中国にも民主活動家はまだ存在する 〜世界に散らばり声を上げる良質の中国人

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月11日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。産経新聞での連載「宮家邦彦のWorld Watch」に書いた記事『「中国を変える」民主活動家』について解説した。

民主化活動家の楊建利氏 =2009年5月18日、ワシントン  写真提供:産経新聞社

宮家)結構分厚い本で、読むのは大変だと思うのですが、私は非常に重要な本だと思っています。この楊建利さんという方は一種の神童といいますか、ものすごい秀才中の秀才で、若くして中国の大学に入って、カリフォルニア大バークレー校とハーバード大の両方に行って、博士号(数学博士/政治経済学博士)をとっている。中国共産党員なのだけど、民主化も信じている人なのですよ。だから結局中国に居られなくなって、いまアメリカで活動していて、ハーバードの研究員をやりながら、議会証言や講演をしているわけですが、この本はその内容を集めたスピーチ集なのです。

こういう人を見ていると中国にもまだまだ立派な人はいるということです……いまの政権がどうのこうの言うつもりはないけれども……この人は私より10歳ぐらい若くて今58歳なのだけども、私が2000年に北京に初めて行ったときに、この種の若い共産党員は少なくありませんでした。その頃の人たちっていうのは天安門事件も経験しているわけで、共産党員ながら本当に中国を民主化すべきだと思っている人たちがいたのです。外国人でもそういう人たちとは結構話すことができたわけですよ。いまそのようなことは不可能だと思うのですけど。そのような人がいまやもう中国の国内にはなかなかいられないし、いたとしても声を上げられない。その中で彼はボストンにいて、そしてアメリカに議会にいってはいろんな証言をしている人です。こういう人がまだいるということ。そして、いつの日か、この人たちが本当に中国を動かしていけるようになったら、中国は本当に変わるのだろうなと期待を持たせるような本なのです。

楊さんは日本に対しても提言をしていまして、簡単に言えば、「日本はもっと中国の民主化運動について関心を持ってくれ」「道徳的責任を持つべきである」と言っている。道徳的責任という意味はよくわからないけれども、とにかく「中国が民主化することは日本にとって利益なのですよ、そのことを忘れないでね、責任をちゃんと持ってね、うまくやれば中国の人々の日本に対する悪感情も解けるかもしれませんよ」、「日本は従来の対中政策外交戦略を変えなきゃいけませんよ」とまで言っているのですよ。

それが全部正しいと私は言うつもりはないけれども、やっぱり中国では楊さんのような人が非常に難しい立場にあり、我々からすれば「声を上げられない」でいるのだけれども、そういう心ある中国人たちが今も世界に散らばって頑張っているということを皆さんに知ってほしいと思ってご紹介したわけです。

連邦下院の一室で天安門事件について語った、元北京体育学院生の方政氏(中央)。左は通訳の王千源さん。右は民主化活動家の楊建利氏 =2009年5月18日、ワシントン  写真提供:産経新聞社

飯田)しかし、当時だと中国共産党員でも民主化を信じるという人たちはいたのですね。これがいまの感覚だと相反する価値観なのじゃないかと、一党独裁と民主化というのは。思うのだけど、この中国の将来のためにはこれが必要なのだという人はいたわけですね。

宮家)ただそれは保守派からすれば、「なにを言っているのか」ということになる。「ゴルバチョフを見ろ、結局ソ連共産党崩壊したではないか」と批判されています。

飯田)習近平総書記はむしろそこに注目をしているという話ですね。

宮家)それはケ小平さんの時代からそうで、だからこそ天安門事件で学生たちを弾圧したのです。天安門事件を潰したからこそ、自分たち共産党は今も生き残っていると信じているのだから。要するに、あの事件は「ああやって改革だなんだ言って、党の指導が崩れ、結局は国家が崩れていくだけじゃないか」「そんなことは絶対ダメだ」という人たちとのせめぎ合いだったのだけれども、残念ながら今や「改革派」はもう大きな声が出せなくなってしまった。そんな人はもういないのかと思ったのだけれども、実際にはいたのですよ、いまもいるのですよ、ということをちょっとご紹介したかったのです。

飯田)この本、帯には「ウイグル問題とどう向き合う」と書いてあります。巻頭のところではダライ・ラマ猊下からも文章が寄せられているという、巻頭言ということであります。そして日本の読者に対してのメッセージというものも一番最初のところに書いてあります。

宮家)これは一読に値しますね。

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