくつかの新聞で報道されていますが、20代〜30代の若者が反中国の世論になって来ているということです。理由は2つあるのですが、1つは北京オリンピックのスピードスケート。

飯田)ショートトラック。

佐々木)ショートトラックで韓国人選手2人が失格になり、中国が金メダルを獲ったという。それが公正なのかどうかは置いておいて、気に食わないという世論が高まったのが1つです。

飯田)中国に対して。

佐々木)あとは開会式でも、中国の朝鮮族と言われる朝鮮系の少数民族の方々が、北朝鮮国境にたくさん住んでいるではないですか。その人たちの1人がチマチョゴリを着て、中国の代表の1人として踊ったのですが、「チマチョゴリは朝鮮のもので中国のものではない」ということになった。そこまで言わなくてもいいのではないかと個人的には思うのだけれども、そこで反発があったということです。

飯田)中国のものではないと。

佐々木)韓国の世論的に言うと、いまは若者を中心に反中国的な機運が、オリンピックで偶然にも高まっています。そこに大統領選挙が始まりますので、若干、保守系野党勢力に有利に働いて来ているのかなという感じはします。

飯田)中国との間のルーツ論争で、「キムチは韓国発祥のはずなのに中国発祥と言っている」というような話も。

佐々木)永遠とやっていますからね。あの二国は。ときどき日本にも波及して来ることがありますけれども。

文在寅政権が行った経済政策のしわ寄せが若者に来ている 〜財閥に入らなければ人生は見えない

飯田)若い人たちがどう考えるかというところですが、経済面で文在寅政権がやろうとしたことは結局、非正規雇用が増えるなど。

佐々木)そうなのですよ。

飯田)しわ寄せが若者に行っているということを言われていますね。

佐々木)韓国で「ヘル朝鮮」という言葉が出て来ています。文在寅政権だけではなく、金大中時代からずっと続いている新自由主義的な政策。日本でも雇用を流動化すると、お給料が増えるのではなく、逆に全員が非正規になって貧しくなるのではないかという話があります。まさにそれをやったのが韓国です。

飯田)アジア通貨危機のあとにIMFが入って、経済改革をなかば強引にやったという事実があります。

佐々木)「強い経済をつくらなくては」と言って、確かに強い経済はできたのだけれども、それはサムスンなどの財閥が強くなっただけです。サムスンなどの財閥に入れないと、もう全然ダメだという。若者は就職活動、それ以前に大学受験も競争が厳しくなって、サムスンなどに入れれば生涯の生活は安泰なのだけれども、入れないとなった瞬間、どうにもならない人生になってしまう。それを描いたのがアカデミー賞を獲った映画『パラサイト 半地下の家族』です。みんな貧しくて。

飯田)そうですね。

佐々木)中高年などもリストラされて、結局、リストラをされるとどうにもならないからチキン店を経営する。日本で言う唐揚げ店ですよね。チキン店をやるのだけれども、武士の商法だからほとんどが失敗して、さらに借金を背負うようなことが繰り返されていると、この10年、韓国で言われています。日本も最近、韓国の後ろを追いかけているのではないかという気がします。日本でも最近、唐揚げ店がやたらと多くないですか?

飯田)唐揚げ屋さんが多くなったり、変わった名前のパン屋さんが多くなったりとか。

文在寅大統領への怒りは相当強い

佐々木)しかも日本で非正規雇用が増えているというのは、まさに韓国の後ろを追いかけていて、「ヘル朝鮮」ならぬ「ヘル日本」にならなければいいなと思います。韓国の状況は非常に厳しくて、前から続いている話ですから、文在寅大統領の経済政策の失政と言っていいのかはわかりませんが、そこに対する怒りも相当強いのではないかと思います。

飯田)確かに前大統領選のときに平均賃金を上げる、最低賃金も上げるという主張を全面に出して、それを最初にやったがために結局、経済の方が弱り切ったというか。

佐々木)「最低賃金を上げると危ない」と言われていたことが、まさに起きている。コンビニのようなところは、最低賃金を上げられると人材を雇えないので、家族経営で回すようになり、非正規雇用の人の仕事がなくなってしまう。日本でも最低賃金問題が議論されていて、「単純に上げればいいというものではない」と言われつつありますが、前例となる事態が韓国で起きています。やはり韓国は日本の先を進んでいるという感じだと思います。

日本としては保守系野党候補の尹錫悦氏に勝って欲しい

佐々木)できれば韓国には、安全保障的にはTHAAD配備の話なども含めて、日米側に戻って来て欲しいです。なるべく保守系野党候補の尹錫悦さんに勝って欲しいなというのが、日本側の気持ちとしてはあります。

飯田)保守系の尹錫悦氏、そして中道系の安哲秀氏という方の名前がよく取り沙汰されますが、ここが一本化できるかどうかということも焦点の1つになるようです。

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